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【読書感想】いのちの停車場

【あらすじ】


東京の救命救急センターで働いていた、六十二歳の医師・咲和子は、故郷の金沢に戻り「まほろば診療所」で訪問診療医になる。命を送る現場は戸惑う事ばかりだが、老老介護、四肢麻痺のIT社長、小児癌の少女......様々な涙や喜びを通して在宅医療を学んでいく。一方、家庭では、脳卒中後疼痛に苦しむ父親から積極的安楽死を強く望まれ......。



【感想】


南杏子さんの本は、2冊目です。
1冊目は「サイレント・ブレス 看取りのカルテ」を読みました。とてもいいお話だったので、2冊目を購入。

今回のお話も「在宅医療」をテーマにしてます。いのちの大切さを感じる一方で、在宅医療の厳しい現実を、改めて痛感しました。
家族が余命短くて、家で終末期を過ごすってなったら、自分はどんな気持ちでいられるだろう。毎日泣いてばかりだろうな。
だって、当たり前にいた家族が、もう少しでいなくなるって、考えただけでも怖いし、死に直面したくないですよね。
テーマは重いですが、「生きる」ことの大切さを実感できる一冊です。


【心に残った5選】

思って行けば実現する、ゆっくり行けば到着する

シンプルだけど、すごくいい言葉。
自分のやりたいことが分からない、どうなりたいのか分からない。そう悩む方にこそ、お伝えしたい言葉です。

ゆっくり行けば、いつかきっと「自分のこと」が分かる。
「こうかな?どうだろう?」そう考えながら、少しずつ少しずつ歩いていれば、きっとあなたの夢や思考は現実化する。

諦めないこと、続けることが大切です✨

愛娘に死が迫っているという現実を、すぐに受け入れられる親なんて、世の中にいるわけがないよ

自分の子供が、余命短いと分かった親の気持ち、絶望は計り知れないです。
「自分たちの何がいけなかったのか」そう自分のことを責める親も多いでしょう。子供の残酷な運命を受け入れられず、どうしていいか分からない。「代われるなら代わってあげたい。この子に一日でも長く生きていてほしい」そう思いますよね。

私は、自分の子供が今のところ健康で、すくすく育ってくれています。でも、それは「当たり前」なんかじゃない。「健康で、この世を生き抜く」ということ。それは、もう素晴らしいことなのです。

痛みという症状は他人からは分かりにくい。そのため、周囲の理解が十分でないというのも問題の一つだ。

ここで言う「痛み」とは、体の「痛み」のことを意味すると思います。
きっと、心の「痛み」にも該当しますよね。こころの「痛み」も体の「痛み」も他人には分からない。そう、本人しか分からないのです。
だから、他人のことを「絶対こんな人に違いない」って決めつけたり、勘ぐったりするのは、やめた方がいいと思います。本人にしか分からない苦しみや、痛みが絶対にある。そして、周りはその人が抱える「痛み」を理解して接することが大切です。
「人の痛みを理解できる人間になりたい」―改めてそう感じさせてくれた言葉でした。


誰にとっても、親子関係というのは思ったよりも簡単ではないだろう。生活をしてゆけば、幼い頃からの思い出がいいものばかりであるはずはなく、ささいなことがキッカケとなって、爆発したり、修復困難なしこりとなるものだ。

親子って難しいですよね。今のところ、私は両親とはうまくいっていますが、過去には、かなり両親との関係がこじれていました。
私の感情が爆発してしまったんですよね、今は、ほぼ修復しましたが。

親は、子供を愛するがあまり、過干渉になったり、「私の子なんだから、こうゆう考えを持っているに違いない」と考えてしまいがちです。でも、実際は全然違うこともあるはず。自分の子供とはいえ、やはり自分以外なので「他人」です。自分の子供を「他人」だと割り切って、接することも大事だと思いました。

「ただですね、無意味な延命治療は望みません」  江ノ原は意外なことを言い出した。 「何のために生きるのか──僕は、社会に対して自分がどこまでやれるのか、追い求めたいだけなんです。起業家として社会貢献を続けるために、幹細胞治療も受けてみたいと思った。もし頭が働かなくなったり、誰かのために役に立てない状態になれば、もう命はいりません」

延命治療―難しいテーマですよね。私の考えですが、私も延命治療は、全く望んでいないです。理由は、死期が近いのに、延命治療をしても「生かされている」としか思えないからです。
やっぱり人生って、自分の力や意思で、何かを切り開いていくから楽しいじゃないですか。誰の役にも立てない状態なら、生きていたくない。私も江ノ原さんと同感でした。
だからこそ、今、自分の力で色々試せる環境に、本当に感謝しよう。そして、少しでも誰かの役に立てるように、試行錯誤して、自分を成長させていきたいと思いました。


【終わりに】

今知ったのですが、去年に映画化された作品みたいです。
医療小説は重いですが、とても感動する話が多いですよね。南杏子さんは、実際にお医者様で、医療現場で働いているからこそ、こんなにリアルに描けるのだと思います。
「家族がいる」「友達がいる」―日常が当たり前になっている方にこそ、読んでほしい小説です。

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