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『ひとりだから楽しい仕事 日本と韓国、ふたつの言語を生きる翻訳家の生活(クォン・ナミ/藤田麗子=訳/平凡社)』、読了。

 ”30年間に、300冊以上の本を翻訳”、という経歴が、まず。素晴らしい、韓国を代表する、日本文学の翻訳家のエッセイ。

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日本(の翻訳家たち)と似ているところ:

 >インターネットがなかった時代は、一日の仕事量が本当に多かった。200字詰め原稿用紙で600枚程度の本なら、半月あれば訳せた。一カ月に原稿用紙1000枚分ぐらいを訳してやっと世間一般の月給ぐらいになるので、長年ずっと目標は100枚だった。

 翻訳だけで、食べて行くのは難しい、という点は、日本の翻訳家たちの境遇に似ていました。

彼女個人の特性:

 >やっぱり勇気を出して表紙を指さしながら言った。
 「これ、私が書いた本なんです」
 「すると中年の店員さんが無表情に言った。
 「あ、そうなんですね」
 よかった。「で?」とは言われなかった。オホホ。

 礼儀正しいけれど、自己顕示欲も確かにあって
(※そうでなければ、仕事がもらえない職業なので、当然と言えば、当然ですが)
 ご本人なりの基準があるところが、エッセイが読まれている理由なのかな、と思いました。

韓国ならではの特徴:

 >変更されたタイトルを見て、初めて腹が立ったのがこの『恋愛中毒』だ。29歳の頃、ちょうど東京に住んでいた私は、『29歳のクリスマス』を毎週欠かさずに観ていた。大好きだったドラマのノベライズ本を翻訳できることになってものすごくうれしかったのに、『恋愛中毒』という的外れなタイトルで出版されて、どんなに悲しかったか。ほぼ同時期に出版された山本文緒のベストセラー小説『恋愛中毒』に埋もれて目立たなくなってしまったし、なぜ『29歳のクリスマス』という原題を使わなかったのか、まったく理解できなかった。

 日本だと、原題をそのままカタカナにしてしまって、「それじゃ、伝わらないだろう」と、言われてしまうことの方が、多い気がします。
 (※個人的には、特に、英語などが原題の場合、冠詞を何も考えずにとっぱらったり、動詞を安易に名詞化したりしてしまうことの方が、問題だと思います)

まとめ:

 娘さんとのやりとりが楽しい、女性のエッセイ、でもありますし、
日本語で書かれた作品の、翻訳した人のエッセイ、でもありますし、
『東京ラブストーリー』放送の頃に東京に住んでいた過去から、
コロナ禍の韓国の現在まで(※本国では、2021年5月に発行)、
生きて来た人間のエッセイ、でもありました。
 これらのどれかに、ご興味のある方に、お薦めしておきます。

 終わり。

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gunparademarchist
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