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狐塚冬里
2014年7月31日 22:55
辛い時ほど上を向け、とわたしに言ったのは誰だっただろうか。握り締め過ぎて白くなってしまった拳を広げると、一気に血が流れ始めて赤と白が入り交じった手の平はまるでひき肉のように見えた。案外えぐいなとそれを見下ろしていると、何もかもがどうでもいいような気分になっていく。手をつけていない山積みの宿題も、鉛筆で何回も上からぐちゃぐちゃに書き消した進路希望表も、昨日言われた心ない言葉も、全部が同列のよ
2014年7月2日 01:26
きみが横で泣いている時、うまい慰めの言葉が見つけられない。大丈夫だよ、とか、ぼくがいるよ、とか。言っても気休めにしかならない気がするし、きみが泣いている本当の理由を知らないから怖くて言い出せない。だって、もしきみが泣いている理由がぼくだったら、声をかけることすらいけないことのような気がしてしまうから。だから、今日もぼくは何も言えない。そんなぼくを見かねて、きみはたまに顔を上げる。「