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サイバー・C・プロジェクト

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SF小説『サイバー・C・プロジェクト』のハコ。
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#箸アート

前夜 /第10話

前夜 /第10話

「今日は、すごく長い一日だったなぁ」
すっかり雨が上がった帰り道、俊が腕を組み、うーんと上に伸ばしながらぼやく。
「菜々子、大丈夫?」
うん、と菜々子は頷く。
すると俊は少し顔を曇らせて言った。「腕輪のことは、分からなくてごめんな。それと他にも、色々、黙っててごめん。」

菜々子は、ふるふると首を振る。
「平気だよ。色々ショックだったけど。でもまぁ、今はこうして元気だし、皆もいるし」
菜々子がそう

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No.1。そして猫 /第9話

No.1。そして猫 /第9話

「ピヨ?」
入ってきた彼女をみて、菜々子はぽかんとした。
まさかこんなところで会うとは思っていなかっただからだ。
会えて嬉しい気持ちよりも、戸惑いが大きい。
それにさっき、俊は彼女を『No.1』と呼んだのだ。

「菜々子。久しぶり。」
ピヨは飄々とした態度で菜々子にさらっと挨拶をする。
そして先生の方に向き直って言った。
「私を覚えていますか?先生」
先生は、こっくりと頷く。目には涙が浮かんでいた

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名前/第3話

名前/第3話

男はシュンと名乗った。
偽名かと思ったが
「ニンベンに、ムって書いて…」
とわざわざ漢字まで教えてきたので本名なんだろう。

俊は冷蔵庫から水の入ったペットボトルを放り彼女に投げる。
わっ、と声を漏らしつつなんとかキャッチすると
「ナイス」
と俊は顔をくしゃっとさせて笑った。

硬そうな黒い髪。長身で体格も良かったが大柄でもない。
案外、歳も近そうだ。

俊は彼女がアンドロイドと分かってからも、す

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