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統合失調症の歩き方

このnoteにたどり着いた方は、どのような方でしょうか。統合失調症を患っている方、ご家族に統合失調症の方がいる、知り合いに統合失調症の方がいる、または、病気のことを知ったが、もっと詳しく知りたい、など、様々な方がいらっしゃると思います。

僕が23歳の時にブラジルで統合失調症を発症した時には、病気に関して得られる情報がほとんどなく無く、不安な日々を過ごしたのを覚えています。今ではインターネットが発達して、さまざまな情報が得られるようになりました。そして、こうして情報を与えることもできるようになりました。

このnoteは、統合失調症を17年前に患い、現在寛解(治療を受けていれば、日常生活が送れる状態)をしている筆者が、統合失調症ついてまとめたものです。是非、今後統合失調症と向き合う際の参考にして頂ければと思います。

2020年末には、僕の体験を全48話の物語調にまとめた『統合失調症の歩き方』というマガジンをnoteに出稿する予定です。このnoteを読んで興味を持ってくださった方は、ブラジル留学中に精神病院に強制入院させられ、ブラジルと日本、正常と異常の狭間で統合失調症と共に歩んだ僕の経験をお読みになれます。

尚、本記事の内容は、医師が執筆したものではなく、個人で調べたものをまとめたものですので、あくまで参考程度に留めておいてください。統合失調症に関する判断は、専門の医師と相談の上、行ってください。

統合失調症とはどんな病気?

統合失調症は、脳の機能が原因で、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く精神疾患のことです。約100 人に1 人が罹患するといわれていて、日本の人口で考えると100万人以上の人が、重い、軽い含めて統合失調症になっていると言われ、決して珍しい病気ではありません。僕も神様によってその100人に1人に選ばれた一人です。僕は23歳の時に発症しましたが、統合失調症は、思春期から40歳くらいまでに発病しやすいといわれていて、薬による治療や精神科リハビリテーションなどの治療によって症状が回復する病気です。

統合失調症が発症する原因はまだ明らかになっていないようです。医学的には、脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスが崩れることで症状を引き起こすのではないかと考えらています。また、環境によるストレスが関係しているのではないかとか、遺伝も少なからず影響するのではないかともいわれています。しかし、はっきりしたことは解明されておらず、さまざまな要因によって発症するとされています。

統合失調症の人は妄想しやすい?

妄想とは、非現実的なことや、周りの人が理解できないようなことなどを信じ込むことです。統合失調症の妄想は、誰かが自分の悪口を言っている、外で自分のことを見張っている人が居る、また、人にだまされている、といった被害妄想が代表的なものです。テレビの中の人がメッセージを送ってくる、といった、周囲の人の言動すべてが自分に向けられたものと確信してしまう関係妄想や、歴史上の人物の末裔であるなどと思い込む誇大妄想などがあります。僕の場合ノーベル平和賞の受賞候補であると信じ込んでいました。

自分の頭の中の世界と周りの世界との境目がはっきりしなくなって、様々な影響を受けやすくなり、自分の行動や考えが、誰かに操られているように感じることもあります。自分の頭の中が覗かれているように感じたり、情報を吹き込まれていると思ってしまったり、頭の中の考えを吸い取られてしまうと感じることもあるようです。

会話においては、考えにまとまりがなくなり、一つの話題から全く別の話題へ話が飛んだり、つじつまが合わないことを言ったりします。会話が支離滅裂になって、周囲の人が理解できなくなることもあります。急に考えることができなくなり、突然沈黙することもあります。色々なことが頭をよぎり、自分の中で連想することが多くなり、会話とは関係ないことを話してしまうこともありました。

また、急に激しく興奮して大声で叫んだり、逆に周囲からの刺激にまったく反応しなくなったりします。動き回ったり、無意味な言葉を繰り返すことや、芝居じみた挨拶、奇妙な身振り、姿勢をそのまま保ち続けようとする行動がみられることもあるようです。拙著『統合失調症の歩き方』の中でも触れていますが、子供じみた行動を突然したことがあります。周りからは理解できない行動をしてしまうこともあるのです。

また幻覚を見る人もいます。幻覚は、実際にはないものをあるように感じることで、視覚だけでなく、五感全てにおいて現れます。もっとも多くみられるのが、人の声が聞こえるタイプで、自分に対する悪口や噂、また、何かの命令であることが多く、テレパシーや電波などの形で感じる人もいます。ほかの人に見えないものが見えたり、普通なら感じないような身体の症状を感じたり、匂いなどを感じる人もいるようです。僕の場合大きな道路の横断歩道を渡っているときに、すれ違う人が自分に向けてテレパシーを発していると感じていたこともありました。

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統合失調症になりやすい人っているの?

