ふとAIについて考えたら、切ない気持ちになった。
日常でも仕事上でも「AI」という言葉が頻繁に出てくるようになった。
今この瞬間も世界中の数十億の人がスマホやパソコンにアクセスしていて、入力される膨大なデータがAIを学習させるなら、AIは想像を超えるスピードで進化している。
10年前の映画、スパイク・ジョーンズ監督の『her/世界でひとつの彼女』でも、パソコンOSのアップデートという表現でAI進化への警鐘が描かれていた。
市井の人たちにとってはAIもコンピューターも同義語。
だいぶ以前から、コンピューターが人間を上回ることなんてないよと言うときの僕は、自動車の自動運転を引合いに出した。
「自動運転が完璧になったって、道路の右から子供が飛び出してきて、左から大人が飛び出してきて、コンピューターはどちらにハンドルを切るかなんて判断できるわけない」
コンピューターが人間の心を持つことはない、ということだ。
でもちょっと待てよ、と思った。
人間から得る膨大なデータには「感情」も入力される。
いらいらしたとき、悩んでいるとき、嬉しいとき。
声や表現を識別していけば、AIは人間の機微を理解するようになるのかもしれない。
ならば、本当はAIに心が備わっていなくても、人間の心に応じた対応ができれば、心があるように錯覚してしまうのか。
まさにスパイク・ジョーンズが描いた世界じゃないか。
パソコンOSの”彼女”を愛してしまった主人公の男性。互いに深く愛し合っていると信じていた男性は、OSのアップデートのせいなのか”彼女”の変化を感じる。
男性が”彼女”に問い詰める。
「今僕以外と人と、いったい何人と連絡を取り合っているんだ!」
「8,316人よ」が”彼女”の応え。
「愛している人は?」
「641人。何人いてもあなたへの愛は深まるばかりよ」
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