旅の記録 12月3日・那智山と紀勢線完乗
飲んだわりには早起きできた。
ゆったりした海辺の朝
カーテンを開けて、朝焼け色の残る空と海を眺める。こういう朝の光景は旅の醍醐味。もう堤防に釣り人がいる。
さっそく朝風呂。一番風呂だからか昨日より気持ち温度高めで、頭もシャッキリ。風呂上がり朝ごはんは、海を眺めながらビール。と、昨日のめはり寿司と持ち帰ったつまみ。これで今日は帰りの特急まで体力も保つでしょう。
支度をして8時過ぎ、タクシー呼んでもらって。待ち時間、もう一度海辺へ。触れたさざ波、水は冷たいけど気持ちがいい。
駅までは道も空いててすぐだった、迎車料金がなくてびっくり。コインロッカーに荷物預けて、と。
思ったよりバスまで時間があった。港まで行ってみる。日が射しているから、海の色が深い青になってとてもきれい。
観光市場がもう開いていて、カフェを発見しコーヒー買いがてら中を見てみる。飲食店メインだけどおみやげ屋さんもあるし、もちろんマグロ専門店も。お惣菜もあるから、帰り車内のつまみはここで買おうと決める。
この距離感だからできる行き来、いいなあ。
道中の緊急速報
駅まで戻り、バス窓口で那智山フリーパスを買って乗車。
那智駅、補陀駱山寺を過ぎるとだいぶ山な感じだけど、道路はかなり整備されていて観光地だなあと思う。日光みたい。熊野古道でいちばん有名な大門坂も寄ってみたかったけど、そこまでの時間はなくて残念。
山に来たなあ〜と思っていると、スマホから変な音が鳴る。私だけじゃなく、他の乗客の人からも??
えっ、、、と思い画面を見ると、、、緊急地震速報。
途端に動悸が激しくなる。他の人も、えっ???という顔で周りを見ていて、目が合ったけどお互いキョドるしかない。
バスは普通に走ってるし、他の車も通過していく。山で建物ないから、揺れてるかもわからない。また誤報?とも思ったけど、地震チャンネルをチェック。
そうしたら。なんと、紀伊水道で震度5。。。和歌山、白浜震度4と出ていた。
もし津波とかあったら、ここは山だから被害は受けないだろうけど電車が止まって今日明日は帰れないかも、とかいろいろ脳裏を過る。心臓がバクバクする。
そのタイミングで那智の滝が見えてきた。ドキドキしながら、今日の無事を祈る。
それなのに何事もなかったかのようにバスは走り、終点、那智山。
降りるとガイドさんがいて、いろいろと案内をしてくれた。すっごく普通に話をしてたので、さっきの地震て本当にあった??と思い、聞いてみた。
そうしたら、ああ、結構揺れたねえ〜。と、なんてことないよーという感じでさらっと返事が。この辺は昔から南海トラフで大地震くるってずっと言われてるからねー、時々大きいのあるんだよ、と、何にも動じてないような雰囲気でニコニコしながら話していてびっくり。
私も静岡なので南海トラフとか同じこと聞いてます〜、と言ったら、今日静岡から修学旅行生来るからガイドするよ!とか、ちょっと会話が盛り上がる。
ひとしきり話したあと、お礼を言って参道の方へ。
そうか、地震は本当にあったのか。
でもいるのが山でよかった。揺れに気づかない車中だったのも幸いだったけど、これ海の近くだったらもう怖くてしょうがなくて、旅行どころじゃなかったと思う。
あのガイドさんとは肝の据わり具合が全然違うわ。自分のビビり具合を改めて思い知った。
気を取り直して、那智山詣り。
参道は積み石ではない普通の石の階段で、社殿に直進ではなく迂回していくタイプ。山を切り開いてるから斜度を緩くする工夫かな。参道脇は那智石、竹細工などの小さいおみやげ屋さんが軒を連ねている。
見えてきた大鳥居と紅葉と、たなびく五色の吹き流しが青空に映えて、とても美しい。
でも思ってたより段数と距離があり、登り切ったらさっきの心配動悸と相まってゼエゼエ。
視界が開けた山の景観は、空気の澄み具合との相乗効果で稜線もくっきり。ここまで来れてよかった、、、と、いろんな意味でほうっと息をついた。
景色を眺めていたら、無線放送。さっきの地震では津波の心配はないとのこと。
あああ、よかった。。。これで今日帰れる。多少の電車遅延はあるかもだけど。
那智大社、胎内くぐり
安心したし、お詣りを。
朱塗りの社殿が鮮やかで、社殿自体は古いはずだけどそんな印象は受けない。
