「情報リテラシー」について配信スタート
2020年は、とんでもない量のデマが、ネットに飛び交った一年でした。
「新型コロナウイルスは、中国の研究所で作成された生物兵器」
「お湯を飲めばコロナ感染防止になる」
「トランプ大統領は不正選挙で負けた」
「就任式でバイデン氏が逮捕される」
知り合いと話していても、「情報が溢れすぎていて、もう何を信じていいのか分からない」という諦めに近い声を耳にします。そして、そうした声は、アメリカ人よりも日本人から聞こえてくるのです。
危険なネット情報
理由の一つに、英語に比べて、日本語ではネットで信頼できる情報を得づらいということがあります。
日本語で調べ物をすると、公的・研究機関が発信する情報が少ない、「知恵袋」など信頼性の低いサイトが上位に表示される、といった不満を感じます。一見もっともらしいけど、記事の信憑性は怪しい「ニュースサイト」もあふれています。
また、YouTubeで大統領選挙について検索すると、英語と比較にならないくらい、陰謀説をまことしやかに語る動画ばかりが表示されます。そうした陰謀説を唱える人物が、日本のTVキー局の番組に出演してコメントを求められる姿を目にした時は驚きました。
誰もが発信者になれるインターネットは、上手に使えば確かに素晴らしい情報収集のツールです。マスメディアからは聞こえてこない声を拾うこともできる。
その反面、ネットに流れる情報は玉石混交です。ニュース、意見、パロディー、広告・宣伝、プロパガンダ、デマが同列に並んでいます。
にも関わらず、ネットを使う人のほとんどは、「信頼できる情報を見極める」訓練を受けていません。そういう機会がなかったからです。
訓練で養える力
今、アメリカでは、報道機関と学校・大学が中心となり、「ネットに溢れる情報との正しい向き合い方を教えていこう」という動きが盛り上がってきています。
ただ、日本では、その方法を伝えている場がまだ少ないのが現実です。
なので、私もジャーナリストとして、大量の情報に翻弄されて困っている人々の助けになるような記事をnoteで発信していくことを決めました。
信頼できる情報を集めて活用する力。これを情報リテラシーと呼びます。
英語のリテラシーという単語には、「読み書きの能力」に加えて、「特定分野の知識」という意味があります。情報との上手な付き合い方も、読み書きと同じように訓練で養うことができるのです。
メディアリテラシーやニュースリテラシーという呼称も使われますが、ネットやテレビ、紙媒体のメディアに加えて、知り合いとの日常会話など、あらゆる情報の見極め方を取り上げるつもりなので、ここでは「情報リテラシー」という表現を使うことにします。
あなたの言うことは信頼できるの?
こう思った方は、すでに情報リテラシーが高いといえます。
情報リテラシーの基本は、「健全に疑う」ことだからです。何の専門性も根拠も示さない人を信じる理由はありません。
私は、日本の大学を卒業後、アメリカに移住し、ピューリッツァー賞を受賞したことのある現地新聞社などで10年間、唯一の日本人記者として働いていました。調査報道で、現地の賞をもらったこともあります。
現在は、アメリカを拠点に、時事通信などにアメリカの社会や文化に関する記事を寄稿するかたわら、日本のテレビやラジオ、雑誌でニュース解説を行っています。(詳しいプロフィールはこちら。)
ここで発信する記事は、プロのジャーナリストとして活動してきた経験と、そこで培われたノウハウ、そしてアメリカで行われている情報リテラシー教育をもとに書かれています。
スタンフォード大学が行った調査によると、スタンフォードの学生、学者、報道機関のファクトチェック担当に、それぞれネット情報の信憑性を見極めるテストを受けてもらったところ、ファクトチェック担当が圧倒的に早く正確だったそうです。
これは、報道に携わるジャーナリストの情報リテラシーの高さと同時に、情報リテラシーには思考力だけでなく専門的知識が求められることを示します。
ここではプロのジャーナリストが心掛けていること、取材で使っているテクニックを紹介していきます。皆さんも、ぜひ日々の生活や仕事に取り入れて、情報収集に生かしてください。