【念願だった2店舗目の開店】そのリスクと大きな壁
一大発起して独立開業、飲食店を経営し業績も順調。
5年ほど運営して借り入れもほぼ返済となると、銀行も「また借りませんか?」と言い出し2店舗目の出店を視野にもいれる。
しかし、5店舗を経営している人が、もう1店舗を出店するのと全く様相がちがうのが2店舗目の出店。
僕は、このリスクマネージメントができておらず2店舗目を出店しては閉店し、また出店しては譲渡したりといったことを繰り返した経験があります。
その撤退や譲渡でビジネスの展開がすごく遠回りすることになり、多くの時間とお金の両方を無駄にしました。
店舗展開、事業拡大する時は覚悟しないといけないことがいくつかあり、よく発生する問題点があります。
今回は、それをまとめてみました。
1 押さえておくべき5つのポイント
1 振り出しに戻るとはこのこと
2 物理的な移動という重荷
3 店主の思いはどう伝わるか?
4 スケールメリットは5店舗から
5 間接費用の発生
これらのことを今一度理解した上で、事業拡大・店舗展開に望んで欲しいのです。
2 振り出しに戻るとはこのこと
まず初めに、意外とあまりよく考えずに流してしまうことは、1店舗目が利益を出していても2店舗目が赤字の場合、合計収益はゼロになってしまうという事実です。
当然のことですが、その意味することを考えなければいけません。
せっかく上手く行ってる時期に、また収支ゼロ、もしくは開業当初のようにマイナスの暗黒期がやってくる可能性があるのです。
それに耐えられる体制が整っていますか?
しのげるほどの精神力がありますか?
全てはここのあるのかもしれません。
【
1店舗目】 50万の黒字 【2店舗目】 50万の赤字
合計は、プラスマイナス 0 ゼロ
【1店舗目】 50万の黒字 【2店舗目】 50万の黒字
合計は 100万の黒字
この差は100万円です。
もし2店舗目を出さなければ、50万の黒字だったのに。
2店舗目が軌道に乗るのが遅れれば、こんな風に悶々と考えてしまい、メンタルがむしばまれていくのです。
当然のことながら1店舗目の開業と同じように運転資金があり、ある程度のマイナスの期間を想定して、とりかかるとは思いますが、なぜか、2店舗目になると、1店舗目の時より甘く見ることが多いのです。
やはりここは、今まで以上に十分な資金計画を練った上で、実行することが大切です。
もし、2店舗目の収支が予想より長くマイナスだった場合、1店舗目の経営に支障がでてきて、2店舗分のスタッフへの士気に影響することを今一度肝に銘じてください。
1店舗成功したという実績に酔わないでください。
2店舗目を出すということは、おおむね、今の実力の2倍の経営能力が必要になるものです。
3 物理的な移動という重荷
2店舗持つということは、少なくとも経営者の移動の労力が必要になってくるということを忘れてはいけません。
完全に任せられる人材がいたとしても、どうしても必要となってきます。
これも当然のことですが、やはり2店舗間の距離は近ければ近い方がいいのです。
僕は、造作をほとんど無償で譲ってくれ、直ぐに開店できることに魅力を感じ、電車で30分かかる場所に2店舗目を出店しましたが、店舗間の距離は本当に大きくな障害になることを肌で感じました。
店に行って店長と話したいけど、まぁいっか今日は。。。
これが信じられないことに日に日に多くなっていくのです。
特定した地域に集中的に出店し、知名度をあげていくというドミナント戦略という手法がありますが、これはある意味とても理にかなっています。
よほどオペレーションが容易で、比較的人によるばらつきがでないビジネスモデルであればまだいいのですが、大きい町だけにポツポツと出店し、人の移動の必要が出てしまうことを考えると、できるだけ近い立地での出店をするべきです。
そして、2店舗目の経営の壁を超えた時には、人材、管理方法などのノウハウも蓄積していることでしょう。
離れた地域での出店はそれから検討しても遅くはないはずです。
4 一緒にいなければ、人は育たない
前項でもふれましたが、店舗展開において、やはり人材の確保はとても大きい要因です。
コロナ禍で多少の緩和はみられるものの、飲食業界での人員、人材不足はこれから続いていきます。
そんな中、
完全に任せられる人はいない、確かに不安だ、でもこの人にもし店長・料理長を任せれば、そのポジションに必要な能力も追いついてくるだろう
と思うのはたしかに一理あります。
ポジションが人を育てるという考え方です。
