不登校先生 (32)
体の傷は、時間とともに回復していく。
けれど、心の傷は、必ずしもそうでない。
それを実感している。
毎週月曜日、診察。一週間の状況を主治医の先生に説明。
その上で今自覚できるきつい症状を、具体的に伝えると、
先生は、それに合わせて薬を処方してくれる。
4月に一つだった薬が、今は4種類に増えた。
主に、痛み、睡眠不足を軽減する薬。
今までには飲んだことのない薬。
初回はガツンと効く、けれど、じわりじわりと体が慣れてきて、
効果は薄れていく。特にきついのが、睡眠が続かないことだ。
9時に寝る。11時に起きる。薬の効果はまだ効いているのですぐ眠る。
・・・・1時前に目が覚める。トイレに行こうと思ったら立ち眩みがする。
まだ薬は効いているようだ。ふらつきながら用を足し、再び布団へ。
グーッと眠れた。と思った3度目の目覚め。3時。時計を見て落ち込む。
頭に痛みが残る。ロキソニンを飲んで痛みを凌ごう。
空腹のロキソニンがきついので、冷蔵庫のハムやらちくわやらを頬張って、
多めの水分で、ロキソニンを飲んだら、
再び布団に戻る。今度は何時間眠れるのだろう。
そうしている間に、カーテン越しの空の色が明るんでくる。
ああ、今日も全然眠れた気がしない。
砕け散った心には、パラパラと温かい言葉や連絡が、
少しずつ心を回復させてくれている実感はあるのに。
その場所は相変わらず、腐海の底のような場所で、
パラパラと振ってくる優しさや励ましが、
少しずつ積もってくれるのだけれど、それを形にするには
まだまだ全然自分自身は動くことができなくて、
雪の様に花びらの様に舞う、言葉たちが。
この世界にある美しくて素敵なものだと感じながらも、
それを自分の元気として取り込むまでには至らない。
回復したいと思いながら、回復に動けない。
そんなアンバランスさが、睡眠不足などに表れているのだろう。
増える薬が突きつける、自分が回復には向かっていないという現状。
心の温度は少しずつ温かくなっているのだけれど、
まだまだ、それに体がついていけていない。
いつになったら薬が減っていくのか、それともまだ増えるのか。
心の傷が回復するのは、体の傷が回復するようにはいかないんだ。
明るい兆しがいつ見えてくるかもわからない。
僕は今日も、起きるとすぐに緊張しながら、時計に目を向け、
自分がとれた睡眠時間に絶望する。
↓次話
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