統合失調症は他の多くの精神疾患と同じようにはっきりとした理由や要因については解明されていない病気です。しかし、研究が進んできて、わかっていることも多くなったようです。例えば、近親者に統合失調症患者がいる場合のほうが罹患する確率が上がったり、一卵性双生児のほうが二卵性双生児よりも共に発症する割合が高いなど、統計データ的にわかっていることもあるようです。しかし、一卵性双生児であっても双方が必ず発症するわけではないことから、他の要因も関わっていると考えられているようです。遺伝による発症に関しては、まだまだ様々な見解があるようですね。

どのような性格の人が統合失調症には多いのかという研究も進んでいて、控えめの人、内気な人、おとなしい人や、神経質だけど無頓着な部分も併せ持っている人、ナイーブな性格の人、人とのコミュニケーションが苦手な人などが、統合失調症の人には多いといわれているようです。僕の場合、この例でいうと、「神経質で無頓着」が近いのかな?と思います。

統合失調症の遺伝子研究は進んでる?

色々な病気がある中で、遺伝子の異常により発症につながる疾患は、数多く認められているようです。環境には関係なく、原因となる遺伝子の異常のみで発症する疾患があったり、遺伝子に異常が認められても、発症には至らない疾患もあるようです。精神疾患の遺伝子研究はまだまだ確定的なことはいえない段階にあるようです。

統合失調症に関連する遺伝子研究によると、統合失調症に関する遺伝子が約260個も見つかっている研究もあるそうですが、発症リスクを2倍にするような要因と断定できる段階にはないようで、今のところ発症の原因を特定できるほどの要素とはいえないようです。今後の統合失調症の遺伝子研究による、統合失調症発症の原因解明が期待されます。

統合失調症の有名人って誰がいるの?

身近に統合失調症の人がいないという方も多いかと思いますが、実は有名人でも、統合失調症を罹患していることを公表している人もいます。ここでは、噂を除いて、公表している有名人を数名紹介したいと思います。統合失調症を少し身近に感じられるのではないでしょうか。

ハウス加賀谷 さん (お笑い芸人)
お笑い芸人のハウス加賀谷参さんは、強い精神病に長年悩まされ、1999年に統合失調症の診断を受けました。学生の頃に幻聴・自己臭恐怖症・幻覚が併発し、現在は服薬しながら活動を続けています。

今井メロ さん (スノーボーダー)
スノーボーダーの今井メロさんは、ブログで病状を発信していました。彼女の書いた『泣いて、病んで、でも笑って』には統合失調症だったと記されています。オリンピック選手だった今井メロさんは、史上最年少でプロに昇格しましたが、オリンピックで惨敗したことによって落ち込んでしまい、統合失調症を発病したといわれています。

長嶋一茂 さん (元プロ野球選手)
元プロ野球選手の長嶋一茂さんは、長嶋茂雄さんの息子として期待されすぎたストレスから、パニック障害と統合失調症を発病したと公表。親が偉大な選手だったことで、過度なプレッシャーがかかり発病に至ったとされています。

岡村隆史 さん(お笑い芸人)
お笑い芸人の岡村隆史さんは、うつ病と統合失調症を発症していると公言しています。2010年には体調不良を理由に休業していました。真面目過ぎる性格によって、不安感に襲われ、発病に至ったとされています。

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統合失調症の診断はどのようにされるの?

統合失調症は人によって症状の現れ方が様々なので、発症してから間もない時期は、症状が目立たず、統合失調症だとわからないことがよくあるようです。初期の段階で発見できて、治療が始められれば、重症化することを抑えることが期待されます。ですので、疑わしい行動や、言動が認められたら、早い段階で心療内科などの、医療機関で見てもらうことが大切です。

しかし、僕もそうだったように、本人には自覚がない事が多く、病院に行くことを拒否する場合、どうやって病院に連れて行くか、ご家族には難しい問題となります。詳しいことを説明せずに、黙って病院に連れて行くと、当事者が家族や病院に対して裏切られたと思い、病院に通わなくなったり、薬を飲んでくれないということになりえます。実際僕も治療に対して信用できず、断薬し、症状を悪化させたことが数回あります。ですので、丁寧に説明して、本人同意の上で診察してもらうことが重要だと思います。

統合失調症は治る病気なの?

