【詩】雨粒
雨に降られている時に
その雨粒一つひとつに思いを馳せる人は
どれくらいいるのだろう
これと同じくらいの涙の粒が
世界中で流れているのを知っている人は
どれくらいいるのだろう
いくつもの水たまりの一つに
木の葉がそっと落ちてきて
ほんの一時広がった波紋は
この地球(ほし)のささやかな返事
万物が海を湛えていて
それは時に穏やかに佇み
時に激しく渦を成し
水面にて数多の表情を見せる
今はどこも少し濁っていて
輝きは失せつつあるようだ
悠久の歴史の中で
全ては混ざり巡っていく
傷つけ合ったこと奪い合ったこと
騙し合ったこと壊し合ったこと
隅々まで広がって
ここまで汚れてしまった
それをどこかへ逃がそうとしても
この手負いの世界では
充分に流しきれなくて
代わりに私たちが涙を流している
雨が止んだ後虹ができるなら
この涙が止まった後にも
瞳は虹色になるのだろうか
そんなことを考えながら
雨粒が落ちる音を聞いていた
泣いているのをごまかすために
このままずぶ濡れになりながら
あともう少しだけ
灰色の空を眺めていよう