[読書記録]「木曜日にはココアを」(青山美智子) / まあるくなっている
カフェっていいですよね。私にもチェーンのお店ではない、一週間のうち一回、三時間くらいいられるお決まりのカフェがあったらなぁ、と思います。
このお話のはじめに出てくる「マーブルカフェ」は、少しだけ日常から離れたところにあるみたいだな、というのが私の印象です。
日常のちょっとしたあたたかい物語のリレーのような「木曜日にはココアを」。
一人一人にはそれぞれ物語があって、次から次へと紡がれて行きます。新しい物語が始まるたびにその主人公を「これはあのお話のあの人なのかな」とわくわく予想しました。予想したその主人公は他の物語にも出てくる人物なので、その人物が主体になったお話は、他の物語では分からなかったその人物の新しい一面や、深い思いまで伝わってくるようで、人はそれぞれの事情で生きているし、背景があるものだな、と深く頷きます。
ところで、青山美智子さんの作るお話には、ところどころに魔法のような言葉があるな、と思います。
読み進める中で、何かを思い出すみたいな、楽しい気持ちや優しい気持ちを受け取ることができるのです。私の心もふわっとする感じがしました。
このお話「聖者の直進」で、喧嘩別れした親友と再会して、結婚の報告をする「理沙」さん。主人公のやっちゃんは、理沙さんとはタイプが違うのですが、どちらもとても素敵だな、と思いました。
それから、
「誰かは誰かの大切な存在で、その起点となったり相手の気持ちを故意ではなく動かすことがある。」「人によって放たれる光がたくさんある。」本当にそうだな、と思いました。だから、傲慢にならずお互いの関係を大切にできる存在というのは、やっぱりとても良いものだな、と思いました。
私は特に、この本の中の「カウントダウン」、「ラルフさんの一番良き日」、「帰ってきた魔女」の三つのお話が、何度でも読みたいくらいとても好きです。お話自体に不思議な力があるような、ちょっと深呼吸して小さくジャンプできるような、あたたかいものが心に灯る感じがします。
お話はぐるっと首飾りのように円を描きます。私の人生も誰かにつながって、そのつながった人からどんどんつながって、まあるくなっているのかな、と大きかったり小さかったりする、あたたかい丸を想像しました。
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