富有柿と次郎柿と、名もなき柿
朝夕歩いて通る八百屋。買い物をするのは週に一度ぐらいだけど、店先に並ぶ野菜や果物をながめるのは楽しい。
顔見知りになった店の主と、たまに言葉を交わすようになった。
先日、柿の籠を指して「これとこれってどう違うの?」って聞いた。
「食べてみる?」
「あ、はい」
「ちょっと待っててね」
主は別の人の会計を終えてからバックヤードに行って、切った柿を皿に載せてきてくれた。
なんか嬉しかった。
僕は富有柿と次郎柿を買って帰った。
翌日、たまたまサッカー仲間から「ウチでとれたやつ。美味しいかどうかわからないけど」と名もなき柿をいただいた。
手入れもしない庭の柿が、今年はなぜかたくさん実をつけたらしい。
美味しいかどうかわからないけど、って言葉とその歪な形にも惹かれて、即食した。
旨かった。
翌日は八百屋で買った富有柿を食べた。これも旨かった。
八百屋でどっちが旨かったか言いたいから、明日は次郎柿を食べようと思った。
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