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2025年1月サークル:教師の「わざ言語」

2025年最初のTOSSファミリーサークル例会でした。それぞれが、効果的な教材や模擬授業を持ち寄り、順番に発表していきます。
時には全員で同じ教材で模擬授業して見せ合います。
同じ教材でも授業する人が違うと、授業の組み立てや発問・指示、授業の雰囲気が全然違います。
こうやって授業を模擬でもやってみるので
スポーツの実戦練習のように
武道の組み手のように
授業力の技能的な部分が伸びていくと思っています。

サークルの様子

私はTOSS冬合宿で、谷和樹先生から
教えてもらった
「わざ言語」の情報を紹介しました。

『わざ言語:感覚の共有を通しての「学び」へ』の編著者である生田久美子氏は次のように話しています。

まず「わざ言語」 とは一体何だろうかということですが、この「わざ 言語」という用語は、ハーバード大学の教育哲学者 V.A.ハワードが著書『Artistry』(1982 年)の中で 用いた「The Languages of Craft」という用語を私 が日本語訳したものです。それはわざの伝承の過程 で頻繁に使われる、科学言語や記述言語とは異なる 独特な言語表現を意味しています。

日本教師学学会第 13 回大会(2012 年 3 月 3 日)シンポジウム 1 記録

「わざ言語」の別な説明も見つけました。

師匠の身体のなかの感覚をありのままに表現することによって、学習者の身体のなかにそれとおなじ感覚を生じさせてゆく言語である。

『わざ言語:感覚の共有を通しての「学び」へ』

例えば歌舞伎の中村歌右衛門(五世)は團十郎(九世)に台詞回しの教えを受けて「口で言わずに腹で言うのだ」という「わざ言語」を授けられました。

「口で言わずに腹でいう」

歌舞伎をやったことがない私には見当もつきません。
ただ、歌右衛門はこれで台詞回しが変わったのだそうです。

歌舞伎の世界には他にも
「指先を目玉に」
「揚げ幕に丸い穴をあけてそこから向こうをのぞくようにしたら」

のような「わざ言語」があります。

歌舞伎だけではありません。
声楽では、
「胸声」
「頭声」
「目玉の裏から声を出しなさい」
「目の下に棚を感じて声を出しなさい」
「頭をつるようにして声を出しなさい」
生田久美子著『「わざ」から知る』東京大学出版会

合宿では教師の世界にも「わざ言語」があるというお話を谷先生がしてくださいました。

それは向山先生の授業に登場すると教えてくれました。例として挙げられたのが「小指が動く」です。

授業中発言したい子供がいる。手が挙がらない時も多い。しかし、しゃべりたい子は、かすかに小指が動く。指先の動きを見逃さない教師なら、その子を指名することができる。

向山洋一著『新版 続・授業の腕をあげる法則』(学芸みらい社)

若い頃、この文章を読んだ私は、授業中、子供の小指ばかり気にしていました。でも、そういうことじゃないのです。
上の文章が紹介されている本では、
次のような節に書かれているのです。

子供は断片的にしか訴えない。言葉にさえならない訴えをつかむのは教師の大切な仕事である。

向山洋一著『新版 続・授業の腕をあげる法則』(学芸みらい社)

40人の子供を相手に授業していても、
断片的な訴えを1秒の何分の1という瞬間で見取ることができる「世界」があること言語化しているのです。
向山先生は、「小指が動く」に関して次のように話されています。

向山氏は「小指だけではない。体のどこかに何かが起きる。それを見るのだ」というようなことを言われた。

石川真悦『ここが聞きたい学級経営QA』TOSSメディア

その後、関西中央事務局代表の先生が
「わざ言語は2つある」という谷先生の言葉を教えてくれました。

1 子供にかける「わざ言語」
2 教師間で共通する「わざ言語」

先ほどの「小指が動く」は2ですね。

では1の子供にかける「わざ言語」とはどんなものがあるのでしょう。

私がまずすぐに思いついたのが
マット運動の前回りの向山先生の指示である。

「ボールのように回る」だけでは駄目だ、はその通り。
 向山は「ボールのように回ってキョンシー」と指導した。 
 キョンシー、昔人気のあったテレビアニメのお化けである。

『楽しい体育の授業』2004年4月号

この指示を追試すると、子供の動きが変わる。回った後に両手を前にピンと出す。
キョンシーだから2回連続の前回りに接続できる。
このようなお話をサークル員の皆さんと
楽しくやりとりしながら話しました。
サークルでは、こうやって自分がセミナーや研修会で学び、自分で学んだことをアウトプットし合う場でもあります。

この後、谷和樹の教育新宝島のサンプルから

「わざ言語」を探してみようという活動をしました。
今回は、向山先生の授業参観のテープおこしから
早口言葉を早く言わせる時の言葉に注目しました。

京の三十三間堂の仏の数は、三万三千三百三十三体あるという。

という早口言葉を子供たちに言わせるとき
向山先生はこのように言われています。

できるだけ早く言う。
はい、(   ?   )で
ヨーイはい。

谷和樹の教育新宝島サンプル特典資料

この(?)に入るのが「わざ言語」です。

向山先生のイメージしている様子が
子供たちの頭の中に伝える「わざ言語」です。
サークルの皆さんに、いろいろ、予想してもらいました。
「超スピードで!」(違います)
「新幹線みたいに!」(そう言う感じです)
「スポーツカーみたいに!」(いや、乗り物ではないんです)
「飛行機みたいに!」(ごめん、乗り物から一旦離れて笑)

正解は…

教育新宝島のサンプルページにあるので
知りたい方はぜひ行ってみてくださいね。
授業音声サンプルの「タイムコード11:00」あたりがに出てきます。

サンプル特典音声の画面

サンプルページはこちらから!

サンプルページは、貴重な資料や役立つ情報が大公開されています。

この日、TOSSファミリー初参加の先生がいましたが、
「とても面白くて、授業だけではなく、少年団指導にも役立つ内容でした!」とお話ししてくれました。

こんな感じで、教員研究の会TOSSファミリーサークル、楽しく学ぶことができました!

参加してくれた皆さん、ありがとうございます!

追伸
よくこの投稿のヘッダー画像はchatGPT4oに生成してもらっています。
今回も「師匠が弟子に言葉を媒体にして、技を伝える。技言語。武道。師匠と弟子が並び立つ。 A master conveys techniques to his disciples using words as a medium. Technical language. この画像を生成して」というプロンプトで生成してもらいました。着物とか、漢字とか変なところはありますが、英語がちゃんと画像に入ってますね。

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