NZ生活のリアル
ニュージーランドに引っ越してきて、早くも2ヶ月が経とうとしている。生活も落ち着いてきたし、いい意味で異国の「日常」をゆったりと過ごせているのは、幸せなことだと感じる。
海外に旅行へ行ったり実際に生活したりすると、人はどうしてもキラキラした側面ばかりを切り取って見せびらかしてしまう。自分もそのうちの一人で、基本的に充実している様子しかSNSで投稿はしていないように思う。SNSによって剥き出しとなった人間の性は、所詮そんなものである。
という訳で、せっかくだから2ヶ月住んでみて感じたことを正直ベースで書き記しておこうと思った。完璧な人なんてこの世に存在しないように、過ごしていて何もかもが素晴らしい場所なんて存在しない。50カ国以上を旅してきた身として、これだけはハッキリと言える。
以下は、ニュージーランドで実際に2ヶ月間を過ごしてみて感じたことである。いいと思った面もそうでない面も、正直に思ったことだけを書いていく。
各種手続きが便利で簡単
ニュージランドに引っ越してきてから何かと手続きが多かったが、どれも本当に簡単でびっくりした。以下はその一例。
・ニュージーランドの運転免許証の取得
・IRDナンバー(納税者番号)の取得
・銀行口座の開設(ANZ)
特にIRDナンバーは、取得後にアカウントを作成してインターネット上で確認をすると、今までの給与や支払い税額が全てその場で確認できる。銀行口座もある程度は日本国内から開設の手続きができて、現地では書類の確認をするだけで済む。
日本からニュージーランドに越してくる際は、銀行口座の維持だったり年金絡みのことだったり、何かと苦労が多かった。でも、そういった苦労もニュージーランドだときっとないんだろなあと思う。日本の行政手続きも、もう少し簡素化して欲しいものである。
物価がそこまで高いとは思わない
歴史的な円安も相まって、海外での物価はとんでもないことになっているとのイメージが今はあると思う。確かに、食べてないけどラーメンは一杯2,000円するし、カフェのモーニングだってコーヒー込みで3,000円ほどすることだって良くある。
しかし、円安という理由を抜きにしたら、物価が高く感じられる原因は人件費が高いからという、その一点に集約されるように思う。人件費が高いから、外食をすると高くつく。人件費が高いから、ツアーに参加すると高くつく。人件費が高いから、人に何かしてもらうと高くつく。
その分、人に何かをしてもらうのでなく、DIY中心で日常を過ごすと日本より安く済むと感じる機会が案外多い。日本は人件費があまりに安すぎるのであろう。その安さ故に、人に何かしてもらうことが生活リズムの中心となっているように感じる。そこの意識を変えることができれば、別にニュージーランドの物価はそこまで高く感じない。
要は、ライフサイクルを柔軟に変えれるか否かということだ。当たり前だが、海外でも日本のライフサイクルを維持したいと願うなら、それなりの対価を支払わなくてはならない。ランチはいつも外で食べて、夜は飲みに行って、〆でラーメンを食べて。それは日本だからできることであって、他人の庭で同じことをしようとしたら高くつくのは容易に想像できる。
郷に入ったら郷に従うというただそれだけの話であるが、郷に入れば別に物価高もそこまで気にならないというのは新たな発見であった。以下は、参考価格。大体1NZD=100円くらいに思ってもらえればいい。
但し、ここは絶海の孤島で人口も500万人程度なので、基本的に寡占市場である。輸入品もそれなりにいい値段がする。
例えば、移動をするにしても航空市場は基本的にニュージーランド航空1社に独占されており、それなりに高額な運賃を払わないと都市間移動ができない。LCCはジェットスターが細々と大都市間を多少飛んでいる程度である。
ニュージーランドに来て、日本のコンビニ飯の素晴らしさを身に染みて感じるようになった。あれは迅速に高品質の製品を供給する体制と、街の至る所にまで張り巡らされた店舗網、そして旺盛な購買意欲が存在して漸く成立する話である。それが24時間利用可能なのは、まさに日本人の仕事と市場の巨大さのおかげである。市場原理は素晴らしい。
一人暮らしにはそこまで向いていない
ニュージーランドのペースは、明らかに誰かと過ごすことが前提になっているように感じる。カフェやレストランでも、一人でご飯を食べている人なんてまず見かけない。飲食店はどちらかというと、大切な人たちとの時間を過ごすために存在しているような気がする。
日本はおひとりさま文化に寛容な国だったんだなあと、改めて感じた。これまでバックパッカーとして色々な国を旅したりと、何でも一人で平気な人間であったが、ニュージーランドでずっと一人でいるのは少し寂しい気もする。
もちろん、世界各国から色々な人が集まってくる土地だから、コミュニティは無数に存在する。自分の居場所は自分の努力次第でいくらでも見つけることができる。ただし、日本の感覚で一人で過ごしても大丈夫だと思ってこっちへ来ると、恐らく誰しもが同じ思いを経験することだろうと思う。