しかし、その人自身の資質というものは、なかなか変わるものではなく、任せようと思う人は、店主、経営者の思想と大事にしているものをしっかり理解できているか? という点が大事になってきます。
経営者がお客さんに伝えたいことやりたいことが100あるとするならば、その経営者のそばで毎日いる2番目のスタッフには、少なくとも80で伝わるでしょう。
そしてアルバイトには70ほどでやっと伝わると思います。
しかし、離れた店舗でいつも気にかけていられない環境ならば、経営者が100だとしても、任せられた2店舗目の店長は、60になり得ます。
アルバイトだったら50を切ってしまうかもしれません。
これを心得て、この人だったら本当に任せられるな、自分の思い、思想もしっかり伝えられているなと確信できるまで出店は待つべきです。
そうなるまでは出店はしないと固く決めている経営者だけが2店舗目の成功を導いている印象があります。
物件、資金、タイミング、人材、それぞれが全て揃って、初めて出店することがえりそうです。
もし、それらが揃わなくても、人材以外のことであればどうにか他で補うことはできます。
しかし、その補うという作業は、ほとんどが人がやることであり、
その人材の能力・人数が足りてなけば、どうやっても補うことはできないことを覚えておかなければなりません。
5 スケールメリットは5店舗から
2店舗目を出すことで、知名度が高くなり、店舗間のお客さんの行き来も出始め
ることで勢いがつくことは想像できます。。
さらに、事業規模が大きくなることで、食材、備品を収めてもらっている取引先にも印象が良くなり、仕入れ値がやすくなったり、交渉しやすくなったりといったメリットもイメージするでしょう。
しかし、昨今の景気、労務費、燃料費などのコスト高でそういった業者も2店舗程度では優遇できない状況でもあります。
たとえ多少なりとも値引きしてもらったとしても、間接的な費用、管理費、移動の労力などを考えると2店舗ではスケールメリットは取れないと考えた方がいいでしょう。
参考文献です。読み応えあり。
6 間接費用の発生
1店舗のみの経営だと、経営者本人が走り回れば、なんとかなるような根性、気合いで乗り切れることもたくさんありますが、複数店舗を持つとそうもいかなくなります。
給料計算にしても、取材への対応でも、お店に立って運営する以外の煩わしく感じる細かい作業が2店舗になると倍になるのです。
これが3店舗、4店舗となれば外注する、スタッフに仕事を任せ、その作業を終えるための時間を作るなど、経費が発生しても払い切ることができますが、2店舗時代はそこまでの利益を出すのが難しいことが多いのです。
事業規模として、とても中途半端な時期になるのです。
そうすると、経営者の雑務は、ざっと倍になることを覚悟しなければいけません。
これらのことから、勢いもあり、夢も希望も一段大きくなる店舗展開の局面では、裏に隠れている大きい労力と障害が待っていることを覚悟して欲しいのです。
2店舗目を出す時は、やはり十分な資金と人材の確保が先決であり、マイナスの時期をできるだけ短くする方法を探り当てるべきです。
明らかに、3店舗以上の経営より2店舗の経営の舵取りの方が難しく、経営者にかかる負荷が大きいことは明白です。
また、お店を創業した時に
「多店舗展開したい、」「会社にして大きくしたい。」
と漠然と考えている人は多くいますが、
「何店舗までの経営にしよう。」 「ここまでの事業規模で設定しよう。」
などと、その点を考える人はあまりいません。
これは、事業の終わらせ方を考えてないことにもつながります。
やめ方、引退の仕方です。
1店舗目の開業の時はともかく、2店舗目を展開する時は一度、中長期的なゴールの設定をしてみて欲しいのです。
自分の業態、業種は、任せられる人材をどのくらいのスピードで何人なら確保できそうなのか?
設備投資は何年で回収でき、運転資金をプールするのに何年かかるのか?
特にこの辺の精査をして、自分の年齢と照らし合わせてみてください。
もちろん、やってみないとわからない部分の多く、飲食事業の展開は筋書きがなくてこそ楽しいものなのかもしれません。
でも、一度立ち止まってこの点を少しイメージして欲しいのです。
自分が引退しても、亡くなったとしても続いていくようなお店を残したいのか?
自分の代で全うして終わっても悔いはないのか?
この部分は、特に考えたことがない人が意外に多いようです。
多店舗展開する前に、一度振り返ってみてください。
とよしき