[読書記録]「くらもち花伝」/ ずっとときめいていられる
NHKの朝の連続テレビ小説は、もう良くても悪くても、何年もの間毎朝のルーティンに組み込まれていて観続けているのですが、「半分青い」に「くらもちふさこ先生」が男の人として(しかも豊川悦司さん!)登場した時は度肝を抜かれました。
くらもちふさこさんは本当に大好きな漫画家です。
「もうおうちへ帰りましょう」(穂村弘さん)の本の最後に、心を落ち着かせるための漫画がたくさん出てきたのですが、読んでいてその名前が出てきただけで、身体が捩れるほどぎゅーっとなりました。
大好きな川上弘美さんがお昼ごはんの時に「心が揺れないための漫画」として「キャプテン」(「ちばあきお」)を読んでいることを知ったり、穂村さんは「岩館真理子」を年に一度は読み返す、と書いてあって、私の心はがたごと揺れました。
私は「キャプテン」の墨谷二中の谷口くんが大好きなのです。
岩館真理子さんは高校生の頃いくえみ綾さんとともに隅々まで読みました。
特に「まるでシャボン」なんて殆ど暗記するほどに繰り返し読みました。
穂村弘さんの本には出てきませんでしたが、今でも繰り返し読むのがくらもちふさこさんの漫画です。
くらもちふさこさんの漫画は、大切な気持ちを痛いほど鮮明に思い出します。
「くらもち花伝」にはくらもちふさこさんの漫画の「あのシーン!」の作り方や、どんな風に漫画の設定が出来ていったか、が詳細に書かれていて、「これを読んでしまっていいのかな」と思うほどドキドキします。
くらもちふさこさんが感じる「ときめくしぐさ」や、「心に止まった音」、「絶対に入れたいシーン」を書き記しておいて、それをあちこちに盛り込んでいく。
それがどの作品のどこどこに使われている、なんて書いてあるのです。おお…。
作品を作る時の集中力や、物語に没入するくらもちふさこさんの苦労や喜びもあちらこちらに書かれています。
努力と才能の権化。涙が出るような気持ちになります。
くらもちファンからすれば、「何を今更」なことを敢えて言うと、本当にくらもち作品の伏線の張り方と回収の仕方は天才的だし、物語の一人一人に個性と魂が宿っていて(「登場人物を際立たせるためにもその友達である脇役がいい人でないといけない、そのために限られたコマでそれを表現する(要約)」、それが随所にあるのです)、言葉にしていない表情や敢えて描かない背景などの表現にまで言及されています。
最初から最後までとても面白かったので、勿体無いと思いながらも集中してあっという間に読んでしまいました。
「作家さんの長い間の苦労や喜びをこんな形で分けてもらうことができるなんて…、本当に良いのだろうか…」、という感じですが、くらもちふさこさんの感情の「ひだ」の細かさや、それがあちらにもこちらにも散らばっている宝物のようなシーンの数々の誕生が少しでも覗けたようで、目を閉じて合掌してしまう有難さです。
くらもちふさこさんを未読の乙女(の心の持ち主)に、読んで頂きたいわりと近年描かれた三つの漫画をおすすめしたいと思います。
何も言わずに読んでほしい…。
「花に染む」
私がそれこそ一年に一度くらいの割合で読み返す作品です。花に染むの三巻と四巻の間にあったことなど、まったく知らずに読んでいました。雑誌で現役で読んでいたらものすごくヤキモキしたと思います。
「月のパルス」
ぎゅーっとなります。ぎゅーっとなりたくなればすぐに読み返す作品です。少しだけ実話なのだそうです。
「海の天辺」
こちらもぎゅーっとなる作品です。あの頃のいろいろな気持ちを思い出します。
それからもう一つ。
映画化されて、今、尚、更にときめきを放つ女優の夏帆さんがヒロインを演じられたのは「天然コケッコー」。
このnoteを読んでくださって、くらもち作品を未読の方に大切ななにかが届くといいな、と心から願っています。
「まるでシャボン」
繰り返し読んでいました。もう手元にないのでいつかまた手元に置いて読みたいです。きっとまた違う気持ちで読めるはず。
「キャプテン」
兄の漫画を読んでいました。墨谷二中の谷口くんがひたむきでとても好きです。