#75【東洋医学】アレルギー性鼻炎に対する鍼灸治療
1.アレルギー性鼻炎の症状について
アレルギー性鼻炎による鼻水、鼻閉などはヒスタミンがその原因であると言われています。
鼻粘膜の肥満細胞がアレルゲンに反応するとヒスタミンを分泌します。
分泌されたヒスタミンは、周囲の毛細血管の血管拡張・透過性亢進に働きかけます。
血管の透過性が更新すると漿液が漏れ出て鼻水となりますし、血管の拡張と局所的な浮腫が鼻閉を引き起こします。
またヒスタミンが上顎神経まで作用すると、くしゃみを引き起こします。
鼻汁
サラサラな鼻汁はアレルギー性鼻炎の典型的な症状です。鼻炎が慢性化したり副鼻腔炎にまで病態が進むとネバネバで臭いの強い鼻汁が出始めます。
鼻閉
鼻閉は血管の拡張が大きく寄与しており、自律神経との関係も考えられます。すなわち副交感神経が優位になることで末梢血管の平滑筋が弛緩して、血管が拡張するのです。
2.アレルギー性鼻炎の弁証
実際には望聞問切の四診で証を立てるべきですので、一般的な話になります。
2−1.肺気虚によるもの
肺の五体は「鼻」です。よって鼻の症状は肺との関係が強く疑われます。
鼻汁や鼻閉は性質として「実」の症状でしょうから、肺と表裏関係にある大腸の実として考えることもできます。
実際、合谷などへの刺激は鼻閉によく効きます。
大腸を瀉すと同時に肺気虚に対する選穴が効果的だと考えられます。
2−2.脾気虚によるもの
脾は後天の気を作り出すところであり、昇清作用によって水穀の精微を肺へと送っています。
肺は水穀の精微を受け取って気を作り出します
脾が弱ると気の元がつくられなくなるので必然的に肺の気も減少します。肺が弱くなれば「鼻」の症状が出てきます。
つまり肺気虚が「鼻」の症状の原因かもしれませんが、元をたどると脾に問題があるという可能性があるので、脾を補うような治療も必要になりそうですね。
2−3.腎陽虚によるもの
体の冷えなどがあれば、腎陽虚によるものもあるかもしれません。
腎は納気作用を持っており、肺の働きを助けています。腎の助けがなくなると肺も十分に働くことができず、その結果気が不足することが想像されます。
陽虚まで進んでいるとなると慢性的に気が不足していますので、気を補うような治療を比較的長期にわたってする必要がありそうです。
3.アレルギー性鼻炎の治療
ひとまず上に書いたような弁証を念頭に置いて治療をするのが良いかと思います。
実際の証は脈診や腹診などで詳しく体の状態をチェックしなくてはなりません。必要な施術があれば適宜加えていくのが良いでしょう。
先ほど、鼻閉は副交感神経が優位になることで起こると言いました。鍼灸の刺激は副交感神経を活性化させるので鼻閉を促進させるのではと思われるかもしれません。
しかし鍼灸刺激は自律神経のバランスを整えるというようなイメージで考えてもらえれば良いようです。特に鼻閉を悪化させるというような心配は不要なようです。
生理学的には、鍼灸治療の結果IgE抗体の数に変化が現れるということも判明しているようです。
IgE抗体はアレルギー反応に関与するたんぱく質です。IgE抗体が多いとアレルギー症状も酷くなるということが言えますので、IgE抗体の数が減少することがあれば、不要なアレルギー反応を抑制することができるかもしれません。
以上、アレルギー性鼻炎について概要と治療についてでした。
ちなみに、鼻汁や鼻閉への特効穴は上星のようです。
実際、鼻汁が鍼一本で止まるのも拝見したことがあります。