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「美しい距離」

たくさんの知恵や生きる術を本から得てきた。
とはいえ小説を読み始めるときに、何を得られるかなど考えることはまったくない。面白ければいいし、読書の時間が心地よければいい。
でもまれに、価値ある1冊に出逢えたと、強い感激を味わうことがある。

末期がんの妻を看病する夫の一人称スタイル。問わず語りスタイルで、妻を見送るまでの時間が描かれていた。
医療サイドとの価値観のギャップ。義母への気遣い。妻の仕事、自分の仕事。親子や家族も大切だけど、仕事という社会との繋がりも生の証。

自分も死ぬ。死因は、妻と同じがんがいいと思い始めている。
死ぬための準備期間があるがんという病気に、妻のおかげで明るいイメージを持てるようになった。
がんは、それほど悪い死に方ではない

妻を亡くす男の物語でも40代で亡くなってしまった女の物語でもない、「美しい距離」を真剣に考え抜いた男の告白手記。

知人に薦められなければ出会うことのなかった本。
手にとった時の印象とは180度違っていた。
薦めてくれてありがどう。

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