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固い決意が金銭感覚を壊してしまったのです。

登山用品三種の購入を済ませた後、大型の購入品が入ったどデカい袋を受け取り、店舗の外を強烈な日差しに晒されて歩きながら、ドキドキしている心臓を何とか落ち着けようと努めた。

ここ数年の中で3本の指に入るほどの、かなり大きな買い物をしたぞ。
本当に大丈夫なのか?
いや、今年は感性を獲得するための努力をすると決めたのだ。
これでよかったのだ。
いや、それにしてもちょっとやりすぎなのではないかーーー

歩きながら自問自答を繰り返すが、心臓のドキドキは一向に収まらない。

一旦座って冷静になって考えようと思って、日陰にあるベンチに腰掛けた。そして、もう一度改めて、それぞれの物品にかける金額の妥当性を検証した。

まず、登山靴について。これについては、店員さんとの会話により購入を納得した。

主要な理由は、登山靴は登山行動中常に身につけるものであり、靴内部の細かな隙間やズレが疲労感の蓄積に直結することから、仮にレンタル品で自分の足に合わないものが届いた場合のリスクが大きいと考えたからだ。加えて、これからの登山時にもその靴が使えるとすれば、快適な登山活動を引き続き行っていける可能性もある。だから、購入はそれなりに妥当だ。

次に、登山リュックについて。これについても、店員さんとの会話に納得して購入したはずだ。

そもそもリュックについては、今まで自分が使ってきたリュックが破れて壊れてしまったから、どうせ新しいものを買わなければならなかったし、以前のものよりも少し大きめでかつ飛行機内に持ち込めるサイズのものにしておけば、小旅行に出かける際も便利になる可能性がある。加えて、リュック単体で見れば、他の2種に比較すれば圧倒的に安い。登山以外のシチュエーションでも使用する可能性が高いことを考えれば、購入は妥当だ。

最後に、レインウェアについて。これについても、店員さんとの会話の中で自分なりに納得したはずだ。

トップスとしては性能のいいゴアテックス製のものを選定しつつ、ボトムスとしてリーズナブルなものを選定したのは、登山以外のシチュエーションでの使用を考えたとき、おそらくトップスの方が使用頻度が高いと考えたからだ。

・・・。

待てよ。
根拠薄くない?
レインウェアを購入した根拠薄くない?

本当にレインウェアの使用頻度は高いのか?

私は自転車通勤などをしているわけでもないので、日常生活の中でレインウェアを着る機会はほぼない。したがって、活躍するのはキャンプや登山のときくらいだ。

しかし、登山に行ったとて、富士山レベルならまだしも、それ以外の低山では天気が良ければレインウェアの出番はない。今回のコストを払って得られる分のメリットを得る前に、経年劣化を迎えてしまう可能性が高いぞ!

レインウェアは常時身につけているわけでもないから、レンタル品でも十分ニーズは満たせるのではないか?

多くの家族連れやカップルで溢れる真夏のショッピングモールの中、たった1人で外のベンチに座って脳内会議をしていた私は、ついに解にたどり着いた。

よし、レインウェアは返品しよう。

しかし、ここでまた私の心の声が響く。

返品するの?
覚悟決めて買ったのに?
店員さんにあそこまで丁寧に説明してもらったのに?
本当に返品するの?

いや、おそらく今までの自分だったら、「もう決まったことだから」とこのまま諦めていただろう。

しかし、それでは自分の成長にならない。きちんと自分の意見を主張して、前言撤回をするのだ。

そう決意した私は、どデカい袋を持って店舗に向かい、一直線にレジに向かった。先ほどレジ対応していただいた店員さんに声をかけると、心根ではどう思っていたかわからないが、快く返品対応してくれた。

無事に手続きを終えて改めて店舗の外に出ると、私はなんだか清々しい気持ちになっていた。

なぜこんなひと悶着が起きたのかはよくわからない。「センス・オブ・ワンダー」の呪いに取りつかれて、その決意が私の金銭感覚を壊してしまったのかもしれない。

最初から冷静に考えておけばこんなことにはならなかったはずだけど、購入した後の方がなぜかよく頭が回っていた気がする。

普通こういうエピソードって、高い買い物をするかどうかで迷って、でも目的のためには覚悟を持って買うんだ、と決意して気持ちを新たにするパターンが多そうだ。

「返品」という選択をしたことを、こんなにも長々と文章で書いていることは、結構恥ずかしい。あんなに「センス・オブ・ワンダー」とかなんとか言っていたくせに、結局は合理性を優先するのか、と自分に言ってやりたくもなる。

しかし、これが私という人間なのかもしれない。どこまでいっても、最終的には自分にとっての何らかの合理性を優先してしまう、悲しい人間なのかもしれない。

コストをかけるところと、合理的に進めるところと、この狭間、バランスの中で闘っているのである。

ただ、いずれにしても今回の登山計画をきっかけに高い買い物をしたというのは事実だ。

これによって、ある意味ではちょっと覚悟が生まれたかもしれない。

それは、「適切に稼がなければ」という覚悟だ。買いたいと思ったものを、お金を気にせずに買えるようになることが、どれだけストレスのないことだったのか、ということに気づかされた。

だから、どうやって自分が使えるお金を生み出すのか、真剣に考えようと思う。

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ともやの思考整理note
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