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その日暮らし

先日のフィンランド協会の京都出張の時に、メリーゴーランド京都で買った坂口恭平さんの『その日暮らし』。躁鬱の波の中で、どうすれば自分は安心するのか、自分を信頼できるのか。周りの人たちとの関係性とともに綴られている。以下、気になったところを書き留めておく。

「プライベートパブリック」。お金をもらってやることは苦手。ひたすら自発的にやりたい。でも人々のために行動はしたい。だから自腹を切って楽しむ公共事業。それなりに自腹は切るが、お金はめぐりめぐるので、意外と損はしないどころか儲けることもたくさんある。らしい。なるほど。

「不知火忌」。石牟礼道子さんの詩に乗せて恭平さんと娘のアオさんが歌う「海底の修羅」が感動的だ。SoundCloudで聴ける。「海底の修羅」作詩:石牟礼道子 作曲:坂口恭平 歌:アオ

「ピザ修行でナポリへ」。いつも人から「お前はこれが上手だから、これをやりなさい」と言われたことを、すべて素直に受けとめてきた。好きでやっていたら、もっとやりなさいと人に言われた。

「学校に行かない君へ」。会社をつくる。好きなことを毎日する。練習する。毎日作って売る。打ち込んだものをいつでも見てくれる仲間を探す。

「創作すること」。周りの才能のある人たちはすでに作ることをやめて、会社に務めたりしている。中途半端な僕はまだ今も毎日、何かを作っている。

「鬱になる」。鬱のときも手はどんどん動く。微かだけど、そのことに気づくと、うれしいと少しだけ感じる。とにかくやってみよう。そして、やり終えたら下手に否定することなく、そのままにしておこう。そしてまた手を動かそう。

あとがきには「自分の一番困っていた行為(自己否定)が実は、一番自分にとって大切なことに向き合うように要求している」と書かれてあり、なるほどなあと思った。そして、胎児の頃の記憶についても綴られていた。

正直自分は3歳以前の記憶がほとんどない。言葉を話し始めるようになったのも随分と遅かったらしい。穏やかな幼少時代だったけれど、小学校の途中で大阪から愛知に引っ越して、関西弁を話す双子としてとても珍しがられ、比較され、人との違いを意識するようになったことは、人生の大きな転機だったと思う。25歳くらいまでは自分が双子であると人に話すことにかなり抵抗があった。ただ、大学院やポスドクで脳や遺伝、双子の研究をして、遺伝の影響はあるにしてもそれだけでは決まらないと知った。また、博士課程の中頃で、自分は生活リズムが定期的に変わるタイプだと自覚した。普段は低空飛行しているけれど、ピンチとチャンスには割と強いので、なんとか今まで生きのびてこられたような気がする。天気と季節のように気分と生活スタイルが変わるから。

だけど、2020年から2022年は自己否定が止まらなかった。コロナ禍の影響で移動が制限され、あやふやになってしまったことも多く、フラストレーションが溜まっていた。コロナ禍が明けた後は、気になるところには行ける時に行くようにした。動けば意外となんとかなるし、なんともならないものはなんともならない。人も環境も常に変化している。

坂口恭平さんのことを初めて知ったのはコロナ禍の2020年5月だった。ヘルシンキの森を散歩しながら、ツイッター経由で知った坂口恭平さんの『躁鬱大学』note音声版に共感して、一気に聴いた。

神田橋先生の引用として、「気分屋が基本気質ですから、『気分屋的生き方をすると気分が安定する』という法則を大事にしましょう」という言葉は、それ以来意識している。2023年3月には熊本市現代美術館にて個展『坂口恭平日記』を鑑賞して、斎藤環さんの講演と坂口恭平さんとの対談を聴いて、熊本の街を回った。熊本市は街のサイズ感や自然が身近にあるところ、トラムが走っているところなどがヘルシンキと似ていると感じた。個展のパンフレットは今でも部屋に飾ってある。

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豊田峻輔 (Shunsuke Toyoda)
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