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私信 カタルシス

あの頃から
あなたは
だれかを害しようと意図するまでもなく
「あなた」であることで
あなたの根幹を批判する他者を
溢れることばで罵詈しつくし
独り 悦に浸っていた
 
齢を重ね
うすら寒い風の下
ノースリーブのワンピース一枚で
公道の中央に仁王立ちしながらも、誰にも見留られず
平和憲法を否定し
「核を持て」「軍隊を持て」と、がなりながらも
誰の意識にも置かれなかった
 
そしてあなたは
また一人のあなたを創り出し
「仮想敵」を起ち上げ
「仮想敵」を持ち上げ
おもねるようにことばを列ね
注意深く、あなたの核武装論に蓋をして
「非核」を切々と訴える
誇り高き日本のために
日本が尊敬を得るために、と
 
あなたは
方便を駆使し
甘言を呈し
他者にかまわれることで
溜飲を下げる
それでも
収まらないあなたは
巧言の下に透ける根幹の奥で
ジタバタと地団駄を踏みながら
「我を讃えよ」と繰り返す
 
あなたにとって
「被爆国日本」は、
やられたらやりかえす
あなたを発露する端緒に過ぎず
あなたが費やす時間は
過剰な自意識を満たすために
用意周到に熟(こな)された時と知る
 
「日本」を「あなた」に置き換えた時
あなたの根幹が顕わになる

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