洋書を読む女性

【大人の読書感想文】平成まで生きた特攻兵

久しぶりにnote投稿します。
夏休みシーズンということで、小・中学生の宿題の定番である読書感想文なるものを書いてみようと思います。

はじめに

子供の頃は読書感想文は嫌いな宿題の一つでした。なぜ嫌いだったのかといえば、読書感想文を書くために本を読むという、「半ば無理やり感想を導きながら本を読むという行為」に否定的であったからです。いや、そもそも、夏休みという長期休暇と休暇であるにもかかわらず大量の宿題を課されることに対して否定的であったのかもしれません。「こんな長い休みとこんないっぱいの宿題はいらないから、授業がある方が楽」と子供の頃から言っていましたからね。

本を手に取ったきっかけ

この本を手に取ったのは、とある待ち合わせ場所に早く着いたので、時間を潰そうと立ち寄った本屋の店頭に貼られていたポスターに9回出動して9回戻ってきた特攻兵(正確な文言まで覚えていません)という見出しで紹介されていたことに興味を持ったからです。

死ぬことが任務ではない、敵艦に爆撃することが任務

この物語の主人公である佐々木友次氏は毎日上空を飛ぶ旧逓信省の飛行機に憧れ、自分も飛行機乗りになることを目指します。もともと軍人志望ではありませんでした。それが戦況が悪化した終戦間際に万朶隊として特攻の任務を命じられます。いや、最初はそれが命を賭する特攻であるということは、隊長以外には告げられていなかったと記されていました。現地の基地に着いて、それが特別攻撃であることを知らされます。つまり故郷に別れを告げる間も無く戦地に赴いたのです。

隊に選ばれた隊員は飛行の精鋭ばかりであったと記されています。それは陸軍で最初の特攻であったから、軍上層部としては、絶対に成功させる必要があったからです。精鋭であるからこそ、隊長はじめ隊員は「自爆ではなく敵艦に爆撃をしたい」と考えます。それは、当然の思いでしょう。使い捨ての一撃のために厳しい訓練を積み重ねてきたわけではないはずです。また、一流のパイロットであれば、飛行機を大事にしたい思いも一入(ひとしお)であったはずです。

爆弾を投下することができる

ある日隊長がこう告げます。「実は爆弾を落とせるように改造してもらった」と。
通常これは命令違反です。それでも一流の飛行機乗りとして片道切符を隊員に渡すことが偲ばれてのことであったと推察します。

この本ができるまで

これ以上本題に触れると、ネタバレになってしまいますので、詳細は控えますが、当の佐々木友次氏は2016年までご存命であったようです。著者の鴻上尚史氏も「必ず死んでこい」と言われ続け、9度も帰還した佐々木氏に感銘を受け、「どうしてもこの人の障害を本にしたかった」と書いています。執筆前にインタビューができたのも運命の巡り合わせであったと思います。当時の指揮官の命令は絶対であり背くことは許されません。本に記されている以上の仕打ちを受けていたかもしれません。この本は4章構成で、1章と2章は戦時中の実話に基づく話、3章でインタビューの記録と続きます。

日本の働き方

有給休暇が取れない日本のサラリーマン、監督の指示に背けなかったスポーツ選手、上司の指示で不正を働いてしまった作業員、最近でも様々な話題を耳にします。

戦時中の軍人でさえ、上官の命令に背いて、「本質を追求した仕事」をしました。この本を読んだ感想として現代の「働き方改革」を比較に出すことは、少々違うと思いますが、リアルな生(せい)を学ぶには良い本であると思います。目的となすべきことがずれてしまってはならないのです。精神論では物事は動かないのです。本質を考え取るべき行動が、命令と違っていたら、命令を無視するのではなく、反論ができるような組織が今の日本にも必要であり、そういう気概のある人が今の日本には必要なのではないかと考えさせられる一冊でした。ここまで本のタイトルについて触れていませんでしたが、最後に読んだ本のリンクを貼っておきます。



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