赤4本のワイン・テイスティング
テイスティング能力を鍛える講座「ワイン道場」に2カ月ぶりに参加した。今回は赤4本。写真の通り、ぱっと見では色にも濃淡にもあまり差がなく、今回も難題だろうと予想がついた。
いちばん左のグラス①から外観を見ると、黒みがかったダークチェリーレッド、エッジはオレンジがかっている。香りをとると、シラーのような濃厚な黒系果実の香りとミントのようなスッとする香り。味わいは酸がしっかりしていてタンニンは控えめ。香りでシラーを予想したけれど、この控えめなタンニンはシラーのそれとは異なると感じ、この品種を候補から外した。
②の外観は①と似ているけれど、①より赤みがやや強い。香りは黒系果実だけどまだ少し閉じているようで、スワリングしてもあまり変わらない。味は様々な赤系果実、軽やかな果実味がありながらもタンニンは強め。余韻も長く、4本のなかで最も複雑さというか深みを感じた。
③の外観は透明感のあるダークチェリーレッドで、①に匹敵するほどエッジがオレンジ色。香りはラズベリーなどの赤系果実が感じられ、4本中でもっとも「もっと飲みたい」という印象をもった。味は酸がしっかり、タンニンひかえめ、軽やかな印象、かつ余韻は長い。
④は4本中もっとも色が鮮やかで、ラズベリーレッド。紫のエッジから、いちばん若いワインと予想。香りは赤系ベリーだけど、やや閉じている印象。味はいたって軽やかでフルーティ、梅のような味からピノ・ノワールと予想。タンニンは強めだけど、他の3本に比べて若々しい印象があり、親しみやすくチャーミングなワイン。
ここで出題者から「4本は単一品種で、同じ品種が2本ずつ」というヒントが出され、どの2本が同じ品種か予想するよう指示された。私は①と③、②と④がそれぞれ同品種と予想。選んだ工程は、まず④をピノ・ノワールと断定し、残り3本中、やや力強さが勝るけれども他の2本よりピノ・ノワールらしさを感じた②を同種と判断した。この時点で①と③については品種の判断がつかなかった。
続いて、これら2品種は親世代の品種が親戚同士という情報が提供され、おおいに悩むことに。私は品種とその特徴を覚えるのに必死で、その親世代についてはほぼ無知なのだ。ほとんどお手上げ気分になりながら、①と③をフルーティかつ力強いタンニンから、カベルネ・ソーヴィニヨンと判断した。
次に、4本中1本だけが新世界産だが、それはどれかという問題が出された。これは直感的に④を選んだ。他の3本に比べて明らかに複雑さがなく、わかりやすい、素直な風味だったからだ。
ここで答え合わせ。
①アバテ・ディ・クルニー2015 カンタルーポ ネッビオーロ (DOC名称きき忘れ たぶんコッリーネ ノヴァレージDOC)
②フィサン ルージュ・クール・ド・ヴィオレット2018 フレデリック・マニャン ピノ・ノワール
③DOCGヴァルテッリーナのカ モレイ2018 サンドロ・フアイ ネッビオーロ
④米オレゴン ウイラメットヴァレー ヨハン・ヴィンヤーズ エステートピノ・ノワール2021
*すべてオーガニック
私が①と③に予想したカベルネ・ソーヴィニヨンとピノ・ノワールはまったく親戚関係にないそうで、またひとつ勉強になった。①も③も、カベルネ・ソーヴィニヨンにしては透明度が高く、この時点で気づくべきだった。
②がフィサンときいて、深く納得。ピノ・ノワールにしては力強い風味は、ブルゴーニュ屈指の堅牢さを誇る産地ならではのものだったのだ。
自分のテイスティング能力があいかわらず鈍く、テイスティング用語も思うように駆使できないことを再認識しつつも、旧世界らしい深みのあるワインとは対照的な、新世界の明るく素直で若々しい赤ワインの魅力も再発見した。秋の夜長にじっくり飲むなら①~③がふさわしいかもしれないけれど、まだ暑さの残るいまの時期に太陽の下で友だちと飲み交わすなら④を選びたい。
それにしてもテイスティングの世界は広く深い。次回も楽しみだ。
今回ネッビオーロとピノ・ノワールを同時に飲み比べてみて、自分は食中酒ならネッビオーロ、ワイン単独で飲むのならピノ・ノワールのほうが好みだと確信した。ネッビオーロのタンニンは、単独で飲むにはやや重すぎて自分は苦手だが、ピノ・ノワール、とりわけ④のような軽やかなタイプであれば、おつまみがあってもよいが、単独でも飽きずに飲み続けられそうだ。