ここは主祭神がイザナミだから、昨日引いたおみくじのこともあり少し時間をかけてご挨拶を。本宮よりやわらかい感じのエネルギー。
拝殿すぐ横に八咫烏の像、かわいい。お社とカラス石があり、こちらにもお詣り。
次は、御神木の胎内くぐり。
実は胎内くぐりはあまりしたことがなく、とても楽しみにしていた。しかも、石や洞窟はよくあるけど、ここは御神木の中!樹の中に入れるなんて滅多にない。
護摩木に祈願を書き入れ、それを持って御胎内へ。鳥居から続く階段は一度地下に降りる。目前の樟の主幹には、びっしりと苔や多肉のような植物が生えて光を受けている。
その樹の根元は、地面に向かってぱっくりと開いた昏い穴。
恐る恐る入っていく。人ひとりがようやく通れるくらいの空間はひんやりしていて薄暗く、夜目の効かない私は覚束ない。周囲はぐるりと壁のようになっているけど、手で伝うそれは樹の感触。足元のでこぼこしたものは根っこ。
ここは、、、まさに「根の国」だ。肉体を持った胎内の温かさではなく、もっと根源の胎内「空」の静けさ。生者が死者に、死者が生者になる変換地点。
歩を進めると、急に光が射し込んだ。それは、高い地点にあるもうひとつの割れ目。産道の出口だ。
梯子を上り、外界へ出ずる。鮮烈な、緑眩く青空眩しいそこは、空中。張り出した枝の上、地面よりも2メートルほど上だった。
根の国から、一気に天つ国へ来たような不思議な浮遊感。
…なんなの?この感覚。。。
よろけそうな体を手すりに預けながらゆっくりと階段を降り、地上へ帰還。時間にしたら、ほんの数分。ただ通り抜けるだけなら1分もあればできる、たった数歩の距離。それが、こんな強烈な体験になるなんて。
今の私の状況や心境が喚んだのか?
紀の国は樹の国であり、そのもとは根の国だったからとの謂れ。そしてここの主祭神が、国産みと黄泉という、生死両極を司る女神であるイザナミだということも影響している?
何れにしても、私は「生まれ直し」た。
青岸渡寺と熊野古道
余韻に浸りたいけれど、スケジュール的にその余裕はない。
すぐ隣、青岸渡寺へ。こちらは歴史を感じさせつつも素朴な木のお堂。堂前に観音様の立像。
堂内は比較的こじんまり。立派な木造りの龍!役小角の像もあったけどちょっと私とは解釈違いなのでスルー。
御朱印をいただくのに少し待つ。西国三十三番礼所巡礼の1番ということもあり、那智大社の方より混雑している印象。
お堂を出て左手は、那智の滝が遥拝できる見晴台。これだけ離れても壮大さがわかるということは、間近で見たら凄いだろうなと気分が高揚する。
少し道を下ると、五重の塔と滝を同時に眺められる有名なビュースポット。だけど写真を撮りつつウォークスルー。先を急ぐ。
車道から裏参道へ入る。地図で見た感じでは林道かなと思ったら、ものっすごい急な下りの石段。。。
そうかここも熊野古道の一部なんだと思いつつも、けっこうビビるくらいの斜度がある。その上誰も歩いてないし、ここほんとに合ってる??と少し不安になってくる。
途中、やっと一人すれ違う人が。まだ距離ありますかと聞いたらそんなにないよーということで安心。
那智の大瀧
滝のバス停に出たー!すごく長く感じたけど、結局塔から15分ちょいかな。
ここには流石に人いっぱい、観光バスも停まってる。
鳥居から滝まで徒歩5分程度てあったけど、さっきの石段を思うとやや不安。しかし意を決して歩き出すと、だいぶ一段が広めで歩きやすかった。
下りきって。目前にはついに、那智の大瀧!!!
ここもずっと憧れのように想っていた、いつか来てみたかった場所。
飛沫を上げ、勢いよく流れる水の様は迫力があるというより神々しく。
「瀧」と表記される通り、龍だ。。。
なんだかドキドキしながら手を合わせ、ご挨拶を。
ハッと地震のことを思い出し、守護をいただいたことへのお礼も申し上げる。
目を閉じて瀑布の振動を感じていると、言いようのない感覚がこみ上げて来た。
改めて、大瀧を見上げる。
今回の参詣旅の目的は、これですべて果たせた。
旅の終わりの達成感と、もう帰らなければならない寂しさ。
もっとじっくりゆっくり近くで眺めたいけど、小学生の大群が騒がしいしバスの時間も気になるしで、拝所はあきらめる。次回絶対!!!