気温がちょうど良くて暮らしやすい
南半球は冬真っ只中だが、早朝を除いてそこまで寒いとは感じない。もちろんニュージーランドもそれなりに南北に長い国であるので、比較的暖かい土地とそうでない土地がある。特に、自分が今住んでいるホークスベイは日照時間が多くて有名な土地なので、運が良かっただけとも言える。
それでも、冬至を迎えたばかりというのに日中は長袖Tシャツにマウンテンジャケットだけで十分だし、朝方走りにいく時も別に半袖Tシャツで行けてしまう。夏も暑くて最高気温が30度ちょいと聞いているので、日本よりは格段に過ごしやすいように感じる。
但し、夏の紫外線はとんでもないらしい。これに関しては、夏になったらなったで不満を垂れ流しているかもわからないが、現時点ではニュージーランドの気候がとても快適で充実した日々を過ごせている。
お金のかからない娯楽が多い
これもある意味、郷に入れば郷に従えという趣旨の話である。ニュージーランドに来る前は歌舞伎町に住んでいたので、毎晩飲み歩いて貯金なんて一切できていなかった。ATMで現金を下ろすたびにメンタルが強くなっていた気さえする。
一方で、ニュージーランドにはそういった夜の娯楽は大都市を除いて殆ど存在しない。その分、豊かな自然に囲まれているので、ドライブをしているだけでも相当多幸感に包まれる。散歩をしているだけでも楽しいし、少し行けばハイキングに行ける山や丘が沢山ある。
ある意味、人件費の高いカフェもお金のかからない娯楽の一つのような気が最近はしてきている。現地の人は朝からカフェで友人や家族とおしゃべりに興じているが、何時間いても一杯なら所詮600円程度なので、お金がかからないと言えばかからない。人も多くなく、日本のようなカフェ難民も見当たらないので、満足度も日本より高い。
朝がとにかく早い
これは人によると思うが、僕にとっては間違いなくデメリット。ニュージーランド人はとにかく朝が早すぎる。
カフェの営業時間は基本的にどこも朝の6時頃から昼の14時頃までである。歌舞伎町時代は、休日の午前中に目覚めたことが殆どなかったので、その生活リズムのままだとニュージーランドではコーヒーを一杯も飲むことができない。
とは言え人体は不思議なもので、今では遅くとも朝8時には目が覚めるようになった。しかし、それでもまだ早すぎるように感じる。たまに野外で開催されているマーケットも、基本的には正午を過ぎたら店じまいである。ニュージーランドに来たら、否が応でも朝方人間になる必要がある。
充実度=行動量×知識&好奇心
これはバックパッカーとして50カ国以上を巡った経験からも言えることだが、やはり人生の充実度は行動量×知識&好奇心であると改めて感じた。
何もニュージーランドに限った話ではないし、尺度は人様々であるとも思う。但し、ニュージーランドに来てみて改めて強く感じた。自分にとってはやはり行動量と知識&好奇心の2軸が大切だと思う。
行動量は、言い換えるなら平面上に広がっていく要素で、知識と好奇心はそれを深堀していく要素である。だから、闇雲に50カ国以上を訪れたところで、目にするものや聞こえてくる音、言葉に対する知識を持たず、また興味さえ抱けなければ、大した経験はしていないし充実しているとも言えない。
自分は大学生の頃に東欧の小さな国々を10カ国ほど周遊したが、それぞれの国の違いなんてはっきり言って分かっていなかったし、今も分かろうとはしていない。それでも、訪問国数としては立派なプラス10だし、国旗にして並べてみたらすごいことを成し遂げた気さえしてくる。
一方で、台湾にはこれまで何度も訪れているが、中国語が話せるので言葉が通じるし、現地の歴史や文化に対する知識もそれなりにあるため、どんな些細なことでも深いところまで楽しむことができる。言葉も歴史も知らない国に行くよりも、知識と好奇心をフルで活かせる環境の方が心に響く体験をすることができるというのは、これまでの経験からしても間違いないと言える。
ニュージーランドに来るというのは、それなりに勇気のいることだし、行動としては人生に変化をもたらす奥行きを与えるのに十分だ。一方で、現地の言葉や風習に既に通じているか、もしくは興味を持てないと、結局は広がりだけで収拾のつかない、空虚でなんだかよくわからない時間をひたすら過ごすことになるであろう。
自分は正直言って、たまたまニュージーランドの求人があって転職できたから今ここにいるだけで、それまではニュージーランドに来るという選択肢は頭の中に一切なかった。それでも過去の経験から、知識と好奇心を駆使して現地に溶け込み、行動量を増やしていけば、どんな環境でも最高の環境になることはわかっているため、今後もめげずに英語の勉強等頑張らなくちゃなと思う。Kiwi Englishも身につけて、Flat White片手にAll Blacksの試合でも見たいと思う。
足元は、もちろんJandalでお願いします。