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製鉄業の矜持に身が引き締まったのです。
とある鉄鋼メーカーの製鉄所の見学に行ってきた。とんでもなく巨大な製鉄炉の上に登ってその熱気を肌で体感したり、鉄鉱石が高温で溶けて水のようにドロドロと流れている様子を間近で観察することができた。
なぜ見学に行くことになったかというと、彼らが開発中の新しい製鉄炉の安全について検討する機会があったからだ。
見学の後には懇親会も行われ、美味しいお食事と日本酒を頂きつつ、私のような若造ではおそらく簡単にお会いすることができないような、執行役員などの重役の方々のお話を直接伺うことができた。
従来技術を用いた鉄鋼の製造には多量の二酸化炭素を排出してしまうが、その量を何とか減らしていこうと、苦悩しながらも新しい技術開発に真摯に取り組まれている姿勢を拝見して、頭の下がる思いだった。
私も、こうした新しい製鉄炉のような、社会実装される以前のまだ見ぬ最新技術の安全に関わる人間として、社会的責任の大きい立場にいるのだということを改めて感じ、身の引き締まる思いだった。
彼らの話を聞きながら、私は彼らに対して大変好印象を持った。それは、日本の製鉄業を支えてきたメーカーとしての矜持がある一方で、世間からはトレンドアウトしていると見られていたとしても、製鉄業という社会に必須の産業を守る社会的責任を果たそうとしていたからだ。
そういう責任ある立場に置かれている方々とお話できる機会があるということそのものが、私にとっては大変ありがたいことに思えた。それは、たとえ私のような若造の話であっても、学位を取得した人間として一定のリスペクトを持って耳を傾けてくださっているように感じたからだ。
今回の見学会と懇親会を通して、やはり今現在の仕事は、大いに社会的責任のある仕事だと思わされた。
帰り道、自分の生き方を再度見直して考えた。
本当にやりたいことを改めて選び直すのか、あるいは、今の仕事を続けることによって社会的責任を果たすのか。
しかし、そうやって二者択一で考えてしまっていたはものの、どうせ選ぶ決心がつかないなら、両方やってしまえばいいのではないか。
自分のやりたいことだけを追求することは、逆に自分らしくないのではないかと思ってきた。
自分の生きたい生き方ややりたい仕事を模索すると共に、自分のこれまでの蓄積や能力を活かすことができるならそれによって社会的責任を果たす。
当面はそのバランスをうまく取っていくことが望ましいのかもしれない。
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