シェア
狐塚冬里
2014年4月19日 23:13
「なぁ~こういうの、やめない?」「やめません」「けどさ~そろそろいいんじゃないかなって思っちゃったりしちゃったりするわけで……はい、すみませんでした」ひと睨みするだけでピシッと敬礼の体勢を取った幼馴染み兼恋人に満足げに笑みを向けると、またすぐに溜息が返される。もちろん、それはきれいに無視して彼の前に大きなホールケーキ(それも今が旬のイチゴがたっぷり!)を置いた。ロウソクはどうしますかと
2014年4月13日 20:18
あたたかな日差しの差し込むリビングで横になると、窓から見える太陽が少し眩しい。それでもうっそりとした眠気に誘われて無理矢理眠ろうとすると、ふわりと風が室内に入り髪を撫でていった。家族の誰かが窓を開けたのだとわかっても、眠くてまぶたは開かない。うとうとと、世界で一番落ち着く匂いのする空間で眠ろうとしていると、「あんた、また寝てんの?」という遠慮の欠片も何もない母の声がした。「そんな
2014年4月11日 19:41
色のない地に、私たちは立っていた。──ああ、負けたのか。湖に一滴の雫が落ち、波紋が広がるように私の心にそんな言葉が浮かんだ。冷たく、硬直し、もう声を発することも、もちろん笑うこともなくなった5人の友人たち。ただ四角いだけの灰色の世界の中、溜息が漏れた。傷だらけの身体は、本来なら赤く染まって見えただろうに、どうしたことか何の色も、そこにはない。すでに乾いているからなのか、あの鉄が錆び