木に触れる、小さな町のちえの森
皆様にとって「図書館」とはどういう場所でしょうか? 本を借りに行く場所、静かに調べ物をする場所…など、読書にかかわるイメージがほとんどではないかと思います。
しかし智頭町にある図書館では「本だけではない楽しみ方」ができるのです。 今回はそんな『ちえの森 ちづ図書館』でできる過ごし方についてのご紹介です。
開放的な高い天井に、ぬくもりのある木製の本棚や机、そして奥には畳。 館内に入ってみると、自身にとっての図書館のイメージとは全く異なった景色が広がっていました。 見慣れない図書館に、思わずワクワクします。
「2020年の11月末に新たに開館した図書館で、地域の方々の想いがたくさん詰まった場所なんです」
そう教えてくださったのは、職員である前田さんと西尾さん。 急な取材であったにも関わらず、快く館内を案内してくださりました。
図書館といえば本を読むというイメージが強いですが、こちらの図書館では思い思いの過ごし方ができるようなつくりになっています。畳に腰掛けて読書をすることもできるし、外の景色を眺めながら子供たちが絵を描くこともできる。そしてパソコンを持ち込んで利用できる書斎もあれば、学生さんたちが集中して勉強しやすいように仕切りのあるスペースもある…。
このように、いろんな人が快適に過ごせる図書館というのは、地域の方とのワークショップを重ねて生まれたアイデアだそうです。ワークショップに参加していたメンバーは、中学生もいれば最高齢は90代。老若男女のアイデアが詰まっています。
また、貸出返却カウンターの奥にある暖簾は、同じ智頭町にある「藍染工房ちずぶるー」さんご指導のもと智頭農林高校の生徒さんたちが半年かけて製作したもの。開館のお祝いに寄贈されたもので、智頭の山々をイメージした模様だそうです。他にも杉のパズル・衝立など、生徒さんが作られたさまざまな作品が図書館内で活用されていました。
地域との関わりはこれだけでなく、「住民の方々の得意なこと」を活かした地域連携講座も開講されています。お花を生けるのが得意な方がいたら、実際に生花の講師になってもらうといったように、地域の方たちが交流したり、活躍したりできる場所となっているのです。毎月の清掃ボランティアではいつも10人ほどが集まるらしく、この図書館が智頭の人々と共に歩んでいる様子が伺えました。
館内を歩きながら大きく息を吸うと、まるで自然の中にいるような木の香りに包まれます。こちらの図書館では天井から椅子や机まで、たくさんの智頭杉が使われているのです。
どうしてこれほど多くの智頭杉が使われているのか、それには理由がありました。
「本を読むだけじゃなくて、木との触れ合いにもなる図書館にしたかったんです。だから、芯材は別の素材だったとしても、触れるところにはなるべく智頭杉を使っています」
と、前田さんは教えてくださりました。
地元の杉と触れ合いながら、地域の人々が集まって活動するこの図書館は、まるで智頭町の新たなシンボルのよう。木の香りに包まれながらのんびりしたり、本との出会いを楽しんだり、地域の方と交流したり…なんて素敵な場所なのだろうと思わずにはいられません。『ちえの森 ちづ図書館』は町民の声をたくさん取り入れた、地元愛にあふれる図書館なのでした。
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