ウソだと思ったらマジだった。ダマされる価値ありの30分「ウソ婚」
「ウソ婚」は今季、2023年7月期のTVドラマの一つで、最近多く見るようになってきた30分枠の番組だ。
大ヒットドラマ「逃げ恥」を例に出すまでもなく、タイトルからして既視感のある感じで、特に見るつもりはなかったのだが、放送後の感想コメントで評判が良かったのと、30分枠なら気軽に見れるということもあって試しに見てみたところ、意外にも?面白かったので紹介したい。
▼あらすじ・登場人物
本作はお人よしの性格が災いし、他人に気を遣うが故にウソを重ねた結果、仕事も恋も失ってしまうというヒロイン”八重”と、その幼馴染で彼女に思いを馳せながらも言い出せず、彼女の夢を叶えるために一級建築士にまでなった主人公”匠”の二人が織りなすラブコメディーとなっている。
主演の匠役の「菊池風磨」は、2021年にやはり30分枠で放送されていた「書けないッ!?」で主人公の娘の家庭教師役で出演していたのを見ていたが、この時もちょっと3枚目というか、教え子役の「山田杏奈」に振り回されてタジタジになる様子が印象的だった。本作も立派に成長してモテ男になっているのに、幼馴染の八重の前ではドギマギが止まらず、内心メチャはしゃいでしまうという”ちょいダサキャラ”となっている。
彼が所属している「Sexy Zone」ではケンティこと「中島健人」がイケメン枠という扱いなのに、彼はなぜかギャグ担当のような扱いになっており、バラエティ番組では毎度オチに使われて不憫だが、本作のようにハマり役が与えられるならそれも良かったのかもしれない。
ヒロインの「長濱ねる」は、名前が特徴的で覚えていたものの演技は見たことがなかったため、役者としては本作が初視聴だった。普段の本人がどうかは分からないが、天性の困り顔というか、控えめで押しの強い人に弱そうな見た目の印象のまんまの役柄で、これまたハマっていたように思う。
「高畑充希」とかもそうだが、あのいつもちょっと申し訳なさそうにしている感じは男性受けは良さそうなものの、女性にはあざといとか思われそうでイラつく人もいそうだが、とりあえず演技としてはそういうところも含めて自然に演じられていたように感じた。
▼ウソが紡いでいく物語
ドラマは、主人公の取引先社長が古い考えの持ち主で、所帯を持っていることを重視していたことで「結婚している」と嘘をついていたものの、大事な取引を前にいよいよ奥さんと会わせないといけないという話になり、仕事も家も彼氏も失った失意の彼女と再会したことで、内心ラッキーと思いながら奥さん役を演じて欲しいと”嘘の結婚”を申し出ることから始まっていく。
まあ、ストーリーや設定は最初に書いた通り既視感のあるものなので、改めて取り上げるようなものはないのだが、本作はこの「ウソ」がキーワードになっており、設定上の”偽装結婚”というウソだけではなく、ヒロインが周りに気を遣って、逆に気を遣われないために付くウソ、主人公がヒロインに弱みを見せないために付くウソ、同僚が主人公に特別な思いを抱いていることを感じさせないために付くウソと、登場人物が周囲との関係を壊さないようにそれぞれウソをついているというのが面白い。
序盤ボーっとして見逃していたかもしれないが、これから主人公が当時思い込みでヒロインから身を引いた原因となっているもう一人の幼馴染の話も出てくると思うので、彼が二人と疎遠になったのにも何か誤解やウソがあったのかもしれないと思いながら楽しんでいる。
▼スマホ時代の新しいカタチ
また、本作は映像の撮り方も現代的というか「VIVANT」とは真逆な印象で、通勤中や寝る前のスマホでの視聴を前提としているのか、とにかく主人公たちのアップの絵が多い。
自分は普通にTVで見ているので実物より顔が大きく映って違和感があるが、ヒロインの長濱ねるは元坂道系アイドルで、重版が止まらないと話題になった「白石麻衣」と並ぶくらい写真集の売れ行きが良いそうで、さすがの眼福というか大画面に耐える絵面だし、自分は分からないが菊池風磨もファンにとっては同様だと思う。
更に、30分枠ということもあってか、登場人物が少なく物語がシンプルな上、セリフも無駄に物語を進めるための説明セリフがなく、演者の表情と演技、構成でじっくり見せるので感情移入しやすい。
▼嘘はとびきりの愛なのか!?
視聴者は登場人物がそれぞれウソをついているのを知っているので、相手がそのウソにいつ気付くのか、またはバレてしまうのかが気になってついつい見てしまう。
特に(もしかして女性陣にはこっちが眼福だったかもしれない)主人公の同僚役のSnow Man「渡辺翔太」演じる”新藤”が匠と八重の関係を疑って探りを入れた挙句、幼馴染にしか成しえない自然な関係性に自分を押し殺して祝福を伝えるシーンは安易なLGBTを超えた感動があった。
最近のシャープなデジタルカメラでの寄りの絵が多いことも合わせ、”番組の中の恋愛”という設定(ウソ)を演じる、良く編集された「恋愛リアリティーショー」番組を見ているような気にさせるところも、”推しの子”ではないが、今時のドラマと感じさせる新しさがあり面白いなと感じた。