復路の石段、木立から太陽が射して、苔生した石が光って見える。こういった何気ない美しさにも心が洗われるようで、これも蘇りの所以かもしれないと思う。
昨日までって、こんなに光が輝いて見えたっけ?
予定通りのバスに乗り、あとは電車に乗って帰るだけ。
勝浦駅ついて、急いで港へ。生ビール飲むんだー!
と意気込んだけど、クラフトビールのあるお店は店員さんいなくて、普通の生はテイクアウトがなかった。
しょうがないから、お土産とつまみのマグロメンチカツ買って、駅に戻る。
お土産屋さんで熊野ビール買って、コインロッカーの荷物出して、いい時間。
改札に行くと、やっぱり和歌山方面の電車はダイヤが乱れてる。駅員さんに聞いたら名古屋方面は時間通りだというので、少し早いけど始発だから入線してるっぽいし、車内で落ち着くかと特急券(と既に乗ってある勝浦〜新宮間の乗車券)を買い、ホームへ。
!!!・・・ワイドビュー車両だ・・・!!!
同じJR東海のワイドビュー特急でも、ふじかわと違ってパノラマ形!!!
しかも、確認してみたら、前面展望席がなんと自由席!!!
しかも、誰も座ってないよーーーーー!!!!!
指定券買ったけど、返金にならないの知ってるけどいい!憧れのワイドビューかぶりつき席を陣取る。
発車前からテンション上がりまくり。前面展望見ながら、ビール!ひゃっほー!!!
紀勢線完乗
新宮すぎて検札。指定でなくこちらでよろしいですか?と聞かれ、この席乗りたいんで!と即答。指定料金などくれてやる!
平日だし、この空席状況では指定席乗りたい人が一人乗れなくなるってこともなかろう、誰も損しない。
楽しくて酒が進む進む。車内用に昨日のうちに買っておいてよかったー!車窓をつまみに呑み鉄の旅。しかも初乗車区間を前面展望、楽しくないわけがない。
だんだん内陸になるはずだけど、まだちょこちょこ海が見える。
湾内の小さな漁村といった趣の駅、こういうとこにぼんやり1週間くらい滞在したい。
いつの間にか、寝落ちたぁ。。。
3駅分くらい、未乗区間の車窓、見逃した。。。
もう、参宮線との分岐のあたり。
でも見たことある風景でも、ワイドビューだとなんとなく風情が違う。
途中、ひのとり、しまかぜとすれ違う!カッコいー!あれもそのうち乗ってみたい。
田園風景から完全に都会の町並みになって、乗車時間もあとわずかなことを感じる。
長年の夢だった紀勢線、ようやく完乗かー。帰ったら白地図塗りつぶししてニヤニヤしよう。
名古屋。
惜しみつつ下車、の前に、指定席車両をチラッと覗く。段があったからハイデッカー仕様だったのかな?今度は指定席も乗ってみたい。
さてホームに降りて。だいぶ覚えたけど、やっぱりわかりにくい駅。
構内図探して見て、いったん改札外へ。紀勢線完乗記念にきっぷは欲しいから、有人改札で無効印押してもらって。
味噌カツでもつまみにビールで一息つこうかと思ったけど、大都会名古屋の人ごみをかき分けて歩くのも怠くなって、キオスクで酒補充だけして次のこだまに乗ることにする。
そして旅の終わり
新幹線はICカード乗車。
ここからはいつもの〜って感じで、ある意味くつろぎながらお疲れ会0次会。
いろいろと思い返しながら、旅の余韻に浸る。
そうこうしてるうちに、もう静岡。
名古屋は近いのに、その先はやっぱりまだ遠いんだなーと、かかった時間を思う。
何回か行ったら、近く感じるようになるかしら。心の距離的な。伊勢くらいまでは近いって思うようになったもんな。
下車の時間が近づいている。おうちに帰るまでが遠足ですというけれど、私的には電車を降りたら旅は終わりだ。
濃い時間を過ごしたあとは、いつも少し寂しい。
旅は人生の道標、って何かで昔見たなあ。
今回の旅は、どんな道標としてこれからの人生に関わってくるのだろう。
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