ガストロノミーの世界と決別したフレンチ料理人

東京都大田区内で、「とんかつカンティーヌ ゆめみるこぶた」という飲食店を一人で運営しています。 ここでの投稿の目的は店のアピールではなく、日々自分が考えていることの整理とまとめです。 あとそこからなにか、議論や思考の小さなきっかけを、周りに提供できたらなとは思っています。

ガストロノミーの世界と決別したフレンチ料理人

東京都大田区内で、「とんかつカンティーヌ ゆめみるこぶた」という飲食店を一人で運営しています。 ここでの投稿の目的は店のアピールではなく、日々自分が考えていることの整理とまとめです。 あとそこからなにか、議論や思考の小さなきっかけを、周りに提供できたらなとは思っています。

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(自己紹介記事)ガストロノミーやグルメ情報の業界と決別した話

※この文章は2021年9月に書かれたものです。 僕は都内で飲食店を経営している。完全に独りで運営している小さな店だ。このサイトでアカウントを持って投稿しようと考えた理由上、店の名前を明らかにする必然性はないので、ここでは明らかにしていない。 (※注・2023年6月:2022年7月7日の投稿記事において、自分の店の名前を公開しました。) 僕自身の自己紹介もしていない。料理人としての経歴プロフィールも書かない。 今やどこでもかしこでも、誰でも彼でもが、「どこそこの〇ツ星レス

    • とんかつカンティーヌの謎解きイベント始まりました

      「リアル謎解きゲーム」というのを、ご存じでしょうか? 今年もまた、この季節がやってきました。 リアル謎解きゲームとは、謎かけを解くことで一つずつ物語を進めていく「謎解きゲーム」を、「リアルな現実世界の中でやってしまおう!」という、ファンタジー心あふれる知的ゲームです。 数年前から、クイズやパズルなどが好きなファンの間でブームになってきており、 この「身体と頭を使って、物理的に移動しながら遊ぶ」という特性を活かして、町おこしのためのイベントゲームとして開催する自治体や鉄道

      • 「カスハラ問題」について考える③ 「迷惑」とは何か?「カスハラ」は異常人物の特殊問題、「迷惑」は私たち全員が知らず知らずに関わっているのかもしれない問題。目を向けてみたい二つの背景

        (続き) 前回の投稿からだいぶ間が空きました。なかなか落ち着いて文章を書く余裕が作れず、気が付いたらけっこうな時間が経っています。 それにしても、この間に…驚くほど、「カスハラ」に関する言説を目にするようになりました。 私がこういう仕事をしているから、興味関心に関連する記事としてヤフーニュースやグーグルニュースで流れてきているというのもあるかと思ったのですが、実際にはそれ以上に、新聞や一般ニュースで目にすることが、本当に増えました。日経新聞を毎日読んでいますが、日経の中

        • 「カスハラ問題」について考える② 社会の構造的問題として本当に考えるべきなのは、ニュースになるレベルの「カスハラ」客ではなく、それ未満の「迷惑」客である、という考え方

          (続き) 前回の投稿「カスハラ問題を考える①」では、以下の論点を立ち上げました。 1)「カスハラ問題」の頻発とその悪影響のインパクトが、ここ最近で急激に、社会的に認知されるようになってきている 2)しかし「カスハラ」という言葉じたいが、現段階ではあいまいで、明らかに実害を伴う問題としての「カスハラ行為」「カスハラ人物」と、それ未満の「迷惑行為」「迷惑人物」との間にあるグラデーションまでをも含めて語られておらず、問題の全体像や構造の分析がなおざりにされたまま、真に問題解決

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        (自己紹介記事)ガストロノミーやグルメ情報の業界と決別した話

