いま、ここ。
私はその1節を読んだとき、膝から崩れ落ちるような大きな衝撃を受けた。
自分が劇場の舞台に立っている姿を想像してください。このとき、会場全体に蛍光灯がついていれば、客席のいちばん奥まで見渡せるでしょう。しかし、自分に強烈なスポットライトが当たっていれば、最前列さえ見えなくなるはずです。
これは、アドラー心理学において、「いま、ここ」を生きなさい、そうすれば過去も未来もみる必要はなくなるから。ということを実に分かりやすく表した1節である。
どうして過去も未来もみず今に集中することをアドラーは提唱したのか、それは本書『嫌われる勇気
自己啓発の源流「アドラー」の教え:岸見一郎、古賀史健著』を読んでみてほしい。
かつて演劇を愛し、舞台に立っていた自分には分かりすぎる1節だった。
そして、たしかに自分に強烈なスポットライトが当たっていれば客席の最前列さえ見えない。けれど、スポットライトが当たっていなかったとしても、そのときその役者は、わたしは、舞台のうえでその役の今を、たしかに生きていたことを思い出した。
ということは、私は自分の人生を舞台として、自分の役を生きたら良いのではないか?そしてそこにスポットライトが当たっていたとしたら、私はもっともっと「いま、ここ」を生きることができるのではないか。
もしかしたら、アドラーが言いたかったこととは少しズレて解釈を広げてしまったのかもしれない。
けれど、この『嫌われる勇気』が気づきを与えてくれたのは確かな事実である。
いま、ここを生きよう。わたしの舞台は、人生は、わたしという役者が何を演じるかで変わる。スポットライトを浴び、堂々と、自分の役を全うしよう。
「わたし」という作品は、いま、ここで始まるのだ。