呪術廻戦最終巻を読んで思うこと
その先に待っていた景色、辿り着いたのは客観的に見たら答えになっていない答えなのだけど、なんだかそれでいいんじゃねって思えた。ジャンプの王道の皮をかぶりながら、王道になれない(描けない)作者の苦悩と葛藤が刻まれた自分自身との対話。そういう意味での宿儺。
思いだけグルグルと廻るけど、それを上手に表現する術をまだ知らないような。戦闘シーンの解説は相変わらず最後までよくわからんかったけど、なんだか葛藤を抱えながら描いてたのがよくわかるあとがき含めて自分の中に蠢く暗い感情から未来の話、現実から期待へとバトンを渡すような。
綺麗じゃないけど、だから人間らしさも感じられて愛でられるというか。描きながら自分のモヤモヤと対峙するようなセルフセラピーみたいで芥見版エヴァって感じがした。ということで、「おめでとう!」と言いたい。戦闘シーンを描きながら、もっと別のところで闘っていたんだなって。
正直、アニメの1期を見ているときは(呪霊のデザインとか以上に)気持ち悪くてハマらなかったけど、渋谷事変の面白さに魅せられてそれ以降に漫画購入した一読者ですが。最後に哀れなストーカー男の案件が出てくるあたりも、そういう本作の根幹をなす「(人間らしい)暗さ」を表していた。
難しい用語なり説明なり文字量多く飛び交う割には粗や強引な力技が目立つと言うか(反省会回まである)、例えば始めから綿密に作り込まれていた『進撃の巨人』とは対照的なパワープレイだったけど、それもまた本作がそうした表に見える戦い以上に作者の内面での戦いの表象みたいで、嫌いになれない。
総じて大傑作とは言えないけど、しっかりと作り手のクセと個性があって、個人的には「共鳴り」するような「不義遊戯(ブギウギ)」するような共演を覚えた。対人間と向き合った時に、完璧なんてつまらないから。
あれだけラストバトル長かったにも関わらず、本当の戦いは別のところであったという、その不器用さを愛そう。