【人事戦略】社員の幸福に大事なのは自己肯定感よりも自己決定力!挑戦する力を伸ばすための4つの要点
人間に幸福感をもたらす要素はなんでしょうか?経済産業研究所の調査によると、学歴や所得よりも『自己決定』することが、幸福感に大きな影響を与えるそうです。ことビジネスの場において、社員が自己決定することのメリットは何なのか?社員の自己決定力を高めるにはどうすればいいのか?
広告マンガ制作のパイオニアであり、数多くの企業の課題解決・トータルプロデュースに取り組んできたトレンド・プロの岡崎寛之が『自己決定力』についてインタビューに答えます。
幸福度と本質的な成長のためには、自己肯定感よりも自己決定力の方が重要。
――まず始めに、自己決定力とは何なのかをお聞かせください。
簡単にいうと、『色々なものにとらわれずに決定できる力』です。人生には数多くの選択と決定を行う場面がありますが、何にもとらわれず、自分がやりたいと思ったことを決定できる能力が自己決定力だと考えています。幸福度に関する様々な統計データを見ても、『自己決定できている人生かどうか』が健康と同じように上位に来ています。
――幸福度を高めるには自己肯定感が大切だというイメージもありますが、それとはまた別の話なのでしょうか?
自己肯定感を高めるよりも、自己決定力を高める方が本質的に重要だと思っています。私自身、20代前半までは『自己肯定感が高い』ということが自分の好きなところでした。ですがなんでもポジティブに考えられる代償として、辛いことがあっても良い方向にばかり解釈してしまい、自分を見つめ直すことが少ない、本質的な成長が足りないという葛藤がありました。自己肯定感が高ければ短期的には幸せかも知れませんが、何年経っても成長せずに同じレベルで同じことをやってしまう人も多いように見受けられます。
――ビジネスにおいて、自己決定力を高めるメリットはなんでしょうか?
まず会社側の立場で考えた場合、メンバーみんなが自己決定力が高い状態になると、各自の幸福感や充実感が高まります。だから離職率が下がり、各自のパフォーマンスも発揮しやすくなります。
会社のマネジメント層以上は、メンバーには決まったことをこなすだけでなく、本人がやりたいことに積極的に挑戦して欲しい……と思っているはずです。一方でメンバー側からすると、挑戦を行うには様々なリスクやハードルがあってなかなか難しい。ですが自己決定力が高いメンバーならハードルを越えて新しいことに挑戦できる、だから新しいものを生み出しやすい。事業にスピード感が必要な今後の時代には、トップダウンで決めるよりも一人一人が生み出す意識が求められるはずです。そういった点とも、自己決定力は相関性が高いと考えています。
――会社視点で見ると、『社員のパフォーマンス向上に繋がる』『社員の幸福感が高まり離職率が抑えられる』『積極的な挑戦に繋がり新しいものを生み出しやすい』といったメリットがあるんですね。
続いては社員側から見た場合の、自己決定力を高めるメリットをお聞かせください。
会社員は上層部の意向や上司との相性、どんな顧客がつくかなど色んな要素が混ざり合うので、最大限に自己決定して生きていくのは、通常かなり難しい。だからこそ、『何にもとらわれず自分で決定して生きる』という状態に近づけられれば、大きな幸福感に繋がりやすい。会社で仕事をしている時間が、非常に快適にストレスなく過ごせる。それがメンバー自身のパフォーマンス向上に繋がり、ひいては会社全体のパフォーマンス向上にもなります。
必要なのは『知識の獲得のしやすさ』『上司の支援』『失敗の許容』『本人の自信』。
――社員の自己決定力を高める際に必要なものはなんでしょうか?
『知識の獲得のしやすさ』『上司の支援』『失敗の許容』『本人の自信』の4つです。他の人の成功事例、失敗事例を見て知識を得られる仕組みがあれば、挑戦する土台が整いやすくなります。上司の支援や失敗の許容があれば、挑戦することのリスクが抑えられて自己決定のハードルを低くできる。自分に一定の自信があれば、積極的に自己決定しやすい。『知識の獲得のしやすさ』と『上司の支援』と『失敗の許容』『本人の自信』、それらが少しずつ会社の中で獲得しやすくなっていった結果、自己決定力の高い人が増えていく……といったイメージです。
――一つ目の『知識の獲得のしやすさ』について、会社側が行うべき施策はなんでしょうか?
