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九段理江『東京都同情塔』感想
ようやく九段理江『東京都同情塔』を読んだ。 https://amzn.asia/d/7iXygc5 堅牢な建築物を建てるように、定義された正しい言葉により主人公の牧名の思考が組み立てら…
一穂ミチ『スモールワールズ』感想
Amazon prime Audible で一穂ミチ『スモールワールズ』を聴いた。作品が前から気になっていたのと、短編連作なので聴きやすそうで選んだ。 https://amzn.asia/d/ceSeoga…
映画『関心領域』感想
先日、シネ・ギャラリーで『関心領域』を見た。やっと見れた。
映画の最中、ずっと不穏で落ち着かなかったので、退屈はしていないが辛かった。Xで見かけた映画評の中で「退屈と感じる人もいるようだが、大量に人が死んでいるのに退屈と感じたなら、それはそれでいやなメタ体験」というものがあり、いずれにせよ嫌でつらい体験をする映画なのか。
ルドルフ・ヘスとヘートヴィヒ・ヘスのような関係と性格の夫婦、そこそ
九段理江『東京都同情塔』感想
ようやく九段理江『東京都同情塔』を読んだ。
https://amzn.asia/d/7iXygc5
堅牢な建築物を建てるように、定義された正しい言葉により主人公の牧名の思考が組み立てられていく。まるで現実を再定義するかのように。
牧名はかつて、言葉に自分の現実を否定され上書きされて傷を負った人間である。だから言葉にこだわるし、建築家となり、現実を支配しようとする。
だが、正しい言葉による
一穂ミチ『スモールワールズ』感想
Amazon prime Audible で一穂ミチ『スモールワールズ』を聴いた。作品が前から気になっていたのと、短編連作なので聴きやすそうで選んだ。
https://amzn.asia/d/ceSeoga
6作通して一番好きなのは『魔王の帰還』だ。再出発につながっている終わり方が良い。
良かったところ
まず、文章が特徴的だと思った。日常の出来事によって動く登場人物の内面を、心の奥深
配信で見た映画『ある男』感想
Amazon PrimeVideo で映画『ある男』を見た。
自分でない誰かになってみたい。
私は比較的そう思っているし、自分でも自覚がある。例えばSNSでは本名を出したくない。仲の良い友人はいいけど、会社の、特に仲良くもない先輩とかに見つかっても微妙だし……というくだらない理由だけど。
今の自分が不幸に見舞われているわけでもなく、大きな不満も不幸もないけれど、本名を出すのが苦手だ。コン
Amazon audibleを使ってみた
私は本が好きだ。
平日は仕事から帰ってきた夜に、休みの日は午前中にカフェなどに行き、あるいは用事の合間に本を読んでいる。
でも割ける時間は限られていて、手を動かして家事をしないといけない。平日夜は食事の後片付けや部屋の掃除、休みの日はそれに加えて洗濯物を干したり服にアイロンをかけたり、平日のお弁当をまとめて準備したりで、なかなかまとまった時間が取れないのだ。
もっと本を読みたい。ずっと
映画『ミツバチのささやき』感想
子どもの視点
アナ役の女の子が黒くてぱっちりとした目で、いかにも無垢という感じで印象的だった。
子供の視点で世界を見ると、全体像が何枚も薄い膜に包まれていてよくわからないのに、今ここの断片は鮮やかで美しい。小さなアナと、彼女によりそう観客は、スペインの小さな田舎の村の、広く古めかしい屋敷の光る廊下や、のどかな村の焚火、月が明るく光る夜や、向こうまで何もない野原が美しく見える。
対して大人た
映画『コット、はじまりの夏』感想
大切に慈しむということ
アイルランドの田舎を舞台にした、静かな作品だった。親戚の家に預けられる少女と、預かっている夫婦のひと夏の交流を描いているが、この三人が交わす言葉は少ない。彼らは、大切な思いを表情と動作で伝えている。
預かった子供を最初にお風呂に入れた時の、手足をゆっくり洗う手つきとか、怒鳴ってしまった翌日にクッキーを差し出してきたこととか、仲直りの印に牛舎を掃除するブラシとか。
育
河﨑秋子『ともぐい』感想
今年の1月に直木賞を取った、河﨑秋子『ともぐい』を読んだ。
主人公は猟師であり、北海道の雪深い山の中で、ほかの人との関わりをほとんど断って、暮らしている。獲物を見つけ狙い、仕留めて、解体して食し毛皮などに利用するまでの過程が生々しく描かれる。
時に生しさから、読むのが大変だった個所も正直あるが、取材をたくさん行ったのだろうと思う。
(※後に、『オール読物』2024年3・4月号の第170回直木
万城目学『八月の御所グラウンド』感想
万城目学の本はずっと前に『プリンセス・トヨトミ』を読み、「小学生が考えそうな、奇想天外でわくわくする妄想を、親しみのある登場人物と歴史的事実、自分にとって馴染みのある街への愛情でユーモアある物語にしている小説家」という印象を持っていた。
『八月の御所グラウンド』に収録されている二編はいずれも京都であり、やはり作家にとって縁の深い場所を舞台にしている。そして、両方とも、京都に過去ゆかりのあった
映画『夜明けのすべて』感想
『夜明けのすべて』を観てきた。良かった。ポスターが恋愛映画っぽかったのだけど、ネット上の評判が良く、また恋愛映画ではないとも聞いたので見に行った。
主人公の藤沢さんと山添くんは、それぞれPMSとパニック障害のため、他の人と会話をしたり、乗り物で出かけたり、飲み会に参加したりするなど、普通に過ごすのが難しい時がある。そのためキャリアも途絶してしまった。その二人が関わるうちに助け合えることに気がつ
はじめまして、長めの自己紹介
子供の頃から本を読むのが好きだった。大人になってもそれは変わらなかった。というか、本当の事を言ってしまうと、本を読むことほど強く、かつ持続する興味を他の事には持てないまま、現在に至っている。物語が好きなので、映画や演劇を観ることも好きだ。
自分で生活費を稼がないといけないので、昼間は会社員として働いて賃金を貰っている。
そのままだと狭い行動範囲のまま閉じこもってしまうので、流石に危機感を覚え