はじまりの詩 自由歌集
みろよ撓むる蝶々の寂滅のひかり
擦硝子にはて嘴うつる響きかな
けふもまた春うらら鳥たちよ
思へば思ふほど時過ぐるは空の青きかな
敗北の銀が泣いてる詰将棋
間合いの大山将棋金固める
たんぽぽしか分からぬ野草午前に金銀揺れぬ
立春の頃をば寒くし東風や大栗川の夏留鴨いかなりけむ
流るるみゆ大栗川の白銀鳥の脚おくれて模様をつけき
梅雨は訪れたのではないか春驟雨
子等は行き子等よ憎きと思へども黴生す床でわれ臥してゐる
黴は色々あれど泡のやうに起ちて七日で一面染める
炎天とて悲しみに暮れる甲虫雨夜しづかに排水溝に落ちる
後朝の夏留鴨二羽は滸にて雨はとつくに止んでこの川のなめらかさよ
顔を出す目見えずみみず蠕々と未だ乾涸びていないアスファルト上を
夏留鴨は凸間凹間すいすいと
もう春だから蜂が飛ぶまた或る橋梁飛ぶシジュウカラも
晴れ間にこころさらさらと詩うたう
Jimi Hendrix 小さき翼翔け巡る
さらば青天に飛べよさらばだ