分かりやすい例は、同じ部署単位で経験をシェアすることです。たとえば営業でいえば、こういう案件でこんな売り込みをして成功したとか失敗したとかって話ですね。同僚から話を聞くのが得意な人もいるでしょうが、そういった行為が苦手で資料やデータベースを見て学びたい……という人もいるはずです。ミーティングの場などで共有するだけでなく、後から見に行ける場所があるというのが重要だと思います。
――『上司の支援』については、どういった施策が必要でしょうか?
まずはキャリアの話になると思います。上司とメンバーの話し合いで、5年後などの少し未来にメンバー自身がどういう風になりたいかの目標を設定する。そうすれば、挑戦して必要な要素を伸ばさないと、その目標には到達できないよねという話になるはずです。そういった過程を経て、目標に辿りつくために一つずつハードルを昇っていくのを上司が支援してあげる。そうすれば部下としても、自分が望んだ目標に向けての挑戦なので納得感は高まります。
そして上司はただ『挑戦していいよ』と言うだけじゃなくて、道のりを細かく整理して選択肢を用意してあげる。たとえば『こういった案件があるから、あなたの挑戦に向いているからやってみてはどうか』というような機会を与える。そういった流れが体系立って、上司と部下の間で握れているというのが大事だと思います。上司自身が支援者であろうとするだけでなく、部下側が『上司は支援者である』と思えるかがポイントです。
失敗を許容する文化と評価制度、上司の支援による成功体験が積極的な挑戦に繋がる。
――続いて『失敗の許容』については、必要な施策はなんでしょうか?
部下に『失敗してもいい』と普段言っていても、実際に失敗した時は責任を取らない……という上司は多いです。上司自身が責任を引き受けると、上層部からの評価が悪くなって、給料が下がったり昇進が遅れたりするかも知れない。それらのリスクを許容した上で部下を守るというのは結構なハードルでしょう。ですが上司が守ってくれない環境では部下は挑戦しにくい。大きな失敗をして明らかに部下自身のせいであっても、上司が自分の責任であると上層部に伝えて責任を取り切ってくれる……というのはすごく大きなポイントだと思います。
そのために会社側でできる施策としては、失敗を許容する文化を作ること。そして評価制度としても、悪意のない挑戦による失敗については減点ではなくむしろ加点するくらいのことをやっていく。そうすればメンバーも挑戦しやすくなりますし、長期的に見れば会社としてもプラスになるはずです。
――部下が挑戦して失敗した際に、上司が責任を引き受けること。そして失敗を許容する文化と評価制度が大切なんですね。
続いては『本人の自信』について、必要な施策をお聞かせください。
成功体験を積ませることが、メンバー本人の自信に結びつくと考えています。少しだけ挑戦してみて、少し成功してみんなから褒められて、もうちょっとハードルの高い挑戦をしてみて成功して……というのを繰り返すうちに自信がついていく。
そのためには上司が小さな階段を作るようなイメージで、挑戦すべきハードルを準備する。たとえばメンバー自身が5年後になりたい姿・目標があるとしたら、上司がそこに繋がる階段を細かく用意してあげる。最初は低いハードルで、徐々に高いハードルを用意していくというのが、成功体験を作るポイントになると考えています。『上司の支援』と少しかぶってしまいますが、上司の支援があって成功体験を積むという繋がりにはなると思います。
レベルに応じた要点をリストアップするのが有効。マンガを使えばより分かりやすい!
――最後にトレンド・プロが考える、マンガを使って社員の自己決定力を上げる方法は何かありますか?
自己決定力が低い人と、自己決定力が非常に高い人では、レベルアップする上で意識すべきことは違うはずです。なので自己決定力のレベルを上げる際のポイントを、各レベルごとに体系立ってマンガでリストアップするのは有効だと思います。『レベル2からレベル3に上がるにはこういう思考をしよう』という4コママンガや、『レベル6からレベル7に上がるにはこういう思考をしよう』という4コママンガが、それぞれのレベルごとに複数あるイメージですね。
メンバーそれぞれのレベルによって意識すべきポイントは違うので、会社全体に通じる共通言語を作るのはなかなか難しい。だけど分かりやすく伝えられる『マンガ』という媒体を使えば、意識をすり合わせやすくなると思います。