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ただ刺さる。そして、わたしは孤独を噛み締めた。【映画/マンガ『ルックバック』】

今回は、現在、アマプラでも話題沸騰中の映画「ルックバック」についてです!
自主制作アニメの監督でもある友人が「絶対に見たほうがいい」と激プッシュされていた映画。気合いを入れて、”エグゼクティブシート”たる席に初めて座って見てきました。

結果、凄すぎる。どれくらい凄いかと言うと、映画の入場特典でもらったブックカバーに、翌日にはマンガが収まっているくらい好きになっていました。ただ、いつものパッション全開、超スキ!!という感情とは少し違うので、感じるまま書いていきたいと思います。

生の感情を書いていきたいので、ここから少し文体変えます。
どちらかというと一度見た方向けですが、核心に迫るネタバレは避けます。


腕に覚えがあるものならば

絵が上手い、文章に自信がある、歌で引きこむ、芝居で魅了するなどなど、表現に携わったことがある人なら、必ずと言っていいほど内なる藤野がいるはずだ。

なかなか4コマ漫画が思い浮かばず苦労した上で提出した原稿。学級新聞が回ってくるとクラスメイトに褒められ、得意になる主人公藤野。
そんななか、2枠ある内の1枠を不登校の生徒に譲ってもいいかと言われるところから物語は動き出す。

なんていうか、子どものときおもちゃで遊んでいるのを実は親がビデオで録画していたような、そのビデオを見せられているかのような気縁がこの部分。腕に覚えがあったものが必ずと言っていいほどぶつかるそれ。

小学生の時に文集や標語に選ばれ、元々国語も作文も得意だった自分が受けた衝撃と重なった。

ここからは自分の話。先生や大人が求めるものを先回りするような思考があった自分。テーマは詩だった。選んだ題材はランドセル。小学校高学年として、もうすぐ使わなくなるランドセルに想いを馳せた詩だった。完璧だと思った。

しかし、今でも忘れない。クラスメイトが書いた『今というとき』というタイトルの詩が表現する、刹那的なものへの観察眼、詩という短い文章で十分な奥行きを感じた。学校の授業の1コマだったため、コンテストや優劣を選ぶものではなかったが、「負けた」ことを確信した。

思えば、このときからエッセイや詩に対して避けるようになったのかもしれない。「しゅはら みどり」さん、わたしはあなたの詩を今も越えられる気がしない。

「ルックバック」に話を戻そう。

感情が渋滞する

ジェットコースター的なドキドキハラハラというわけではない。とにかく抉られるのだ。最初の澄ましたイキり方、そこからの衝撃。それでも勉強していきながらとにかく描きまくった。友達からの誘いもすべて断り、家族の心配もよそに。

その頑張りの糸が切れるとき。衝撃を与えられた相手から、それを上回る衝撃をもらう。

一緒に出掛ける、雪の中見に行く、順位を気にしながら続けていく。それぞれの道を歩もうとする。
なぜだろう。自分は絵を描いたこともない。一緒に高めあったり協力したりする仲間はいなかった。ただ、そんな青春があったような気さえしてしまう。この感情はどこから来るのだろう。

あぁ、自分のやりたいことに目覚め、一緒にやりたいと思った人の輪を広げていく。今やってることなんだな。

創作は、いつもひとりだった

そんな一つ一つのシーンに胸を抉らていたが、次に感じたのは寂しさだった。文章をクリエイティブの場としていた自分は、誰かと一緒にやってきたことはない。

一時期、ディレクション業務をしたことはあっても、あくまで一時的に業務をお願いしていた関係であって、目指すものが同じであるとか、価値観を共有しているわけではなかった。

テクニックや考え方を教えることはできても、価値観を共有して一緒に進む人はいない。一人で方向性を決め、進み、いつまで経っても組織化に踏み切れなかった自分は、ひとりだった。

だからこそ、自主制作アニメのスタジオに加わろうと思った。noteのメンバーシップを立ち上げようと思った。遠くに行くならみんなで行け、だ。

作品としての凄み

これは、同様の意見や解説も多い上に、あくまで個人的な好みの問題であることを先に断っておく。自分は好きな漫画がアニメになると、マンガのよさが失われていく感じがして、別物として見るようにしていた。

しかし、「ルックバック」は違う。解説や考察動画を見て、正にと思った。これは漫画の良さをそのまま映像化した。綺麗な線と色になったアニメではない。漫画特有の息遣いを帯びた映像に仕上がっている。

それをやろうとしている意欲を感じるアニメがたくさんあったように思えるが、本当にそれが実現してると迫ってきたのは初めての体験だった。

また、劇中に散りばめられた小ネタや、タイトルに込められた複数のミーニング。こうしたものはたくさんのYouTube動画やnoteで書かれているので割愛するが、気になる方はぜひ自分でも調べてみてほしい。

もし、自分のなかの感性が錆びてきたなと感じたら、何度でも見返したい作品だった。

#灯火artweek



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灯火 @ココロ・カタチ・ヅクル「リ・キュレーター」
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