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純真と言葉
1950年代の南イタリア、ナポリ沖に浮かぶ島。
青年マリオは、船に乗ることを勧める漁師の父に従わず、島の郵便局に職を求めた。
読み書きができない村人が多いなか、文字が読めた彼の仕事は、山の上の一軒家に自転車で手紙を届けることだった。
山の家の主は、チリから亡命してきた高名な詩人パブロ・ネルーダ。世界中にファンのいるパブロには毎日多くの手紙が届くのだった。
詩と、表現の世界に惹かれるマリオと、彼の純真に感じ入るパブロ。
歳の差をこえて絆を深めていく。
「空が泣く。君はどんなことを思う」
「雨が降っている」
「その通り。メタファだ」
マリオの、伝える言葉持つことで芽生えた恋はパブロの助けもあって成就する。
結婚式の立会人も務めたパブロだったが、祖国からの逮捕状が取り消されて帰国してしまう。
1年以上が経ち、マリオの元にパブロから手紙が届く。山の家に置いたままの荷物を送ってほしいという内容だった。
荷物をまとめるために部屋に入ったマリオは、埃をかぶった録音機を見つける。
マリオは録音機を持ち出して、島の美しいものにマイクをかざして収録していく。
波、さざ波、大波、岸壁の風、父の網、星空…。
5年後。
島を訪れたパブロはマリオと会うことができなかった。
パブロは、マリオの収録した音を反芻するように海辺を歩いた。
「詩は書いた人間のものではない。必要な人間のためのものだ」
「君が読んだ詩を、別の言葉では表現できない」
言葉が今よりずっと大切だった時代の物語。
純真さと美しい景色だけで、胸は熱くなるものだ。
イル・ポスティーノ
1994年製作 イタリア、フランス