統合失調症は焦らず、経過を温かく見守りながら治療にあたることが大切といわれています。数週間、数カ月、数年単位という時間の捉え方が必要です。一般的にいわれている、4つのフェーズを見ていきましょう。

前兆期発症
統合失調症の前兆のような行動や言動が現れることがあります。不眠や、光や音に過敏に反応したり、焦燥感が強くなったりします。このような状態には、ストレスや疲れによって、誰でもなりうる状態です。ですので、自覚症状も無く、知人や家族でも気づけないことが多いとされます。

急性期
統合失調症特有の幻覚や妄想や興奮などがあらわれるのが、急性期と呼べばれるこのフェーズです。不安感を持ったり、緊張した状態が続いたり、あらゆる刺激に対して敏感になったりします。思い込みが強くなり、周りの人と話が噛み合わなくなります。

休息期
急性期が過ぎると、感情が平坦化して、虚無感や、脱力状態になり休息期に入ります。寝ている時間が増え、引きこもりがちになります。このフェーズでは精神状態は不安定で、刺激が引き金になり、急性期に逆戻りすることがあります。

回復期
それまでの症状が回復していき、ふさぎ込んでいた状態から脱していきます。この時期には頭で考えることが難しくなり、日常生活が困難になったり、人とのコミュニケーションが乏しくなったりすることがあります。

統合失調症患者を30年ほどの追跡した研究では、統合失調症を発症しても、ほとんど生活に影響がない人は20〜30%、症状は存在しているけれども日常生活に支障をきたさない程度の人が25〜30%、重症のまま過ごしている人が15〜25%だそうです。ですので、統合失調症と診断されても、半数以上の人が、社会の中で普通に生活できる状態になるということだそうです。

新しい薬が開発されたり、カウンセリングや、リハビリなどが昔と比べて質も良くなってきていることもあって、これらの数字より更に多くの人が普通に社会生活が営めるようになっているそうです。医療の進歩でより多くの人が問題なく社会生活を送れるようになるといいですね。

統合失調症は薬での治療がメイン

統合失調症の治療に服薬が欠かせません。治療の途中で、自分の意志で断薬したりすると、かえって症状が悪化したり、その後の服薬での作用が強く出て、本人が苦しい思いをしたりします。

まだ病気の自覚時症状がない時期は薬を飲むことに対しての違和感や疑問を持ったりしている事が多く、服薬を続けるのは難しいですが、医師の処方した量の薬をきちんと飲み続けることが、回復へ向かうための近道だと思います。

僕も服薬が嫌で断薬したことがありますが、症状が強く出て、まわりの人に迷惑を掛けてしまったことが何度もあり、今では反省しています。医師の方とよく相談しながら、用法・用量を守って飲み続けることがとても大切だと、今なら理解できます。

統合失調症は接し方が難しい?

統合失調症は、約100人に1人がなる可能性のある身近な病気で、脳内では、情報を伝える伝達物質のバランスがくずれることが分かっていますが、具体的な発症の原因はまだはっきりとわかっていません。家庭の環境のせいで発症すると思い込んでいるご家族は多いようですが、なにか発症する行いをしたから発症するわけではなく、誰にでも発症する可能性があるのがこの病気の特徴といわれています。

統合失調症を発症すると、本人は大きな不安を感じます。幻聴などの幻覚や、統合失調症特有の妄想により、独特な世界に引きずり込まれ、周りの人が全員敵のように感じることもあります。

家に居ても、引きこもりがちになります。家族に対しても不信感を抱くことがあるので、家族は統合失調症と診断されても、無理に「治す」や「良くなる」などと、現状を否定する言葉をかけずに、「あなたを無条件で受けとめる」というメッセージを送ってあげることが大切だと思っています。

治療は基本的に医師の投薬によるものが大きく、想像以上に時間がかかります。症状が軽いと医師に言われた僕でも、最初は受け入れられず、薬を飲まなかったりしました。病気を受け入れ、規則正しく服薬をし、自分で寛解したと感じられるまでには9年ほどかかりました。ですので、本人の病気に対する理解が、治療の進み方に大きな影響を与えるのだと思います。

周りの方が、現在の状態や、医師が進めている治療法を理解し、長い目で寛解までの道筋をイメージしながら接していくことが大切です。医師との話し合いの中で、病気の見通しや、最善の効果をあげる方法を共有することで、安心とゆとりが生まれるはずです。また、寛解した時のイメージを医師、ご家族、本人で共有することも、順調な回復のためには必要だと思います。

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統合失調症と歩む時間

統合失調症は誰でもなりうる病気です。何が悪かったから発症したとか、これが原因で症状が出るようになったなど、現在では解明されていない事がとても多い病気です。

僕の場合は、ある時に、「病気は治すために治療する。でも、治らない病気なのであれば、もうそれは僕という人間の一つのキャラクターだ」という風に思うようになりました。それからは、気持ちも楽になり、病気に対するイメージも悪くなくなり、自然と寛解まで歩んでこれたと思っています。

100人に1人の確率で発症する病気とされているので、残りの99人とは全く違う人生を歩むことになります。でも、そこを悲観するより、「他の99人には体験できない特別な人生が待っている」とすべてを受け入れることで、前向きな気持ちになることができます。

もちろん社会においてももっと統合失調症に対する理解が広まることを期待しています。いつか、病気への偏見がなくなり、一個人の”キャラクター”として認知されることを願ってやみません。


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