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話下手でも大丈夫。「ガムトーク」で遊んで見つけたこと|会話ログ#5

『隣の席のふたり』
日々の思ったこと、楽しかったこと、挑戦してみたことを、仲良しのふたり【osi = デザインする人】【しづむ = 漫画を描く人】が話します。

 会話ログと銘打って、友人同士の二人で更新しているこのマガジン。ゲームのルールを即興で説明してみたり、好きな漫画をプレゼンしてみたり……ということをやってみてはいますが、われわれ二人は共通して、

 話をするのがめちゃくちゃ苦手〜!!

 そこで「話す練習がてらやってみようよ」と、話題を提供してくれる『ガムトーク』というボードゲームを二人で遊んでみることにしました。


ガムトークとは?

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サラバ沈黙ヨウコソ話題
〔遊び方〕
1.適当なカードを箱から1枚引く
2.箱の中の一番上のカードに書かれた数字を見る
3.数字に該当したお題の話をする
話にオチがなくても大丈夫。
話終わったら「良い話や」とみんなで言ってあげてください。
場が和み会話が弾みます。

 ゲームといっても特に勝ち負けがあるようなものではなく、ランダムに話題を提供してくれるアイテムのようなものです。


ガムトークに一度失敗している俺たち

 ゲームの紹介には「話にオチがなくても大丈夫。話終わったら「良い話や」とみんなで言ってあげてください」とあり、ハードルを下げて我々のような話下手の人々に寄り添ってくれている「風」ではありますが、果たして……。

 実は、『ガムトーク』をやってみるのは今回が初めてではありませんでした。以前二人でやってみたときは、

「お題、『○○の話』だって。何かある?」

 というように、お互いが話すのが得意でないために話し始めを担う責任を押し付けあってすぐにグダグダになってしまいました。

 それに「ガムトークっていうのがあるらしいよ、やってみようよw 面白そうw」などと言うは易しですが、なにげない雑談の中にいきなり企画感満載のツールを持ち込んでも上手くいきません。

 話下手ならなおさら……。


 なので今回は事前に、

・あらかじめ話し始める人を決めておくこと
・すぐに話し始めること
・たくさんの話題をポンポン続けて話す

 の3つを決めてからプレイしてみることにしました。


 ほかにもゲームの紹介に「ここでしか聞けない話が出ることも」という煽り文句がありましたが、10年以上の付き合いになる友人同士でも新しい「意外な話」は聞けるのでしょうか?

(今回は「良い話や」のルールを省略して遊んでいます)


話下手でも大丈夫。「ガムトーク」で遊んで見つけたこと|会話ログ#5


しづむ: 今から出す話題を必ずosiさんから話し出してね。

osi: 私からなの!? 

(さっそく話し始めを押し付けあっています)


『あまり見せない特技の話』

osi: あまり見せない特技……。地味なやつでいうと、私は親指が手の甲の方に曲がる。

しづむ: 確かにそれは見せる機会がないわ。私はそれ見たことあるよね、ほぼ指が後ろにつくくらい曲がるよね。

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osi : しづむさんのは言わないの?

しづむ: 私のあまり見せない特技? チンパンジーの物真似が得意なんだけど、人間を捨てた物真似になるから絶対に誰にも披露できない。

osi : 私もティラノサウルスの物真似できるよ。墓場まで持っていくけど。


 一発目は『あまり見せない特技の話』。ちょうどいいしょうもなさで好調なスタート。


『痛かった話』

osi: 痛かった話はぁー……。あ、しづむさんからか。

しづむ: 痛かった話か。一番大怪我したのが……小一のときにうんていから落ちて唇の下のところを切ったことがある。血が下にたらーって顎まで垂れたから、くるみ割人形みたいになった。

