継承する漫画、チ。【序盤の名場面】
「一体何を捧げれば、この世の全てを知れる?」
衝撃的なセリフで始まる漫画、「チ。」−地球の運動について−。
その疑問はタイトルが正解を導き出してくれている。そう、この世のすべてを知るには「チ」が必要なのだ。この物語は、「チ」を捧げ、継承し、死んでいった名も無き者たちの記録。地球の運動についての記録だ。
あらすじ
少し長いが、あらすじを紹介したい。↓
注目したいのは、最後の一文。
「世界を敵に回しても貫きたい美学はあるか?」
興味を引く強烈な文だ。私はこのあらすじで本を手にし、全巻一気読みしてしまった。
物語の軸となるのは、地動説。少年ラファウは立証のため、周囲の期待を裏切り、自らの命を捧げ、次の人物へ「知」を継承する。
こうして様々な人が「血」を捧げ、命を賭けてバトンを渡していく。真理のために生きる人々を、十五世紀のヨーロッパを舞台に描かれるのだ。
チ。の魅力的な構成
数多くの人が時代を超えて協力し、大きな問題に立ち向かう。という構図はどの学問にも存在する。
その構図を用いて、スピーディーに物語を展開する。そこが他の作品にはない魅力だ。
(地動説に関する記録が詰まった箱。キーとなるアイテムの一つだ)
これらを踏まえて、序盤の「エモい」部分をいくつか挙げていく。読んでみたい!読み返したい!と思ってくれたら幸いだ。
※三巻までのネタバレを含みます。ご注意下さい。
抑えられない知的好奇心。三人の探求者
主に紹介したいのは彼らの知的好奇心を表すシーンだ。地動説に関係する計算、資料を手にした時の目は圧巻である。罪を犯す感覚など忘れ、目の前の知識を夢中で食らう獣と化す。そんな目だ。
【ラファウの場合】
(最初は神学を専攻するだったラファウ。誰もが羨むエリートだ)
(異端者として捕らえられていたフベルトに出会い、地動説を知る。そして…)
主人公の一人、ラファウは合理的な人生を望む自分に対し、好奇心のままに動く自分をぶつける。その結果、彼は異端とされている地動説を肯定する運命へと足を踏み入れる。
このコマは、燃やそうとした天体記録を、全力で踏みつけて消火する場面だ。わかりやすい構図と、迫力あるセリフも見どころの一つになっている。
【オクジーの場合】
(依頼主の決闘の代わりにこなす「代闘士」のオクジー。)
(オクジーは天国を信じており、それが唯一の救いだと思っている。)
(共に代闘士をするグラス。彼がきっかけでオクジーは星に目を向けるようになる)
(異端審問の警備を担当していたはずの二人。あることがきっかけとなり、この男から手がかりを継承する)
異端の男の話を聞くうちに、地球の美しさについて考える二人。彼らにとって、信じるべきは天国だ。戸惑いながらも真理とは何かを考え、はじめて仕事を放棄する。彼らに託されたのはかつてラファウが所持していたペンダントだ。
地動説は天文学的な側面での「正解」ではある。しかし、同時に探究することが地球の美しさに気づくことにつながる。という視点はニ巻の見どころだ。
最後に紹介するのは、三巻で登場する少女ヨレンタ。彼女が箱の中の問題を解くために、立ち入り禁止の保管庫にて、惑星の記録を漁るシーンだ。
(一度我にかえり、問題を諦めようとするものの…)
(どうしても知的好奇心を抑えられないヨレンタは、問題を解きにかかる)
個人的に一番エモいシーンだ。表情の見せ方も良いが、セリフだ。やはりセリフが刺さる。
「でも悪いとかどうでもいいから、アレの答えが気になる。」
一語一句が感情的で、衝動を隠しきれないようすが、生々しく描かれている。冷静だが、滲み出て止まらない欲求は読者の心を強く揺さぶるのだ。
ここまで、かなり大まかではあるが、本書のエモいシーンをいくつか紹介してきた。現実的な題材に、私たちの心に強く訴えかけるセリフの数々…。アクションや恋愛こそないものの、言葉で強く揺さぶってくる。
そして教えてくれる。名もなき者が数多くの歴史を作ってきたことを、それを継承する人々がいたことを。
私はこの漫画を継承したい、誰かに伝えたい。名もなき私でも出来ることを少しずつ実行していきたい。そう思えた。
・最後まで読んでいただきありがとうございます。
(現在、ebookjapanさんでは一、ニ巻が無料で読めます!ぜひご覧ください)
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