周りから自分を考え、関係性を構築するセンスが大事
事業戦略大学(教員1名・生徒無限大)顧客経験価値のための商品企画開発の実践コース第47回
顧客経験価値は自社の商品だけて創り出しているのではありません。商品を利用する顧客本人とその周辺、そして自社の商品と協力、共生しあう他社の商品、情報など、社会のプレイヤーがあって生み出せているのです。その中で自社と商品がどのような位置づけで、どのような機能を発揮するのかを考えなければなりません。それがエコシステム・ビジネスモデル戦略の本質です。ビジネスモデル・エコシステムを描かない、また描いたとしてもそれが表層的であるという会社、組織に共通するのは、供給者理論、自社中心主義です。それは非現実的であり、同時にそれは「無理」をしていることにもなります。もっと社会、世の中のプレイヤーとその流れの力を借りたビジネスを考えるべきです。
事業構想におけるエコシステム・ビジネスモデル戦略とは、産業生態系であるエコシステムがどのような方向に進むのかを見定めるこです。そこで自社はどのような働きをして、社会やエコシステムに貢献していくのか、それは顧客経験価値であったり、広く言えば社会全体の経験価値への貢献です。さらにその貢献は具体的に、どのような協業、提携関係から成り立つのかをデザインするのがビジネスモデルです。エコシステムには必ずしも契約関係はありませんが、ビジネスモデルは何らかの契約関係やそれに相当する安定的な関係があります。
エコシステムもビジネスモデルも、ビジネスを単に自社から顧客への一方向で商品を供給すること考えるのではなく、「顧客経験価値を提供する構造やシステム」として考えます。「構造やシステム」が差別化にもなり、かつ自社の効率的な成長にもつながります。商品はその構造やシステムの一部です。
ビジネスモデル戦略は、以下のようなことを骨子に設計します。
①顧客経験価値
独自の顧客経験価値はどのようなものか?顧客経験価値の定義。顧客経験価値はベネフィットをコストで割ったもの。ベネフィットとは顧客経験価値ベネフィットでコストとは顧客経験価値コストで心理的なものも含め明確な経済性がなければならない。
②プラットフォーム
顧客、パートナーなどが利用する共通インフラで、自社がデザインしイニシアティブをとって設計し運用するもの。情報システムのプラットフォームだけとは限らない。設計方式だったり、取引の信頼関係やブランドといったことも含まれる。ビジネスモデルに参加するプレイヤーそれぞれが各自用意するよりこのプラットフォームを利用した方が経済性が高いことが前提
③コア・コンピタンス
ビジネスモデルの原動力になる自社の中核能力。自社独自の技術、スキル、プロセス、経営資源などの組み合わせや連動したもので形成されていて、他社が容易に模倣できないもの。多くは主力製品を支えているものであり、それを新商品に転用し、さらに発展させていくようにする
④情報フィードバック
ビジネスモデルの中で、コアコンピタンスに情報がフィードバックされる仕組み。どのような情報が、どのタイミングでフィードバックされるのかを設計する。フィードバックされる必然性を、自社と各プレイヤーとの取引関係、技術提携、生産提携、ブランドライセンスなどから形づくる。最近ではインターネットやデーター解析を使ったプラットフォームで情報フィードバックを永続的なものにする方法が当たり前にになってきた。今後IoT、AIが普及するにつれますますIT活用の重要性は高まると予想される
⑤収入源
商品を販売してその代金を回収するだけの収入源だけでなく、技術、ブランドのライセンス、プラットフォーム使用料、コンサルティング診断フィー、メンテナンスフィー、サブスクリプションなどの収入獲得方法を考える。収入が獲得できると言うことは、顧客がその価値を認めるということであり、つまりそれは顧客の事業運営やその成長に欠かせないものであることを認めることである。
なぜビジネスモデルのデザインがうまくできないのか?
一般論ではありますが日本企業は、欧米、中国の企業と比べエコシステム・ビジネスモデル戦略が劣っていると思います。インターネットなどのITをうまく活用できないこと、モノや物理的なサービスにとらわれすぎることなどがその原因としてあげられますが、最大の理由は、視野の狭さと相手から自社を見ることが少ないからだと思います。顧客と自社の閉じた範囲でものごとを見るのと、顧客経験価値に関わるプレイヤーも入れて考えるのでは全くビジネスの景色が異なります。ビジネスモデルの構築には、それらプレイヤーと自社の関係またはプレイヤー同士の関係から、どのような情報、ノウハウのやりとり、ブランドや信頼の付与などがあり得るかを客観的、多面的に考えることが必要なのです。また自社にどのような経営資源、資産があるのか?それは相手にとってどのような価値があるのかも考えなければなりません。経営資源、資産を使って価値をつくる、カネを稼ぐという認識も持つべきだと思います。
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