『狂った果実』(1956年・日活・中平康)
昭和31 (1956)年は、戦後日本映画にとって重要な年となった。石原裕次郎が衝撃的にスクリーンに登場したのである。兄・慎太郎の芥川賞受賞作『太陽の季節』(5月17日公開)の「若者言葉の指南役」として日活撮影所に招かれた裕次郎。水の江滝子プロデューサーは、その自然なふるまいに魅力を感じ、長身痩躯の青年に将来の映画スターの素質を感じて、“太陽族”の若者・伊豆役を端役ながら用意。裕次郎の登場シーンはわずかながら、圧倒的な存在感がある。
そこで水の江は、石原慎太郎に書き下ろし