          「理念の国」フランスの、覚悟と底力を見た気がした

          けっこう感銘を受けたことなので、すごく複雑な問題なのですが、超・簡略化してざっくりとつぶやきます。 フランス下院の総選挙が現地時間の7日、行われました。そして、非常に非常に危うかった、場合によってはフランスのみならずヨーロッパ全体にまで影響を及ぼすことになるかもしれなかった、「極右勢力の台頭」という事態を、なんと大方の予想に反して、くい止めることに成功したのです。国民の民主的な力で。 フランス国内事情に関心を持っている方もそう多くはないと思われるので、ざっと説明しますと、

          「理念の国」フランスの、覚悟と底力を見た気がした

          この「極右化」「分断」「偽情報」にあふれた世界の中で…

          これほど世界中で「極右化」「国内の分断」「偽情報による足の引っ張り合い」が横行、過激化している趨勢の中で、 よくもこれほどまで、フェアに戦い、公正に結着し、その結果を潔く受け入れ、相手にレスペクトを示す、という、民主主義のお手本のような選挙が実施されたな、と… もちろん分断も偽情報も多少はあったのだとは思うけれど、他の主要国で問題になっているような、日本でもバンバンニュースになるレベルではなかったのだろうと思うと、 これが、紳士の国イギリスに流れる、精神なのか…?と感じ

          この「極右化」「分断」「偽情報」にあふれた世界の中で…

          「カスハラ問題」について考える① カスハラ問題は、接客・サービス業という「業界」、あるいは一部の非常識な「個人」、という局所的な問題ではなく、日本社会の構造の現われと言える問題なのではないか

          ここ最近(1~2カ月)で、「カスハラ」(カスタマーハラスメント)という言葉を聞いた、目にした、という方は、けっこういらっしゃるのではないでしょうか。 普通の社会面でのニュースだけでなく、ビジネスの世界、あるいは行政においても、この「カスハラ問題」に対してどう考えるべきか、どう対処すべきか、という言説が、急激に増えてきたように思います。 とはいえ、この問題は、小売・飲食・宿泊業などの接客・サービス系の「業界問題」であって、自分とは特に関係はない、と捉えられている方が、大半で

          「カスハラ問題」について考える① カスハラ問題は、接客・サービス業という「業界」、あるいは一部の非常識な「個人」、という局所的な問題ではなく、日本社会の構造の現われと言える問題なのではないか

          自分の哲学の前提にあった「驕り」

          ※これは当店HPの「店主ブログ」に投稿された記事の転載です。 どうーーしても、「画像」でアピールしたくない…「映え(ばえ)」で集客したくない… その頑な(かたくな)な私の「カンティーヌ哲学」は、ある種の驕り(おごり)でもありました。 まあ私の場合、いろいろなところに常に、驕りは見え隠れしているのですが。 昨年の7月3日に、InstagramとFacebookに投稿した「とんかつカンティーヌゆめみるこぶたは、なぜ料理写真を投稿しないのか」という「文章」を(SNSなのに)

          揚げたてのとんかつで作るカツサンド

          ※この投稿は、当店のSNSマガジン『こぶた通信』で配信したものの転載です。 当店オリジナルのカツサンドである、 「とんかつカンティーヌのピタパンカツサンド」 ですが、 デリカテッセン業態時代に販売を開始して以来、本当によく売上に貢献してくれました(笑)。 今に至るまでずっとこの商品の支持をいただけていること、本当にありがたい限りで、心より感謝を申し上げます。 ところで…… このカツサンドを、「おいしい!」と思っていただけているとしたら、とてもうれしいのですが、 こ

          季節デザート『春イチゴのミルフィーユ』

          ※この投稿は、当店のSNSマガジン『こぶた通信』で配信したものの転載です。 新テイクアウト商品群の、カスクルート連続紹介といこうかと思ったのですが、 実はこちら、すでに2週間も前から提供していたのに、写真がうまく撮れないまま、お知らせをしておりませんでした。 知る人ぞ知る、café Kobuta時代に予想外の(?)大きな人気を博した、 自家製の”カスタードクリームだけ”を主役としてめいっぱい味わう、” こぶたカスタード ”の後継デザート、 『春イチゴのミルフィーユ』

