ミック・ジャクソン『10の奇妙な話』(読書記録9)
こんにちは。とんとです。
今回の記事は、ブッカー賞最終候補作者の奇妙な短編集の読み跡(よみあとんと)です。
よろしくお願いします。
とりあげる本は、
ミック・ジャクソン『10の奇妙な話』(東京創元社 2016)です。
<短めな紹介文>
ブッカー賞最終候補作者(『穴掘り公爵』での最終候補)が描いた、10の奇妙な物語が収録された短編小説集です。
各作品は、不穏であったり、奇妙でファンタジックであったり、狂気を感じたりするような作品群で、短めであっさりと終わることが多いなか、後を引く不思議さがあります。
カバーイラストは、デイヴィッド・ロバーツという子ども向け作品のイラストレーターです。各作品の始めに彼の挿絵もあります。
<読後の感想>
奇妙な話というタイトルと、手に取りやすかった文庫版であること、さらにカバーイラストにつられて面白そうだなと思い、読んでみました。ちょっと暗めの話が多いなとは感じましたが、皮肉が利いた作品も多く、読後はとても面白いなと思いました。
読み進めるにつれてどんどん不穏になってくる「ピアース姉妹」、奇妙でファンタジックな「蝶の修理屋」、正気と狂気の境界線をまたぐ「隠者求む」、宇宙人を襲来させ子どもの一致団結を示した「宇宙人にさらわれた」など、奇妙な話がたくさんありました。
なかでも、私は、「蝶の修理屋」が一番のお気に入りです。この作品はあまり詳しくはネタバレになるので書かないでおきますが、例えば蝶を修理するというファンタジックな設定と、その設定を固める修理アイテムの面白さが際立っていて、ディティールがよく出来ていると思いました。
<振り返り>
奇妙な話が昔から好きで、(荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』も大好きだったりする私なのですが、)本作は奇妙ではあるものの、なぜか落ち着く穏やかさもあったりする不思議な読中感覚でした。
多分、日常の出来事と同じで、変だったり奇妙だったりは割合現実にも起こっているからなんじゃないかと思います。
起承転結でいえば、どこも面白いのですが、結末が特にいいなと思いました。あっさりしている中、後を引くよさがあります。
カバーイラストの作者について、デイヴィッド・ロバーツという子ども向け作品のイラストレーターで、私は最近行った「エドワード・ゴーリー展」の絵を彷彿とさせられました。といっても、デイヴィッド・ロバーツについて調べていくなかで全然違うんだなと気付いたりもしましたが…。
各作品の最初にデイヴィッド・ロバーツの挿絵もあり、これが作品の印象を巧みに表現していて、また良いです。表紙イラストも、登場人物たちです。
著者のミック・ジャクソンは、1960年イギリス生まれで、アメリカのロックバンドで活躍(!)した後、作家デビュー。『穴掘り公爵』でブッカー賞最終候補です。すごい経歴ですよね。
色々と調べてみると、シンガーだったようで、「The Screaming Abdabs and an urban folk band, The Dinner Ladies」という記述も発見!このバンドはもしや…?興味深いヒトなのは確かですね~。
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今回は以上です。
それではまた。ご一読頂きありがとうございました!
とんと
<キーワード>
・ブッカー賞最終候補作者
・元ロックバンドシンガー
・後を引く不気味さ
・皮肉が利いている
・正気と狂気の境界線
・登場人物たちのイラスト
・『穴掘り公爵』
<キーパーソン>
・デイヴィッド・ロバーツ(1970-)
イギリスの子ども向けイラストレーター。
<参考までに…>
本作品中、「ピアース姉妹」と「蝶の修理屋」には、なんと動画オマージュ作品があります!
・ピアース姉妹の動画URL
(https://www.youtube.com/watch?v=Mqi5ol2TjKI)
・蝶の修理屋の動画URL
(https://vimeo.com/30807691)
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