暮らしながら、家を開く。
先日、友人のきさらさんにアトリエの話をしたとき「とうとう、住み開きだね!」と言われた。
住み開きとは、「住み」家を「開く」、つまり住宅の一部を開放するという意味の造語です。 住み開きには、趣味の教室を開いたり、地域交流の場として活用するケースなど、さまざまなタイプがあります。
彼女自身も北千住にある築90年の家をセルフリノベーションし住みながら家を開き、現在は日用品と喫茶のお店を営んでいる。(近くのシェアハウスで暮らしている。)
『住み開き』という慣れない言葉の意味を探りながらも、なんだか風が通り抜けていくような心地よい言葉だなと思った。
東京から由比ヶ浜へ引っ越して、おおよそ一年。
現在フォトグラファーとして自宅の一部屋をアトリエとし、スタジオとして写真を撮影したりイベントを行ったりしながら暮らしている。
国立の谷保にある 書誌 海と夕焼の店主の方に定期的に一日本屋を開いていただいたり、モルタル作家の菅原正光さんに8mmFilmWorkShopを開催してもらい海での撮影会や上映会をしたり。
他にも撮影で来ていただいたときに立ち寄っていただいたり、プライベートでも「美味しいご飯作ったから食べない?」と友人たちが部屋を訪れてくれる。
昔から仲の良い人から、初めましての方々まで。気がついたら50人ちかくの人々が看板も何もまだない私の部屋に訪れていた。
しかしアトリエなんてかっこよく言っているけれども、自然光の入るただの6畳の部屋である。ミントグリーンの壁が可愛らしい小さなアパートの一室なのだ。
初めは東京から鎌倉へ引っ越すことにとても抵抗があった。引っ越してきた初日には「他所者には厳しい土地ですから、頑張ってくださいね。」と言われ、ひどく落ち込んだ。コロナ禍の2020年6月ということもあり自粛ムードが続く中、離れた友人とももう会えないのではないか、新しい町で友達もできないどころか石を投げられるのではないかと引っ越したばかりのころは悲しい気持ちで過ごしていた。
それでもこうやって、いろんな人が時間を作って会いに来てくれる。困った時は周りに住んでいる人が助けてくれる。一緒に過ごすことを心の底から楽しんでくれる人たちならば、いつでも会いに来て欲しいと思っていて。
お茶や料理をたくさん並べて人を持て成すのが好きなのは祖母の遺伝子で、みんなで食卓を囲みながら美味しくお酒を飲むのが大好きなのは祖父の遺伝子。
「またきてね」って言いながらお見送りする瞬間が、少し寂しいけど大好きだ。
家を開くことで、心のわだかまりが解けた。たくさんの人が訪れてくれることで、一人で過ごす時間だけではなく賑やかな時間も楽しめるようになったことがとても嬉しい。
暮らすことで、人と出会える場所を作る。まだまだ探り探りだけれども、いろんな考え方や得意なことがある人たちを繋ぐ、あるいは化学反応が起こるようなそんな場所になればいいなと思う。
これからも風通しの良いアトリエで、楽しみながら毎日穏やかに暮らしていきたい。
●KiKi北千住のきさらちさとさんのお店のこと
●書肆 海と夕焼の柳沼さんの本屋のこと