          季節デザート『春イチゴのミルフィーユ』

          黒トリュフ香るコロッケパン

          ※この投稿は、当店のSNSマガジン『こぶた通信』で配信されたものの転載です。 先週に引き続き、今週末も! 土日限定で販売します 「黒トリュフの香るポテトコロッケ」 さらに!先週はやりたかったのですが数が少なすぎて販売を見送った、 「黒トリュフの香るコロッケパン」! コッペパンにコロッケを挟んだコロッケパン、あれって炭水化物✕炭水化物という一見トンデモ組み合わせの割にはけっこうおいしいよなと、個人的には意外と好きなのですが、 当店のランチで使っているあのけっこう好評な

          カスクルート商品が拡充!

          ※この投稿は当店のSNSマガジン『こぶた通信 3月25日号』に掲載したものの転載です コロナ禍末期、デリカテッセン業態を終了してから現在の「とんかつカンティーヌ⁺」としてリニューアル再オープンするまでのわずか数カ月間だけ、期間限定で 「café Kobuta」 というカフェ業態の営業をしていました。(2022.6~2022.11) 実質的には「サンドイッチとスイーツ」の店として、ちょっとコーヒーだけというよりは、ランチのお食事や午後のおやつタイムでのご利用を多くいただ

          黒トリュフの香るポテトコロッケ

          ※この投稿は、当店のSNSマガジン「こぶた通信」3月12日号の、転載です。 春の行楽シーズンに入ってくるので、何かちょっと珍しくておいしそうなテイクアウト商品でも作れないかなあと思い… 気まぐれに試作してみたらとてもおいしかったので、今週の週末(土、日)に、さっそく販売してみます。 当店初の、ポテトコロッケ。 黒トリュフ風味です。 中には、炒め挽肉の代わりに、豚肉のリエット(デリカテッセン業態時代に販売していました)が、リエットほどにはペースト状になっていない状態で、

          こぶた通信「牡蠣の『旬』」

          この投稿は、当店のSNSマガジン「こぶた通信」3月12日号の、転載です。 例年この時期に牡蠣を提供している当店ですが、 召し上がったことのない方は、 「なぜ今の時期に、そんなに牡蠣を推すのか?」 と思われるかもしれません。 実は牡蠣は、5月くらいから始まる産卵期に備えて、1月〜2月くらいから、栄養を特に蓄えて身を肥やし始めるのです。そして3月から4月くらいにかけて、ぷっくりとした身のサイズも味の良さも、ピークを迎えます。 日本では12月くらいの真冬のシーズンが牡蠣の

          我々は、何を求めて、走り続けるのか

          あのとき我々は、 生きていられるだけでこんなに幸せということを、 心の底から再認識し、 感謝し、 誓いを胸にしたのではなかったか。  ……。 それから今に至るまで、 我々は、 いったいどれだけのものを求め続け、 欲しがり続けてきたのか? ……。 ガザの人々が、 ウクライナの人々が、 貧困の淵にあえぐ国に生きる人々が、 ただひとえに、望んでいるもの。 平穏に生きることができる幸せ。 ……。 我々は、何を求め、走り続けてきたのか? 走り続けているのか? 走り続けていくのか

          2024年、年初の思い 完結編~「とんかつカンティーヌ+」から、一周まわって、再び「とんかつカンティーヌ」へ…

          ※この投稿は、当店のHP「店主ブログ」で2月13日に投稿された記事の、転載です。 1月15日の投稿、2月1日の投稿と続いた、 2024年の「年初の思い」表明のブログの、第三編、最終話です。ついに。すでに2月も半ばですが。 どうーしても文章というのは、書くのにいちいち気合が必要というか、時間的にも体力的にも精神的にも、文章を書くモードとも言うべき条件をそろえられたときにだけしか書けないという自分の性質がありまして、どれほど「今後はもっとライトに書きます」と宣言しても、なか

          2024年、年初の思い 完結編~「とんかつカンティーヌ+」から、一周まわって、再び「とんかつカンティーヌ」へ…