半分のゆくえ

一般的にどんな商品の販売店も、仕入れ価格よりも高い値段で売ることで、その差額を利益にしてます。簡単な算数のもんだいですね。

しかし前の記事で説明したとおり、CDは販売価格が作り手によって決められています。となると、どこで利益を生むんだろう。あれ?

って思いません?思いますよね?

(入社当時、私はここで混乱しました)

はい、そんなわけでここで掛け率という数式がでてきます。

売上があがったときの利益の分け方を、あらかじめ決めてるんです。その割合を掛け率といいます。

アーティスト本人にはだいたい5割前後が支払われます。「半分も持ってくなんて!」ってたまに言われるんですが(笑)
ではその半分がどこへいくか、例をあげてみましょうか。

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計算をわかりやすくするため、価格を1000円としましょう。

流通業者から販売店に対する掛け率が70%とする。(つまり、流通業者:販売店の間では7:3で取り分を分けます。)
1枚売れたとき、販売店の利益は
1000円×30%=300円

流通業者の手元には700円が入ります。
ここからアーティストへの利益500円を支払うので、流通業者の取り分は
700円-500円=200円。

まとめると…
アーティスト:500円
流通業者:200円
販売店:300円

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こういう仕組みになっています。
ちなみに掛け率は取り引きする同士で話し合って決めるものなので、一律に上記の割合ではありません。

流通業者と販売店の間に卸売業者が入っているケースもあり、その場合は販売店の取り分はもっと少なくなっていると思います。逆にちいさな販売店だとアーティストが直接取り引きすることもあって、それだと関わる人数が少ないため、アーティストの取り分が増えますね。

アーティスト側からみると、手売りなら全部もらえるはずの売上が半分持ってかれてしまうのは、かなり気落ちすることだろうなと思います。でもちょっとだけ想像してみてほしいんです。「手放した半分の利益はどこへ行っているんだろう?」って。

私の勤め先の場合は倉庫を外部委託しているので、倉庫の管理料を売上のなかから支払います。販売店さんだったら、家賃を売上のなかから払います。だいたい駅前のアクセスのよいところに出店していることが多いので、きっとお高いでしょうね。その他諸々の経費を払って、残ったお金で私たちみんなのお給料が支払われています。

裏を返せば、CDの半分の利益は何千人という人たちに分配されて、経済を回してるんです。音楽流通に携わる人ってたいてい音楽好きです。お給料はCDを買ったりライブやコンサートに行くためのお金になります。ぐるっと回ってちゃんと還元されますね。

風が吹けば桶屋が儲かるって言うし、ブラジルで蝶が羽ばたくと地球のどこかで台風が生まれるって聞いたこともある。そんなふうに、音楽も良い影響を広める力がきっとあると思うんです。

まあでも基本的にはCD買うならアーティストが推奨する方法で買うのがいいと思います。ライブ会場とか、あるいは懇意にしてる店舗で、とか。

でも推奨されてるところで買えないこともありますよね。ライブ行きたいけど仕事で行けないとか、いつも行ってるCDショップで買いたいとか。そういうときに「わるいなあ」と思いながら買う人がいるとしたら「わるいなんてことは、ないんじゃないかな。」と思います。だってちゃんとぐるっと回ってくるから。

少なくとも、音楽を聴きたいという気持ちが買った店舗で優劣がついたりはしないから。そこは安心してほしいな。

#CD
#ディストリビューター

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