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『ナボコフ全短篇』を読む日記2022.03.09-12(48/68篇)
「スカウト」「人生の一断面」(ともに1935年)を読む。
「スカウト」は、姉を亡くし生きる意味を失っていた老人が、知り合いの教授の葬式から帰るところを描いた作品。
と思いきや、語り手の「私」がベンチに座り込んでいた老人を見てそのような設定を当てはめていたのだった、という趣向になっている。
職も家族も生活も自由に動くからだも、何もかも失い、あとはもう死ぬだけという老人の悲哀と安堵が入り混じった描写が、突如反転してしまう構造は、いまや珍しくはなさそうだけれど唸らせるものがある。やはりナボコフの細部の描写がうまいからだろう。
「人生の一断面」は、ある男に片思いをしていた女性が語り手で、その男が妻に浮気されて女性の弟に会いに来た場面からはじまる。これも片思いをしていた女性の内部の心理であったり、冷めてしまった恋心の自覚であったりが細かな描写がうまいなと思わせる。
ナボコフは、言語遊戯の側面に目がいきがちだけれど、こうした細部の描写であったり説明であったり、情景を描くのがうまい。言い尽くされていることだろうけど。
四日ほど日記をさぼってしまった。故なきことではなくて、ことさらに寒い今期の冬でできた結露で、本棚にカビが生えてしまったので対策をしていた。
妻に教えてもらったところによると、二重窓が結露対策によいとのことだったので、重い腰を上げて作ってみた。
コーナンで三十分以上悩んでレールや枠、窓の素材などを選んで、なんとか一時間ほどで作った。
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加えてぷちぷちが断熱によいとのことだったので、翌日に作った。
もう暖かくなってきてしまい時すでに遅しの感があるけども、朝結露ができることはなくなった。加えてプラダン製の窓とぷちぷちとで水分が棚に及ぶことはないはず。
本を少しばかりもつというだけで、床の心配やカビの心配をしなくてはならないなんて納得がいかないが(それでなくともソフト面での悩みや苦悩があるというのに)、どうしようもないからしかたがない。
達成感はあるものの疲れてしまったので、しばらく本が読めなかった。しかし、48篇まできたので、順調に進めばあと10日で読み終わるだろう。