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「僕は正しく傷つくべきだった」

「僕は正しく傷つくべきだった」
ドライブ・マイ・カー/濱口竜介監督

ドライブ・マイ・カーの劇中でこんな台詞が出てきた。(ヘッダーは一番好きだったシーン)

正しく傷つくってすごく体力のいることだよな、と思った。

私には、ちゃんと傷ついた思い出がある。
正しいかどうかは分からないけど、ちゃんと傷つくことができた。

数年前、ある人に高校生のときの話をした。

高校生のとき、家ではいつも誰かが怒っていて、帰りたくなかった。自分のことがどうしようもなく嫌いだった。心の中には暗くて、どろどろした感情がたくさんあった。
クラスメイトには「悩みとか無さそうだね」と言われるような明るい性格だった。確かに、私は明るい性格だし、無理しているつもりは全くなかった。
でも、急に涙が出て止まらなくなるときがたまにあった。なぜ涙がでるのかは分からなかった。

その人はただ聞いてくれた。
最初は笑いながら話していたけど、気づいたら涙が止まらなくなっていた。
話し終わったとき、その人が
「たくさんつらい思いをしてきたんだね」と言った。私はもっと泣いた。

そうか、私はつらかったんだ。と思った。

そのとき初めて、そのときの、いろいろなものを憎んで、どろどろした感情でいっぱいになっていた自分を認めてあげられたような気がした。

高校生のときの私は、「傷ついている」ということに気がついていなかった。たぶん、自分の負の感情に目を向けるのが怖かったし、そのやり方すらも分からなかった。

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正しく傷つく、ってすごく体力のいることだ。

自分の痛みを直視するのは苦しい。だからこそ、痛みや悲しみに蓋をしてしまうこともある。

そうしないと生きていけないくらい悲しい想いをしている人もたくさんいるだろう。

だけど、ちゃんと傷つくことは、幸せになるために必要なことだと思う。
傷ついた時に目を向けられなかった悲しみ、苦しみは色んな形で自分を苦しめるものだと思う。

悲しみを隠すのが上手な人は多い気がする。
そんな人にも、悲しいときにはちゃんと悲しんで、正しく傷ついてほしい。

自分の感情を見てあげられるのは自分しかいないから。

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