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ケーキとクリスマスのあれこれ

甘くて脂っぽい、
どの面をさげて言っているのかと、
今ならば笑って思うが――。

子供の頃、ケーキという存在はあまり好きではなかった。
なんだかくどいし、口の中に重たく残る感じがして、
どこが美味しいのかよく分からなかったのだ。

ようかんや饅頭なら好きだった。
手に持っても安定感があるし、甘さも控えめで、
何より馴染み深い。
それに比べると、ケーキなんて何とも洋風で、
ハレの日のためにだけあるような特別なものに感じた。

しかし――
人生は、時に思わぬ方向に転がるものである。

嫁さんが教えてくれたケーキ屋さん、
その店との出会いで、僕の「ケーキ観」は覆された。
甘さの奥にある軽やかさ、脂っぽさを感じさせない口溶け、
これが本当にあのケーキなのかと、驚いた記憶がある。

気がつけば、いまではそれなりにケーキを食べるようになった。
とはいえ、自分から進んで買うことはほとんどない。
何かしらの行事や祝い事で食卓に並ぶときだけのものだ。

そして今日――クリスマス。
クリスマスと言えばケーキ、ケーキと言えばクリスマス。
この結びつきは、いったいいつから始まったのだろうか。

日本のクリスマスケーキ文化

調べてみると、日本でクリスマスケーキが普及したのは戦後のことだという。
高度経済成長期に、冷蔵庫や冷凍技術が広まったことも後押しして、
昭和30年代には、現在のような「ショートケーキ型」のクリスマスケーキが定番化したらしい。

ふわふわのスポンジに、真っ白な生クリーム、
そして赤い苺をのせたデザインは、見た目にも豪華で、
お祝い事にはぴったりの華やかさだ。

さらに「家族団らん」というイメージと結びつけることで、
企業はクリスマスケーキを広く売り込んだ。
ケーキを囲んで家族が集う姿――
それは、戦後の日本人が求めていた理想像だったのかもしれない。

パティシエたちの奮闘

一方で、今日のケーキ屋さんはきっと大忙しだ。
クリスマスは、パティシエにとって最大の稼ぎ時。
朝から晩まで、否、夜通しでケーキを焼き、仕上げ、包装する。

毎年のこととはいえ、
その労力と神経の使いようを思うと、頭が下がる思いだ。
大量生産するだけでなく、見た目の美しさも求められる。
おまけに、最近では燃料費や材料費も高騰している。

「保存が効くクリスマスケーキがあればいいのに」
なんて、素人考えで思ってしまう。
だが、冷凍保存ができるようなケーキにするとなると、
その分だけ味や質感が犠牲になるのだろう。
だからこそ、作りたての味にこだわり、
その一瞬に全力を注いでいるのかもしれない。

そんな中で、「給料が上がってしまう」と皮肉を言う人もいるらしい。
労力を労力として認めず、
ただ儲かるのだろうと揶揄するのは酷い煽りだ。

グッズとともに

クリスマスケーキだけでなく、
この季節は様々なグッズも飛ぶように売れる。
リースやツリー、プレゼント用の包装紙、
さらにはサンタクロースの衣装まで。

特に子供がいる家庭では、
サンタさんからのプレゼントが欠かせない。
子供たちが寝静まったあと、そっと枕元に置く――
その瞬間は、親としても微笑ましく、少し誇らしい気持ちになるものだ。

しかしながら、ケーキやグッズ、プレゼントに囲まれた華やかさの裏で、
ふと考えることもある。

クリスマスの本来の意味とは何だったのか、と。
家族や友人と一緒に過ごすこと、
その幸せを改めて感じるための時間。

大量生産されたケーキやグッズが、
その本質を薄れさせているのではないか――
そんな疑問も頭をよぎる。

格好つかないけど

それでも、僕たちはケーキを買い、
グッズを飾り、家族で笑い合う。

甘くて脂っぽいと感じたケーキが、
いまでは家族の思い出の一部になっていることを思うと、
やっぱり不思議だし、ちょっと格好つかない。

でもまあ、これが僕なりのクリスマスなんだろう。
知らんけど。

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