ナボコフ 詩抄 (15) Translated by Toshiya Kawamitsu
春
田園地帯へ 飛んでいく
発電機械 はにかんで
ひらひら 木の幹 枝を立て
煙 たちこめ まるで 波
カバノキ まだらのエイプリン
日よけ はずした 馬車のなか
ベロアのいすで くつろいで
今年最初のミツバチが
道ばた タンポポ おとずれる
雪は あばたに 島にふり
長方形の 吹きだまり
排水溝に 青々と
春のかおりは しっとりと
雪は 黒々 すすを置き
柱も 屋根も 年をへて
ひじのとがった 雨どいが
まっさら 上着 ほしがって
あるいは みどりの幕をひき
はしごと ペンキ屋 影 落とし
壁に 愉快な 影 落とし
別荘 寒く うす暗く
ハトのよろこび 水たまり
庭園 雲を うつしてる
蒼穹 つらぬく 枝の先
同じだ あの日と 同じ絵だ
いつでも 目の前 よみがえる
追放 遠くで すすり泣く
レミニセンスと よみがえる
静寂 倒立 同じ絵だ
忘れたものは 永遠に
至福の 気高い その 心
Spring
Translated by Toshiya Kawamitsu
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