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かいぼり2022の記録
池や沼の水をくみ出して泥をさらい、環境整備する「かいぼり」は、日本では冬の農閑期に伝統的に行われてきました。近年では「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」というテレビ番組で広く周知されました。
この「かいぼり」、当山では2020年の夏に10年ぶりに実施。それから2年が経ったところで再び実施の機運が高まり、2022年の10月から12月にかけて59日間をかけて行われました。以下はその記録です。
・10月14日(かいぼり初日)
ブルーシートで池の周りを養生し、まずは生き物の引っ越し。写真には写っていませんが、この写真の右に大きなプールを設置し、鯉や水生生物はそちらへ移動。今回も地元の名人Tさん(写真右)がプロジェクトリーダー。
![](https://assets.st-note.com/img/1671367862499-FdIDap1wB6.jpg?width=1200)
・10月23日(かいぼり9日目)
池の水は排水を続け、少しずつ池底が見えるように。雨が降れば水かさは増し、また地形的に窪んでいて山の水が溜まる(湧き水)ので、排水も思うようにはいきません。池底の岩盤にも傾斜があるので、まずは浅瀬から、泥を土嚢袋に詰めていく作業。ひたすら続きます。
![](https://assets.st-note.com/img/1671368372015-U2bGhBnVu8.jpg?width=1200)
・11月3日(かいぼり20日目)
写真左の池底(深瀬)も見え、土嚢袋がどんどん出来上がります。写真記録を撮っていない日も、作業が続けられています。
![](https://assets.st-note.com/img/1671368623810-PM6bDgSgFa.jpg?width=1200)
・11月7日(かいぼり24日目)
土留めや支えの杭打ち。水を抜いてはじめて基礎が劣化している箇所が発見でき、そこを修繕します。土木隊長Kさん(写真手前)が指揮。足をぬかるみに取られながらの作業なので、重労働が続きます。
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・11月20日(かいぼり37日目)
この日までに、今回発注した土嚢袋が300袋全ていっぱいになりました。池底で作業して詰めた土嚢袋を池上まで1つ1つ担いで運ぶのは大変な作業で、何か妙案はないかと考えあぐねていたところ、プロジェクトリーダーTさんが、ハシゴを改良してトロッコを作って下さいました。紐を引くと滑車で池上まで運べる仕組み。こういった造作をDIYして下さるTさんの技術力と実行力。いつも助けられています。
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・11月23日(かいぼり40日目)
土嚢袋作りは終わり。池底に網を敷きます。鯉が泳ぎまわる際に泥を巻き上げないようにする為の工夫です。黒い土嚢袋は網の重しに。
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・11月25日(かいぼり42日目)
ところで、かいぼりでさらった池底の土はどこへ行くのか?そう、肥糧を混ぜ、養土として山内のつつじを支えるのです。
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・11月26日(かいぼり43日目)
池の水かさも増してきました。
![](https://assets.st-note.com/img/1672059518133-u5aLielAa9.jpg?width=1200)
・11月29日(かいぼり46日目)
水位が完全にかいぼり前まで回復。作業用のブルーシートも撤去し、あとは鯉や生き物を戻すだけです。
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・12月5日(かいぼり52日目)
かいぼりの成果の池底土に肥料を混ぜ、つつじの根本へ。つつじ庭園を維持する為の地道な労力が続けられます。
![](https://assets.st-note.com/img/1672059921400-gobuisneyw.jpg?width=1200)
この堆肥作業ではNさんが活躍。そもそも今回のかいぼり計画は、「やせ細っていくつつじ庭園の維持に、養土が不可欠」というNさんの熱い想いからスタートしたのでした。ここで記した日程以外でも、Nさんは足繁く通い、山内のつつじ養生に務めて下さいました。(※ちなみに現在も進行中です)
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・12月11日(かいぼり58日目)
天候や水温など見ながら作業日を計っていた鯉や水生動物の放流日が、明日に決まりました。プールに仮住まいしていたおよそ2ヶ月間、生き物たちはストレスも無く、快適に過ごしていた様子。冬場は冬眠時期でエサの心配もなく、管理も手がかかりませんでした。
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・12月12日(かいぼり59日目、最終日)
放流!プロジェクトリーダーTさんの手によって、鯉や生き物たちは再び池へ!これをもって、かいぼり2022の全ての工程を終了しました。
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Tさん、土木隊長Kさん、つつじ養生担当Nさん、そして全ての作業をともに行った寺務Sの献身的なはたらきで、今回のかいぼりを行うことができました。有難うございました。
かいぼりの目的は「池の環境整備」です。そしてつつじの根本に肥糧を入れることは、「つつじ庭園の維持」に他なりません。これら2つは別々の事のようですが、「かいぼりで出た土をつつじ庭園の用土にする」ことで、地産地消のいとなみとなり、それは仏教の説く「縁」=循環型社会のロールモデルとなるのです。
仏教の世界観をまさに寺の境内で具現化できることを、誇らしく思います。
昔のお寺は、こうした取り組みをことさら意識する訳でもなく行っていたのかもしれませんね。
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(副住職 記)