osi: 覚えてるってことはよっぽど痛かったんだね。

しづむ: 縫った。親が当時は携帯を持ってなくて連絡がつかなくて……それ以来親が携帯を持つようになったっていうことを含めて覚えてる。

osi: そんな大きい怪我の後に申し訳ないけど……この間口の中に口内炎が三つ、夏の大三角形みたいな感じで各所にできた話が最近はいちばん痛かったかな。

しづむ: 私その話好きなんだよね。

osi: マジでちょうどいい感じで距離をとって口内炎ができるからさ、口の中がぜんぶ痛いの。

しづむ: 本当に最悪だよ。

osi: しかも、全部痛いけど食べたいから食べちゃうの、普通に。だから1ヶ月くらい治らなくて痛かった。

しづむ: 何回か会ったけどずっとその間口内炎できてたもんね。


『もしもの話』

osi: もしもの話? ええー……もしも……。ええ、なんだろ。でも「もしも自分が男だったら」って考えたりしない?

しづむ: 男だったら何したかったの?

osi: アイドルになる。

しづむ: ぜんぜん違うじゃん。性別変わったからってそんなに変わらないと思うけど。

osi: もしもの話って難しいね。何かあります?

しづむ: もしも……自分の今の本名がつけられる前の「候補の名前」の話を親から聞いたときに、「もしかしたらこの名前だったかもしれない」と思うとふわふわした気持ちになったね。

osi: 確かに不思議な気持ちだね。ぜんぜん違う人格に育ったかもね。


『イルカの話』

しづむ: ええ、ちょっと……イルカの話? 福岡県民はみんな行くでしょ、マリンワールドに。そしてしょうもないイルカのキーホルダーを買ってもらうじゃない、小さい頃とかに。ピンクとか青の変なまだら模様のキーホルダー。それを買ってもらってすごく大事にしてた記憶がある、くらいだな。

osi: イルカねえ……。

しづむ: あ、じゃあ、乗りたい? イルカ。

osi: 乗りたくはない。

しづむ: 盛り上がらねえ。

osi: 「ファインディング・ニモ」って木梨憲武さんが声優さんじゃない? 映画に一瞬出てくるイルカの役を──福岡のローカルで活躍してた「3923(さんきゅーにーさん)」って人覚えてない?

しづむ: あった。小学校に来て話題になるやつ。

osi: その人がその一瞬のイルカの役をやってた、っていうのは今出てきたよ。

しづむ: ぱっと話そうとすると変なとこから変な引き出しが開いて変な話が出てくるな。

osi: それしかなかった、イルカの話。

しづむ: もっとイルカは賢いよね、とかあっただろうに。


 話しているうちにどの引き出しが開いたのか、なぜか地元福岡ローカルネタばかりになった『イルカの話』。


『ペンギンの話』

osi: ペンギンねえ。ピングーが好きだったな。小さい頃特にね。

しづむ: ああー!

osi:ミスドの交換できるやつでバッグがもらえたことがあって、めちゃくちゃ気に入ってたの。ピングーとピンガの2種類があって、それを友達とお揃いで持ってた。ふたりで公園に遊びに行って「なかあてしよう」ってフェンスにバッグを引っかけてたら、なくなってた。

しづむ: 何その悲しい話。

osi: かなしかったな。

しづむ: 私もピングー大好きでさ。小学校あがるときにランドセルとか筆箱とか一式買ってもらうじゃん? あれ全部ピングーだった。プールバッグに至るまで。

osi: めちゃくちゃ好きじゃん。

しづむ: つい数年前も郵便局でピングーのグッズもらえることがあって、もらってウキウキで帰った。

osi: いいじゃん。


『ペンギンの話』では懐かし話に花が咲きました。


『寿司の話』

しづむ: 寿司か。こないだ行った寿司の話になるけど、回らないお寿司屋さんに行って。そのお寿司屋さんオーシャンビューなのよ。カウンターがあって、板前さんがいて、その奥に細長い窓があって、海が見えてるっていう。そこで食べた寿司が死ぬほど美味しかった。………ってだけ………。

osi: いいじゃん。

しづむ: そこosiさんと一緒に行きたいって思った。osiさんは?

