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美味しいワインになっていますか -私が悲しい話「も」書く理由

マリナ油森のnoteを読み込んでくださっている方はお気づきでしょうが、私はちょこちょこ悲しい記憶をベースとした話を書きます。
マリナっち、大丈夫?抱きしめてあげようか??と読後の感想を持つ優しい方もいらっしゃるかもしれないけれど、ご心配には及びません。
ぜんぶ乗り越えた過去の記憶です。いまの私は、過去の私に比べて余裕のメンタルつよ子。

自分のケアのためじゃないのなら、なんで悲しい話を書くのよ。
引っかかりのない明るくて楽しい話の方がウケも良いでしょうに。

これはワイン醸造家の修行なんです。悲しいワインの醸造家。
親友に出された10年以上前の課題に、いま取り組んでいるのです。


親友の指摘

大学の四年間、私が映画漬けになるきっかけをくれた彼女とは、大学生活のほとんどの時間を一緒に過ごしました。同じ部活、同じゼミ、同じ通学電車、空が白むまで酒を酌み交わした数々の夜。映画論から人生論、くだらない雑談まで来る日も来る日も共に語らっていました。

映画部というのは表現系の部活であるため、お互いの作品や人生観について、遠慮なく意見が交わされます。私のことをよく知っている彼女は、大学四年、卒業間際に私を評してこう言いました。

マリナさんは、つらい経験もたくさんしていて。経験をワインにできるならば良いのだけれど、彼女はせっかくのブドウを腐らせてしまうタイプ。そこはもったいないと思う。

この言葉は10年以上、私の心に刺さったままです。

私が映画部で撮っていた作品はほとんどがコメディでした。他の部員の評を借りるなら「スタイリッシュ理不尽系コメディ」。ラーメンズが好きだったので、多分に影響を受けていました。
コメディ以外に何本か真面目なものも撮りました。これが暗い。自らの悲しい経験を原体験として、恨みつらみや悲しみをそのまま垂れ流したかのような暗さ。
彼女はそこを指摘したのでしょう。そのブドウ、腐ってるよ。

美味しいブドウのための生育環境

良いワインを作るためには、美味しいブドウを育てなければいけません。
ブドウって、痩せた土地の方が美味しくなるんですって。栄養分が少なくて水はけのよい礫質の土をベースとした土地で、ブドウは甘くなるんだそうです。でも、まったく水がないと枯れてしまうので、保水性の高い粘土質の土を少し。そしてたっぷりの日照が美味しいブドウには必須。

そういわれてみると、私の心は美味しいブドウを作るのに最適なのです。10代までに育まれた、水をやってもやってもカラカラに乾いたままの砂のような心、その下にスッと潜り込んできた心を潤す映画などの趣味、そして明るく暖かく私を照らしてくれる仲間たち。
水はけ、保水性、日当たり。三拍子揃っています。

ブルゴーニュのブドウに匹敵するブドウが育てられるんじゃないの?
ロマネコンティ作っちゃう?

悲しいワイン醸造家として

優れた表現者は、悲しい話から極上のエンターテイメントを作り上げます。悲しみを悲しみのまま、しっとりと受け手の心に染み渡らせたり、はたまた思いっきり笑えるものに変身させたり。
私もそういう風に、極上のエンターテイメントを作ってみたい。ブドウを腐らすのではなく、美味しいワインを作ってみたい。

大学卒業後は自分の心を表現する機会を持たず、親友の出してくれた課題を放置したままでした。ワインを作ることはなかったけれど、良きブドウのための土壌を整えることは、ずっと意識して過ごしてきました。

そしてnoteに出会ったいま。今こそワインを醸造すべきときなのでは、と思ったのです。

noteを始めたての頃はワインのことを忘れていたので、悲しい系記事は、やっぱり暗さを脱しておらず重苦しい雰囲気で、苦味がしたたっています。また私はブドウを腐らせてしまったかも。

最近は、ちょこちょこ、人に飲ませられるワインができたんじゃないかなぁと思えるnoteも増えてきました。

これとか。長年に渡るいじめの記憶をベースにしたnoteでしたが、軽い口当たりのスパークリングワインに仕上がったんじゃないかと思っています。(悲しい話を面白い話に転換するのはやっぱり難しい。やりがいはある。)

こちらはあえて重さと暗さを残したnote。ずっしりと渋いフルボディのワインをイメージして作りました。暗いですし、読んで気持ちのいいnoteではないですけどね。


大学時代、親友に出会えて、あの言葉をもらえてよかった。
そうでなければ、私は今も腐ったブドウに埋もれていたかもしれない。


のどごしの良い甘くて爽やかなお話の方が、読んでいる方も気持ち悪さを感じなくて済むのは承知の上で、私は悲しいワイン「も」作ります。

ピノ・ノワール(ブドウの種類)系のフルーティなワインが好みなので、お話もフルーティになるよう書きたいなぁ。修行あるのみ。

変な渋みや酸味が出たワインを飲ませてしまうこともあるかもしれないけれど、そういうときはごめんなさい。「マリナっち、ワイン醸造に失敗したな。」と笑って読み流していただけると幸いです。

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