メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん―古典から東洋医学を学ぶ―』第169号「秋石五精丸」他 ─「虚労」章の通し読み ─

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  第169号

    ○ 「秋石五精丸」他
      ─「虚労」章の通し読み ─

           ◆ 原文
      ◆ 断句
      ◆ 読み下し
      ◆ 現代語訳
      ◆ 解説 
      ◆ 編集後記

           

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 こんにちは。前号では別の章を読みましたが、また虚労の流れに戻します。


 ◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
      ・ページ数は底本の影印本のページ数)

 (「陽煉秋石法」 p600 上段・雜病篇 雜方)


 秋石五精丸

      治虚勞腎虚陽衰蓮肉六兩白茯苓二
      兩秋石一兩川椒茴香並微炒各五錢
  右爲末以人乳汁和丸梧子大
  温酒或米飮下五七十丸必用


 増益歸茸元

                      治虚勞腎衰補精血養陽氣熟地黄鹿
      茸五味子大當歸各四兩山藥山茱萸
  大附子炮牛膝酒浸肉桂各二兩白茯苓牡丹皮
  澤瀉酒浸一宿各一兩右爲末用鹿角膠半斤〓(〓坐りっとう)
  入石器中入酒少許熔化和丸梧子大空心温酒
  或鹽湯下五七十丸一法膠作末酒和作丸亦可得效


    
 ▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)


 秋石五精丸

  治虚勞、腎虚陽衰。蓮肉六兩。白茯苓二兩。秋石一兩。

  川椒、茴香並微炒各五錢。右爲末、以人乳汁和丸梧子大、

  温酒或米飮下五七十丸。『必用』


 増益歸茸元

  治虚勞腎衰、補精血、養陽氣。熟地黄、鹿茸、五味子、

  大當歸各四兩。山藥、山茱萸、大附子炮、牛膝酒浸、肉桂各二兩。

  白茯苓、牡丹皮、澤瀉酒浸一宿各一兩。右爲末、

  用鹿角膠半斤〓(坐りっとう)、入石器中、入酒少許、

  熔化和丸梧子大、空心、温酒或鹽湯下五七十丸。

  一法、膠作末、酒和作丸、亦可。『得效』
 

 ●語法・語(字)釈●(主要な、または難解な語(字)句の用法・意味)


  特になし


 ▲訓読▲(読み下し)


 秋石五精丸(しゅうせきごせいがんekigoseigann)

  虚勞(きょろう)、腎虚陽衰(じんきょようすい)を治(ち)す。

  蓮肉六兩(れんにくろくりょう)。

  白茯苓二兩(びゃくぶくりょうにりょう)。秋石一兩(しゅうせきいちりょう)。

  川椒(せんしょう)、茴香(ういきょう)並(なら)びに微炒(びしゃ)

  各五錢(かくごせん)。右(みぎ)末(まつ)と爲(な)し、

  人乳汁(じんにゅうじゅう)を以(もっ)て和(わ)し

  梧子(ごし)の大(だい)に丸(まる)め、

  温酒(おんしゅ)或(ある)ひは米飮(べいいん)にて

  下(くだ)すこと五七十丸(ごしちじゅうがん)。『必用(ひつよう)』


 増益歸茸元(ぞうえききじょうげん)

  虚勞腎衰(きょろうじんすい)を治(ち)し、

  精血(せいけつ)を補(おぎな)ひ、陽氣(ようき)を養(やしな)ふ。

  熟地黄(じゅくぢおう)、鹿茸(ろくじょう)、五味子(ごみし)、

  大當歸(だいとうき)各四兩(かくしりょう)。山藥(さんやく)、

  山茱萸(さんしゅゆ)、大附子炮(だいぶしほう)、

  牛膝(ごしつ)酒(さけ)に浸(ひた)し、

  肉桂(にっけい)各二兩(かくにりょう)。

  白茯苓(びゃくぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんぴ)、

  澤瀉(たくしゃ)酒(さけ)に浸(ひた)すこと一宿(いっしゅく)

  各一兩(かくいちりょう)。右(みぎ)末(まつ)と爲(な)し、

  鹿角膠(ろっかくきょう)半斤(はんきん)を用(もち)ひて

  〓(坐りっとう)(きざ)み、石器中(せっきちゅう)に入(い)れ、

  酒(さけ)少(すこ)し許(ばか)りを入(い)れて、

  熔化(ようか)し和(わ)して

  梧子(ごし)の大(だい)に丸(まる)め、空心(くうしん)、

  温酒(おんしゅ)或(ある)ひは鹽湯(しおゆ)にて下(くだ)すこと

  五七十丸(ごしちじゅうがん)。

  一法(いっぽう)、膠(にかわ)を末(まつ)と作(な)し、

  酒(さけ)に和(わ)して丸(まる)と作(な)すも、

  亦(また)可(か)なり。『得效(とくこう)』


 ■現代語訳■


 秋石五精丸(しゅうせきごせいがん)

  虚労のうち腎虚陽衰を治す。

  蓮肉六両。白茯苓二両。秋石一両。

  川椒と茴香(微炒)各五銭。以上を粉末にし人乳汁に混ぜ、

  梧桐の種の大きさに丸め、温酒または重湯にて

  50から70丸を服用する。『必用』


 増益帰茸元(ぞうえききじょうがん)

  虚労による腎衰を治し、精血を補い、陽気を養う。

  熟地黄、鹿茸、五味子、当帰(大)各四両。

  山薬、山茱萸、附子(大・炮)、牛膝(酒浸)、肉桂各二両。

  白茯苓、牡丹皮、沢瀉(一晩酒浸)各一両。

  以上を粉末にし、鹿角膠半斤を刻んで石器に入れ、

  酒少量をにて溶かし混ぜ、梧桐の種の大きさに丸め、

  空腹時に温酒または塩湯にて下50から70丸を服用する。

  或いは、膠を粉末にし、酒に混ぜて丸めてもよい。『得效』


 ★ 解説★

 再び虚労の通し読みの流れに戻ります。

 前の項目は「陽煉秋石丹」でしたが、次に「秋石五精丸」と「秋石」を用いる処方で、流れを形成していることがわかります。

 「秋石」と、「石」という名がついていますが、実際には鉱物ではないことは、既に解説も製法も読みましたのでおわかりいただけることと思います。

 実際にこの東医宝鑑の生薬解説部である湯液篇にも「秋石」の収録はありますが、鉱物薬を収録した「石部」ではなく、人由来の生薬を収録した「人部」に収録されています。

 ちなみに同じ「秋石五精丸」に登場する人乳汁もまた「人部」に登場しています。原本、影印本をお持ちの方はそちらも合せてご参照くださればと思います。

 
 先行訳については珍しく(?)省略や誤りがないようです。といっても概説は短く省略も誤りもしようがないと言えば言えます。


 ◆ 編集後記

 引き続き虚労の通し読みに戻りました。何度か書きましたがずっと処方解説が続いてそろそろ気分転換したいところです。

 前号で読んだ「陽煉秋石法」が収録された「雑方」の章などはなかなか読んで面白い項目満載で、この腎虚薬がひと段落したらそちらをスポットで読もうかと考えています。

                    (2016.05.21.第169号)
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