osi: 留学中、日本人で集まって日本をアピールしようみたいなイベントをやったときに、死ぬほどサーモンの巻き寿司を作った。

しづむ: 海外にいるときって日本の米って手に入るの?

osi: なんかね、あるのよ。普通のスーパーにはタイ米みたいなものしか売ってないんだけど、アジアンスーパーに行くと「日の出」って書いたお米が売ってるの。でもその「日の出」って書いてある下にローマ字で「SHINODE(しので)」って書いてあるのがポイント。

しづむ: 面白い。知らなかった。


『ドライヤーの話』

osi: ドライヤーの話はねぇ……。

しづむ: ありますか?

osi: ありますっていうか、世界一嫌いな時間だよねぇ。

しづむ: え、そうなの?

osi: え?

しづむ: そんな思ったことない。

osi: マジ? え? だっ……なんかもうだって、虚無じゃない? 一番虚無な時間じゃない? ドライヤーの時間って。

しづむ: 髪長かったから?

osi: 長かったし、「この時間って何だろう」って常に思いながらやってる。腕疲れるしさ。

しづむ: 確かに疲れはする。

osi: あまりに暇すぎて、この虚無の時間が嫌すぎて、最近はこの間に表情筋を鍛えようと思って、鏡に向かって笑顔でドライヤーをかけてる。

しづむ: (鏡に向かって笑顔でドライヤーをかけているosiさんを思い浮かべる)かわいいじゃん。

osi: あいうえおー、って。

しづむ: 思ったことないな。ドライヤーの時間ってさ、虚無だから考え事に没頭するじゃん。長時間の移動中のぼーっとしてる時間みたいな。空想が好きだから(あまり苦じゃない)。むしろアイデアが浮かんでくるのがわりとドライヤーの時間だったりする。

osi: 耳元でごおお〜〜〜!!! っていってんのに?

しづむ: あれがいいの。

osi: そんな人、初めて会ったかも。

しづむ: ドライヤーって嫌いなの?

osi: 嫌いだよ。

しづむ: そこまで考えたことなかった。

osi: そうなんだねぇ。


しづむ: こんなちゃんとガムトークしたの……人類で初めてくらいでは。

osi: えらい。えらいぞ。


遊んでみて……

 上で挙げた話題以外にもたくさん話して、いつの間にか1時間ほど経過。

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 実際遊んでみた結果として、

・とにかくすぐ話しはじめることを重視することで、話がつまらなくてもいいやと気負わず話し始めることができた。(よかった)
・はじめて聞くような意外な話もちゃんと聞くことができた。(よかった)
・何か話さなければと絞り出すことで「何その話?」と言いたくなるような変な話が出てきた。(よかった)

 というように、ちゃんと楽しめることができました。


 それから、もう一つ発見がありました。

 この記事を書くために会話を聞き返していると、上にあげたようなオチのない「どうでもいい話」の濁流に「私は今何をやっているんだ?」と正気にかえる瞬間がたくさんありました。普段でも、人に興味のない話を聞かされていると退屈に思うこともありますよね。

 しかし、『ガムトーク』で遊んでいる間は、オチも笑いどころもない「どうでもいい話」をしあうことを全員で許容しあっている時間。

 むしろ「もうちょっと聞きたいな」「もうちょっと話したいな」と思いながら気付けば時間が経っていたな……ということに気づきました。人間はわりと、こういうどうでもいい話をする機会を求めているのかもしれない。


 以上、『ガムトーク』で遊んでみた話でした。

 普段聞けない話が聞けるので、今回の自分たちのように「今さら話すことがあるのか?」というくらいの付き合いの長い者同士にこそおすすめしたいです。

 わざわざ自己紹介や履歴書などには書かないようなこういう細かいエピソードからこそ、その人のひととなりが見えるのかもしれません。



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