新しい体験のデザイン〜「キヲクノカヲリ Flower gift プロジェクト」
デジタルまわりでデザインの仕事をしていると、「UIデザイン」とも「webデザイン」とも言えない、不思議な案件の依頼が舞い込むことがあります。
少し前、『キヲクノカヲリ Flower Gift プロジェクト』のアートディレクションを担当したのですが、こちらもそういったお仕事のひとつでした。
今回は、デジタル技術の発達により、新しい体験が産まれ、その見た目を構築をした案件をご紹介します。
『キヲクノカヲリ Flower Giftプロジェクト』とは
太古からヒトは「花を贈る」という行為を続けています。
このプロジェクトは、「花を贈る」というヒトの根源的な行為に、新しい技術でイノベーションを起こす試みです。
東京丸ビルにある生花店リベルテさんとともに「いい夫婦の日(11月22日)」をターゲットに体験イベントを開催しました。
まず、夫婦の思い出の「品」と「写真」を持参してもらいます。
それらを元に、ヒトの嗅覚を模した世界初のセンサリングと最新のAI技術を使用して、ふたりの記憶にシンクロする香りをもった花束を抽出しました。
普段はシャイな日本人男性に「花を贈る理由」を与えた(笑)このイベントは、広告換算費として1億2千万円超を達成し、期間中の店舗売上は前年比の300%を記録します。
プロジェクトのはじまり
その始まりは、「世界初のセンサリング技術で、匂いのデータベースをつくる」という話からでした。
世界には様々なデータベースがありますが、「匂い」に関するデータベースはあまりないそう。
「匂いのデータベースがあると何ができるんだろう?」というところからプロジェクトがスタートしました。
↑ 当初のアイデアラフ。
MTGを重ねるうちに、「花」と「記憶」にテーマが絞られ、全国に19店舗を展開する株式会社リベルテさんをパートナーに得るとプロジェクトが本格化します。
「夫婦の思い出にシンクロする香りの花束をつくる」
企画や技術のアウトラインが決まり始めると、それらをどう見せていくか、すなわちデザインが始まります。
ロゴデザイン
アートディレクターとして、UXの絵コンテなど描いたりしつつ、デザインの実務はロゴ制作から入ります。
明確な納品物のないプロジェクトなので、ロゴがあると制作メンバーの士気高揚にもなりますね。
今回は、
・花を贈ったことのない30歳以上の男性がターゲット。
かなり年配の男性も視野に入れたい。
・夫婦の記憶をふたりで振り返り、思い出話をする。
リベルテの花がその情緒的トリガーとなる。
上記の理由から、少し昭和の香りのする、少し懐かしさすら感じさせるテイストに決定。
予算などの諸事情で、週にとれる制作時間は4時間のみ。
とにかくスピード勝負。定例MTGの前にガッと作ります。
最終的に決定したのが以下になります。
装置デザイン
思い出の「品」と「写真」をボックスに入れて、「匂い」「色」「それが何であるか」などをセンサリングするのですが、そのボックスのデザインも行います。
最先端の技術が満載の箱なのですが、先にも述べた通り、情緒的な雰囲気を大切にしたいという考えから、白木作りのアナログ的な装いのデザインに。
データビジュアリゼーション
ロゴには、花アイコンを付与していますが、下記の11個のオブジェクトから成り立っています。
これは思い出の品の香り成分を、11の指標で計測することを表現しています。
このオブジェクトを、マッチング結果のアニメーションにも使用します。
↑ センサリングから取られたデータを読み取り、11個のオブジェクトで花を生成するテスト。
マッチングのプロセスが、ボックス近くのモニタにアニメーション表示されます。
マッチング結果はカードに印刷され、花束に同梱されました。
↑ 診断結果によって変化するカード。裏には奥さんへのメッセージが記入できます。
イベント当日
ぼくが遊びにいったときには、なかなかの人が集まっていました。
WBCの「とれたま」ほか、さまざまなメディアが取材に来ていたようです。
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今回はデザインの話が中心でしたが、技術的な詳しい話は下記にもありますので合わせて是非。